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卒業式などで国歌斉唱等を定めた通達を憲法19条違反とした事例(東京地判平成18年9月21日)  ( 平和   ) 2011/01/26
東京地裁平成18年9月21日判決判例タイムズ1228号88頁
【事例】入学式・卒業式などの式典での国歌斉唱等を定めた通達及び校長の職務命令は憲法19条,教育基本法10条1項に違反するものであるとされた事例


来る1月28日,東京高裁で,上記東京地裁判決に対する控訴審判決が言い渡されます。
そこで,あらためて,東京地裁の判決のポイントを引用します。


<事案の概要>
 本件事案の概要は,次のとおり。
 原告らは,都立学校に勤務する教職員又は勤務していた教職員。
 被告 都教委 横山教育長は,平成15年10月23日,都立学校の各校長に対し,「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」(本件通達)を発して,
 都立学校の入学式,卒業式等において,
  教職員らが国旗に向かって起立し,国歌を斉唱すること,
  国歌斉唱はピアノ伴奏等により行うこと,
  国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり,教職員が本件通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は,服務上の責任を問われること
を教職員に周知することなどにより,
 各学校が入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱を適正に実施するよう通達しました。
 本件は,原告らが,
  国旗に向かって起立し,国歌を斉唱すること,
  国歌斉唱の際にピアノ伴奏をすることを強制されること
は,原告らの
     思想・良心の自由,
     信教の自由,
     表現の自由,
     教育の自由
等を侵害するものであると主張して,
 在職中の原告らが被告都教委に対し,こうした義務のないことの確認,これらの義務違反を理由とする処分の事前差止めを求めるとともに,
 原告らが被告都に対し,本件通達及びこれに基づく各校長の職務命令等によって精神的損害を被ったと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料各3万円の支払を求めた事案です。

<争点>

 (1)原告らの求めている請求は,門前払いすべきか(本案前の答弁)。
 (2)在職中の原告らは,都立学校の入学式,卒業式等の式典において,国旗に向かって起立して国歌を斉唱する義務を,また,音楽科担当教員である原告らは,国歌斉唱時にピアノ伴奏をする義務をそれぞれ負うか。本件通達及びこれに基づき各校長が原告らに対し発した本件職務命令は違法か。
 (3)原告らは,本件通達及びこれに基づく各校長の本件職務命令により精神的損害を被ったか。

<裁判所の争点(2)に対する判断> 
通達に関する部分を抜粋します。

3 争点(2)(入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務の存否)について

 (1)国民は,憲法19条により,思想・良心の自由を有するところ,宗教上の信仰に準ずる世界観,主義,主張等を全人格的にもつことは,それが内心の領域にとどまる限りはこれを制約することは許されず,外部に対して積極的又は消極的な形で表されることにより,他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反する場合に限り,必要かつ最小限度の制約に服すると解するのが相当である。
 ところで,我が国において,日の丸,君が代は,明治時代以降,第二次世界大戦終了までの間,皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあることは否定し難い歴史的事実であり,国旗・国歌法により,日の丸,君が代が国旗,国歌と規定された現在においても,なお国民の間で宗教的,政治的にみて日の丸,君が代が価値中立的なものと認められるまでには至っていない状況にあることが認められる(弁論の全趣旨)。
 このため,国民の間には,公立学校の入学式,卒業式等の式典において,国旗掲揚,国歌斉唱をすることに反対する者も少なからずおり(甲124,248,249,乙6,証人巽【22頁】参照),このような世界観,主義,主張を持つ者の思想・良心の自由も,他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反しない限り,憲法上,保護に値する権利というべきである。
   
この点,確かに,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に起立しないこと,国歌斉唱しないこと,ピアノ伴奏をしないことを選択する理由は様々なものが考えられ,教職員に対して,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に,国旗に向かって起立し国歌を斉唱すること,ピアノ伴奏をすることを命じたとしても,特定の思想,良心を抱くことを直接禁止するものとまではいえない。
 しかし,前記日の丸,君が代に関する現在の状況に照らすと,宗教上の信仰に準ずる世界観,主義,主張に基づいて,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱することを拒否する者,ピアノ伴奏をすることを拒否する者が少なからずいるのであって,このような世界観,主義,主張を持つ者を含む教職員らに対して,処分をもって上記行為を強制することは,結局,内心の思想に基づいてこのような思想を持っている者に対し不利益を課すに等しいということができる。したがって,教職員に対し,一律に,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱すること,ピアノ伴奏をすることについて義務を課すことは,思想・良心の自由に対する制約になるものと解するのが相当である。
 上記の考え方に対し,被告らは,本件通達に基づき校長が教職員に対し,入学式,卒業式等の式典において,国歌斉唱を命じ,ピアノ伴奏を命じることは,教職員に対し一定の外部的行為を命じるものであり,当該教職員の内心領域における精神活動までを制約するものではなく,思想,良心の自由を侵害していないと主張する。確かに,そのような考え方も成り立ち得ないわけではない。しかし,人の内心領域の精神的活動は外部的行為と密接な関係を有するものであり,これを切り離して考えることは困難かつ不自然であり,入学式,卒業式等の式典において,国旗に向かって起立したくない,国歌を斉唱したくない,或いは国歌をピアノ伴奏したくないという思想,良心を持つ教職員にこれらの行為を命じることは,これらの思想,良心を有する者の自由権を侵害しているというべきであり,上記被告らの主張は採用することができない。
 (2)上記(1)のとおり,教職員に対し,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱すること,ピアノ伴奏をすることについて義務を課すことが,思想・良心の自由に対する制約になるとしても,思想,良心の自由といえどもそれが外部に対して積極的又は消極的な形で表されることにより,他者の基本的人権を侵害するなど公共の福祉に反する場合には,必要かつ最小限度の制約に服するものと解するのが相当である。そうだとすると,原告らが教職員又は教職員であった者であることから,原告ら教職員に対し,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に,国旗に向かって起立し国歌を斉唱する義務,国歌のピアノ伴奏をする義務を課すことが,公共の福祉による必要かつ最小限度の制約又は教職員の地位に基づく制約として許されるかどうかということが問題となる。
 この点に関し,被告らは,原告ら教職員は学習指導要領の国旗・国歌条項に基づき,生徒に対して国歌斉唱の指導を行うため,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱すること,ピアノ伴奏をすることが職務内容の一部となっており,校長から本件通達に基づいた職務命令を受けた場合には,入学式,卒業式等の式典会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務を負っている旨主張する。そこで,以下,原告ら教職員は,学習指導要領の国旗・国歌条項,本件通達及びこれに基づく各校長の本件職務命令により,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,国歌斉唱時にピアノ伴奏をする義務を負っているか否か,換言すると,学習指導要領の国旗・国歌条項,本件通達及びこれに基づく各校長の本件職務命令により,原告ら教職員の思想,良心の自由を制約することは公共の福祉による必要かつ最小限の制約として許されるのか否かについて検討することにする。
 (3)学習指導要領の国旗・国歌条項に基づく義務について
 ア まず最初に,原告ら教職員が,学習指導要領の国旗・国歌条項に基づき,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務を負っているか否かについて検討する。この点に関し,教育基本法10条1項が「教育は,不当な支配に服することなく,国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」と規定し,同条2項が「教育行政は,この自覚のもとに,教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行わなければならない。」と規定していることとの関係で,学習指導要領の国旗・国歌条項が法的効力を有しているのか否かが問題となる。
 イ 学習指導要領の法的効力について
 国は,憲法上,適切な教育政策を樹立,実施する権能を有し,国会は,国の立法機関として,教育の内容及び方法について,法律により,直接又は行政機関に授権して必要かつ合理的な規制を施す権限を有している。のみならず,国は,子どもの利益のため又は子どもの成長に対する社会公共の利益のため,必要かつ合理的な規制を施すことが要請される場合もあり得るのであって,国会が教育基本法10条においてこのような権限の行使を自己限定したものと解することは困難である。
 むしろ,教育基本法10条は,国の教育統制権能を前提としつつ,教育行政の目標を教育の目的の遂行に必要な諸条件の整備確立に置き,その整備確立のための措置を講ずるに当たり,教育の自主性尊重の見地から,これに対する不当な支配とならないようにすべきとの限定を付したものと解するのが相当である。したがって,教育に対する行政権力の不当,不要の介入は排除されるべきであるとしても,許容される目的のために必要かつ合理的と認められる措置は,たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,教育基本法10条に反しないものと解するのが相当である。
 そして,文部科学大臣は,前記争いのない事実等(2)イのとおり,学校教育法43条,73条に基づき,高等学校及び盲学校,ろう学校及び養護学校高等部の教科に関する事項を定める権限を有しており,上記高等学校等における教育内容及び方法について,それぞれ教育の機会均等の確保等の目的のために必要かつ合理的な基準として,学校教育法施行規則57条の2,73条の10に基づき,学習指導要領を定めている。
 したがって,このような目的のもとに定められた学習指導要領は,原則として法規としての性質を有するものと解するのが相当である。
 もっとも,国の教育行政機関が,法律の授権に基づいて普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,上記のとおり教育の自主性尊重の見地のほか,教育に関する地方自治の原則をも考慮すると,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準に止めるべきものと解するのが相当である。そうだとすると,学習指導要領の個別の条項が,上記大綱的基準を逸脱し,内容的にも教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制するようなものである場合には,教育基本法10条1項所定の不当な支配に該当するものとして,法規としての性質を否定するのが相当である。(最大判昭和51年5月21日刑集30巻5号615頁,最一判平成2年1月18日集民159号1頁参照)
 ウ これを学習指導要領の国旗・国歌条項についてみてみると,同条項は,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,生徒が将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくためには,生徒に国旗,国歌に対する正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てることが重要なことであること,入学式,卒業式等は,学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活への動機付けを行い,集団への所属感を深めるうえでよい機会となることから,このような入学式,卒業式等の意義を踏まえたうえで,これらの式典において,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するとの趣旨で設けられた規定と解される(甲276,乙18参照)。
 このような学習指導要領の国旗・国歌条項の趣旨に照らすと,国旗,国歌に関する定めは,その性質上,全国的になされることが望ましいものといえ,教育における機会均等の確保と全国的な一定の教育水準の維持という目的のために,国旗・国歌条項を学習指導要領の一部として規定する必要性はあるというべきである。そうだとすると,学習指導要領の国旗・国歌条項が,教育の自主性尊重,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を逸脱するものでなく,内容的にも一方的な一定の理論や理念を生徒に教え込むことを教職員に強制するものでない限り,法的効力を有すると解するのが相当である。
 エ そこで,学習指導要領の国旗・国歌条項をみてみるに,同条項は,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と規定するのみであって,それ以上に国旗,国歌についてどのような教育をするかについてまでは定めてはいない。また,学習指導要領の国旗・国歌条項は,国旗掲揚・国歌斉唱の具体的方法等について指示するものではなく,入学式,卒業式のほかにどのような行事に国旗掲揚・国歌斉唱を行うかについて,各学校に指示するものでもなく,国旗掲揚・国歌斉唱を実施する行事の選択,国旗掲揚,国歌斉唱の実施方法等については,各学校の判断に委ねており,その内容が一義的なものになっているということはできない。さらに,学習指導要領の国旗・国歌条項は,教職員が生徒に対して日の丸,君が代を巡る歴史的事実等を教えることを禁止するものではなく,教職員に対し,国旗,国歌について一方的な一定の理論を生徒に教え込むことを強制するものとはいえない。
 オ 以上によれば,学習指導要領の国旗・国歌条項は,前記イの学習指導要領全般の法的効力に関する基準に照らしても,法的効力を有すると解するのが相当である。もっとも,学習指導要領の国旗・国歌条項の法的効力は,前記ウのとおり,その内容が教育の自主性尊重,教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を定めるものであり,かつ,教職員に対し一方的な一定の理論や理念を生徒に教え込むことを強制しないとの解釈の下で認められるものである。したがって,学習指導要領の国旗・国歌条項が,このような解釈を超えて,教職員に対し,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務を負わせているものであると解することは困難である。
 カ 小括
 以上の検討結果によれば,学習指導要領の国旗・国歌条項は,法的効力を有しているが,同条項から,原告ら教職員が入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務までを導き出すことは困難であるというべきである。
 (4)本件通達に基づく義務について
 ア 被告都教委は,地教行法23条5号に基づき,都立学校の教育課程,学習指導,生徒指導等に関する事項につき管理,執行権限を有し,被告都教委教育長は,同法17条1項に基づき,上記権限に属する事務をつかさどるところ,横山教育長は,上記権限に基づいて,都立学校の各校長に対する職務命令として本件通達を発したものと認められる。ところで,被告都教委教育長が地教行法17条1項,23条5号に基づき発する通達ないし職務命令についても,前記(3)の学習指導要領と同様に,教育基本法10条の趣旨である教育に対する行政権力の不当,不要の介入の排除,教育の自主性尊重の見地のほか,教育における機会均等の確保と一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準に止めるべきものと解するのが相当である。そうだとすると,被告都教委教育長の発する通達ないし職務命令が,上記大綱的基準を逸脱し,内容的にも教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制するようなものである場合には,教育基本法10条1項所定の不当な支配に該当するものとして違法になるものと解するのが相当である。
 イ 以上の観点から,本件通達をみることにする。本件通達は,被告都教委教育長から都立学校の各校長に対して発せられたものであり,教職員に対して発せられたものではない。したがって,原告ら教職員は,本件通達に基づいて,直ちに入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱すること,ピアノ伴奏をすることについて義務を負うことはない。しかし,本件通達の内容は,入学式,卒業式等の式典における国旗掲揚,国歌斉唱の具体的方法等について詳細に指示するものであり(前記争いのない事実等(3)),国旗掲揚,国歌斉唱の実施方法等については,各学校の裁量を認める余地はほとんどないほどの一義的な内容になっている。また,前記前提事実(3)アないしウ,(4)アないしク,ケ(ア),(ウ)ないし(オ),スによれば,①被告都教委は本件通達発令と同時に都立学校の各校長らに対し「適格性に課題のある教育管理職の取扱いに関する要綱」を発表したこと,②被告都教委は,本件通達発令後,都立学校の各校長に対し,入学式,卒業式等の式典における国歌斉唱の実施方法,教職員に対する職務命令の発令方法,教職員の不起立等の現認方法及び被告都教委への報告方法等について詳細な指示を行ったこと,③都立学校の各校長は,被告都教委の指示に従って,教職員に対し,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に起立して国歌を斉唱すること,ピアノ伴奏をするよう職務命令を発したこと,④都立学校の各校長は,教職員が上記職務命令に違反した場合,これを服務事故として被告都教委に報告したこと,⑤被告都教委は,上記職務命令に違反した教職員について,1回目は戒告,2回目及び3回目は減給,4回目は停職との基準で懲戒処分を行うとともに,再発防止研修を受講させたこと,⑥被告都教委は,定年退職後に再雇用を希望する教職員について,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に起立して国歌を斉唱しないなどの職務命令違反があった場合,再雇用を拒否したことが認められる。前記各認定事実に照らすと,本件通達及びこれに関する被告都教委の一連の指導等は,入学式,卒業式等の式典における国旗掲揚,国歌斉唱の実施方法等,教職員に対する職務命令の発令等について,都立学校の各校長の裁量を許さず,これを強制するものと評価することができるうえ,原告ら教職員に対しても,都立学校の各校長の職務命令を介して,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に起立して国歌を斉唱すること,ピアノ伴奏をすることを強制していたものと評価することができる。そうだとすると,本件通達及びこれに関する被告都教委の都立学校の各校長に対する一連の指導等は,教育の自主性を侵害するうえ,教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しく,教育における機会均等の確保と一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を逸脱しているとの謗りを免れない。したがって,本件通達及びこれに関する被告都教委の都立学校の各校長に対する一連の指導等は,教育基本法10条1項所定の不当な支配に該当するものとして違法と解するのが相当であり,ひいては,原告ら都立学校の教職員の入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に,国旗に向かって起立しない自由,国歌を斉唱しない自由,国歌をピアノ伴奏しない自由に対する公共の福祉の観点から許容されている制約とは言い難いというべきである。
 なお,国旗・国歌法は,日の丸を国旗,君が代を国歌と規定するのみであって,国旗掲揚,国歌斉唱の実施方法等に関しては何ら規定を置いておらず,前記前提事実(1)によれば,同法の立法過程においても,政府関係者によって,同法が国民生活殊に国旗,国歌の指導にかかわる教職員の職務上の責務に何ら変更を加えるものではないとの説明がされていたことが認められ,同法が教職員に対し,国旗掲揚及び国歌斉唱の義務を課したものと解することはできない。そうだとすると,本件通達及びこれに関する被告都教委の一連の指導等は,国旗・国歌法の立法趣旨にも反した,行き過ぎた指導といわざるを得ない。
 ウ 以上のとおり,本件通達及びこれに関する被告都教委の一連の指導等は,教育基本法10条に反し,憲法19条の思想・良心の自由に対し,公共の福祉の観点から許容された制約の範囲を超えているというべきであって,これにより,原告ら教職員が,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に,国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務を負うものと解することはできない。