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「消費者契約法,特定商取引法の成果と課題」逐語レジュメ〔2〕  ( 消費者問題   ) 2012/07/15
(続きです)

3.消費者取引法(民事ルール)の展開

★ それでは,これらの消費者関連法律の「かたち」を,民事ルールの展開という観点から概観していきましょう。
● まず,クーリング・オフの制度です。
 これは今のところ,
 ①法律の定義する取引を行う業者に対する書面交付義務と,
 ②不交付の場合の罰則 及び
 ③不交付の間及び交付後短期間の後のクーリング・オフ(撤回・解除権)
   という形で設定されているものです。
 これについては,特定商取引法の中で,訪問販売,電話勧誘販売,連鎖販売取引,特定継続的役務提供,業務提供誘引販売の5つの類型,通信販売を除く,いわゆる特商法5類型について,クーリングオフが導入されていることは周知の通りです。
 また割賦販売法においても,特商法とパラレルに,特商法5類型の取引に係る 個別クレジットについて,クーリングオフが導入されています。
 このほか,生命保険・損害保険取引と宅建取引で,訪問販売が行われたときにもこの制度がありますし,預託商法や投資顧問取引についても,この制度が置かれています。
 クーリングオフ権を設定する場合には,契約の撤回・解除後の不当利得返還・巻き戻しの関係について,特別な民事ルールがおかれ,消費者保護のための強行法規性が明定されています。
 この制度は,いわゆる攻撃的取引,分かりにくい取引に対して,厳しい情報開示の義務を課すことと対になった制度です。無理由・無条件で契約の拘束力から離脱できるということも含め,問題商法から消費者の安心・安全を守るという観点に立ち,行政規範,刑事罰,民事ルールのミックスで制度が成り立っているということが出来ます。
 こういうこともあり,この制度は,民法の世界とは直ちに連続しない建付になっているといえます。
● 次に,不実告知等の取消権の制度があります。
  これについては,消費者契約法と,いわゆる特定商取引法の5類型について,取消権が定められています。さらに,割賦販売法でも,特商法5類型の取引に係る個別クレジットについて取消権が導入されています。
  こうした取消権は,いずれも意思表示,法律行為を取り消す形で規定されています。また,取消後の効果について,クーリングオフの場合と同じような清算・巻き戻し規定は特別には置かれず,民法の不当利得の法理によって巻き戻す建付になっています。
  こうしたことから,取消権の制度は,民法概念との連続性を自然に意識させるものだといえます。
  その意味で,特別法・業法の中に規定されているとはいえ,取消権を規定した条項は,意思表示の瑕疵・合意の瑕疵がそこに認められる,と立法者が認めているわけですから,その趣旨が妥当する事案では,類推適用の可能性を,検討しやすい状況を生むことになります。もっとも,ここは,裁判所の裁量の大きいところです。この裁判所の裁量の発揮のされ方がどうかについては後で触れます。
  次に,取消権の内容を見ますと,民法上の詐欺取消の延長にあるものとして,消費者契約法と特商法5類型における不実告知取消権及び事実不告知取消権があり,また,民法上の強迫による取消権の延長にあるものとして,消費者契約法上の不退去・退去妨害取消権があります。消費者契約法におかれた,断定的判断の提供にかかる取消権の制度は,金融商品販売法に説明義務の規定を置くのと同時に置かれたものであり,証券取引,先物取引,投資商品取引との関係を意識させますが,民法の中では不法行為法と結びついておりまして,契約法との関係は,消費者契約法4条1項2号の規定があるにもかかわらず,まだ十分構築されていないように思われます。
● 次に契約の不当条項無効のルールがあります。
  不当条項無効ルールというと,消費者契約法の不当条項リスト等を意識する方が多いと思いますが,より一般的にいえば,当事者の契約の自由を,契約正義の観点から制限するルールを指すものです。この点,先ほどの「取消権」というのは,当事者の合意にキズがあるので合意を取り消すという制度で,契約自由の原則と親和性があり,制度内在的な位置づけになります。しかし,不当条項無効のルールは,正義の観点から当事者の合意に後見的に介入するという訳なので,その意味で契約自由の原則からみると,例外といいますか,外在的な立ち位置に置かれます。
  不当条項無効のルールに当たるものとしては,消費者契約法上の不当条項無効のルールのほか,利息制限法上の制限利率,借地借家法,労働基準法や労働契約法の強行法規性を定めるルールがあります。またもちろん,特商法・割販法などにおかれた民事ルールの中の強行法規についても,これにあたります。
  もっとも,消費者契約法の不当条項無効ルールは,先ほど例示した各特別法上のルールよりも,適用範囲が圧倒的に広いものです。なにせ「消費者契約」であれば,適用されますので,例えば借地借家契約だけに適用される法律や金銭消費貸借契約だけに適用される法律とは違います。その意味で,その条項の立法や,その解釈・適用が国民のくらしに与える影響は,極めて大きいということができます。
  現在の消費者契約法は,
  8条で,事業者が民法上負うべき賠償責任を不当に免除する条項は無効だとしています。
  また,9条で,消費者が契約を解除する際の違約金や債務不履行の場合の遅延損害金が不当に高いものは無効だとしています。
  そして,10条は,一般的に,民商法の規定と比べて消費者に不利な条項で,信義則に反し,消費者の権利を一方的に害する条項は無効とするとしています。
  8条,9条に書き込まれた不当条項リストは,不当条項として関係団体から提案されているリストと比較して,ほんの僅かの部分を規定しただけのものです。
  一般条項たる10条については,その解釈について裁判所の裁量の幅がかなり広い状態にあるため,消費者契約法の10条を使った民事裁判は,現状でも「賽の目がどちらに出るか分からず,危険が一杯」,という状態にあります。
  消費者政策と絡む領域であり,専門家や関係団体を交えた民主的な審議のアプローチを経ずに,裁判所と各事件の当事者に,このようなアバウトな物差しを与えて,民事法の形成を委ねてしまって良いのかという問題も提起されることと思います。
● 次に,継続的契約の中途解約権です。
  これについては,今のところ,特定商取引法上の,連鎖販売取引と,特定継続的役務提供取引に規定されています。
  この点,民法の世界では,継続的供給契約や継続的役務提供契約について,契約途中の中途解約権が一般的には認められていません。しかし,これらの英会話教室など特商法の適用のある世界では,「中途解約ができて当たり前」という規範が形成されつつある。その規範形成が順調なので,中途解約権は,このような契約当事者の通常の期待に添った権利だったということができます。
  そのことが,法務省の民法部会での民法の議論に影響を与えてきています。そういった意味で,特商法の中での民事ルールの発展は,民法改正論にも影響を与えています。
● 次に,説明義務違反の損害賠償請求権です。
  これは,現在のところ,金融商品販売法,商品先物取引法に明示の規定があります。
  もともと,民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権を根拠にして,証券取引被害の救済のための法理論として,目に見えないが元本割れリスクのある商品である金融商品の販売を勧誘する際の信義則上の付随義務として,説明義務,情報提供義務があると観念され,判例が形成されたものでした。
  その延長線上に,金融商品販売業の重要事項説明義務その他の禁止行為と,これに違反した場合の,損害賠償請求権が規定されました。その意味では,このルールは,消費者契約法を基礎に発展した,というのではなく,それ以前からある民法判例を基盤に,立法が生まれたものといえます。
  もっとも,単なる確認規定とは異なるのは,元本欠損額を損害額と推定するルールを定めていることを上げることができます。この規定は,禁止行為違反を抑止する軽いインセンティブにもなっているといえます。
  ただ,商品先物取引法上の説明義務は,その義務違反が行政処分の対象にもなるという意味で,業法の中に,行為規範と民事ルールがミックスされているのに対し,金融商品の世界では,これが販売法と取引法に分けられているという違いがあり,立法の仕方として,その点は興味深いといえます。
● 最後に,金融商品取引法で近時立法された,無登録業者の株式等の売付等を無効とする条項
  です。
  これは,以前の立法例とは異なるもので,民法上の公序良俗論に基礎をおいた新しい立法例であり,①取消権でもなく,②損害賠償請求権でもない。③クーリングオフ解除でもなく,④格差是正のために契約の不当条項を無効にする規定でもない。
  大いに注目に値します。
  改正金商法171条の2が規定しています。
  無登録業者(無登録で金融商品取引業を行う者。)が、未公開株式について売付け,媒介,代理,募集・売出しの取扱い等をを行った時は,その顧客による当該未公開有価証券の取得を内容とする契約は,無効とする。という中身になっています。
  このような民事効規定の考え方ですが,無登録業者が未公開株の販売を行う場合には類型的に不当な利益を得る行為を行う蓋然性が高いものと考えられ,無登録業者がそういう行為を行っている場合には,民法90条の一類型である暴利行為に当たる可能性が高いものと考えられるという考え方を基礎に,投資者保護を図る政策的観点からこの規定を導入したということになっています。
  無登録業者の金融商品販売行為を,「暴利行為に当たる蓋然性のある行為」と基礎付けた本件の無効立法の考え方はとても面白く,実際には他の問題商法でもつぶしの効く考え方なのであり,今後の「立法」をする際に,立法例として広がりを持つものといえます。
 (〔3〕に続く)