ホーム
弁護士紹介
事務所概要
相談・依頼
顧問弁護士について
アクセス
平田元秀ブログ
吉谷健一ブログ
topics
大阪高裁平成20年9月2...
「バテレンの世紀」と「潜...
留置場での一般面会日・時...
簡易裁判所の訴訟手続に関...
読者のお便り
一覧へ
CATEGORY
  弁護士の小話
  過去のニュース
  平和
  裁判例watching
  消費者問題
  司法のあり方
  刑事弁護・刑事裁判
  司法修習生の方へ
  民事弁護・民事裁判
  【法律相談】
  お便り
logo
管理画面へ
blog
サンデル「正義の話」(3) なにが正義で公正かをめぐる整理  ( 弁護士の小話   ポスト・グローバリズム ) 2010/09/17
 マイケル・サンデルの「これからの『正義』の話をしよう」の本。
 ここでは,<サンデルの「正義の話」>という風に言いますね。
 「ポストグローバリズム」をキーワードにして、サンデルの「正義の話」に関わろうという雑記のシリーズを続けています。

 サンデルは、「ある社会が公正かどうかを問うことは、われわれが大切にするもの-収入や財産、義務や権利、権力や機会、職務や栄誉-がどう分配されるかを問うことである」と言い、難しい問題が起こるのは、分配するものとしてふさわしいものが何であり、それがなぜかを問うときであると言います。

 その上で、価値あるものの分配にアプローチする三つの観点として
  ① 幸福の最大化
  ② 自由の尊重
  ③ 美徳の涵養
があり、これらの理念は、それぞれ正義について異なる考え方を示していると言います。

 サンデルは、分配に関わって私たちが何が正義で何が公正かを議論するとき、私たちの中では
  ①幸福の最大化、②自由の尊重、③美徳の涵養
といったことが何を意味するのかについて見解の相違が表れること、あるいは
これらの理念同士が衝突する場合にどうすべきかについての見解の相違があらわれること
を指摘した上で、(サンデルの)政治哲学は、もちろんこのような不一致をすっきりと解消することはできないけれども、次の二つのことは可能だと言います。すなわち、
 α 議論(争論)に具体的な形を与えること
 β われわれが民主的な市民として直面するさまざまな選択肢の道徳的意味をはっきりさせること
の二つです。
 サンデルは、「正義の話」では、これから,上記①,②,③のアプローチのそれぞれの強みと弱みを探っていくというのです。(29頁)
 こうしてこの本が扱おうとする具体的な言説が登場します。それは,つぎのようなものです。

1.幸福の最大化という考え方 
    「功利主義」
     功利主義は、われわれがどうやって、そしてなぜ、幸福を最大化すべきなのか
    に関するもっとも影響の大きい説である。
2.正義に自由を結びつけるさまざまなルール
     「正義とは自由及び個人の権利の尊重を意味するという考え方は,現代政治においては,幸福の最大化という功利主義的理念と少なくとも同じくらいなじみ深いものだ。」
     A 自由放任(レッセフェール)派
       自由市場を信奉する「リバタリアン(自由意思論者)」が主導
   B 公正派
       もっとも平等主義的な傾向の理論家
3.正義は美徳や善良の生活と深い関係にあるとする理論
   道徳や宗教にかかわる理念から正義のビジョンを引き出すアプローチ
  ~文化的保守派、宗教的右派と結びつくことが多い
   例1 タリバン
   例2 奴隷制度廃止論者
   例3 …

 サンデルの「正義の話」では,具体的な説例(物語)が沢山登場します。サンデルは,具体例を登場させる理由もきちんと説明しています。
 それは,正義の理論の評価を試みるために,必要だから。具体的な状況を設定し,その状況に対して,道徳的になにが正しいのかを考えることを通じて,正義の理論に一定の場所を与えることができる。そうして,そのような検討の最中で,哲学的論議が,いかにして進むものであるかを理解することもできる。だから,具体例を出す。そして具体例は,限られた哲学的問題に焦点を合わせるため,選りすぐりのものである必要がある。
 サンデルは言います。そうして出された具体例について自分なりに回答を出していくことについて,私たちは,そうした「道徳的な論証を他人を説得する方法だと考えることがある。だがそれは,自分自身の道徳的信念を整理し,自分が何を,またどうして信じるのかを理解する方法でもあるのだ。」(35頁)
 「こうした混乱の力と,その混乱の分析を迫る圧力を感じることが,哲学への衝動なのだ。」(41頁)
 「この本は思想史の本ではない。道徳と政治をめぐる考察の旅をする本だ。旅の目的は,政治思想史において誰が誰に影響を与えたかを明らかにすることではない。そうではなく,読者にこう勧めることである。正義に関する自分自身の見解を批判的に検討してはどうだろう。-そして,自分が何を考え,またなぜそう考えるのかを見極めてはどうだろうと。」

 実にサンデルの「正義の話」はおもしろい。