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ホームページリースの事案で,信義則上未払リース料の支払義務を負わないとした例  ( 消費者問題   ) 2012/09/01
「お店のホームページを作成します」との勧誘をうけ高額なリース契約を締結した事案で,勧誘業者が約束のホームページを作成しなかった場合に,リース会社に対し未払金の支払義務を負わないとした事例(大阪地裁(16民)平成24年5月16日判決)

http://kanz.jp/hanrei/detail/82477/

(コメント)
○提携リースにおいて取扱業者の約定役務の不履行がリース業者の請求権に影響を与えるとした,重要裁判例。
○提携リースにおいて取扱業者の約定債務の不履行を原因としてリース業者の請求権が消滅するとした裁判例(但し,既払金の不当利得返還請求権は,取扱業者に対して成立するものとし,未払金請求権の不存在のみを判示した裁判例)
○予備交渉者・締約補助者の行為(故意過失)を信義則上契約者の行為(故意過失)と見なす法理の適用場面での裁判例の展開。
○リース取引の場面はクレジット取引の場面とは異なり,商品の供給業者と与信業者とがハの字型に分化していない(リース業者が供給業者兼与信業者である)ので,取扱業者に対して主張しうることをリース業者に主張しうるかという問題は,本来,「抗弁対抗」の概念図が使える場面ではありません。
○判決では,「抗弁対抗」と表現されていますが,同時に,リース債務が不存在という結論になっています。そこでいう,「抗弁対抗権」の性質が問題となります。

1.事案の概要

 本件は,原告らが,リース取引を行う被告に対し,JOA社をサプライヤーとするリース契約の締結,連帯保証の申込みを内容とするリース契約申込書を交付し,リース料の一部を支払った後に,JOA社よりホームページ作成の役務の提供を受けられなかったとして,前記リース契約の不成立,無効等を主張し,不当利得の返還として既払リース料の返還,並びに未払リース料債務及び連帯保証債務の不存在確認を求めた事案。
 
 
2.裁判所の判断の要旨
 
 洋裁教室等を経営する原告らが,JOA社にホームページの作成等を依頼し,その代金支払方法として,ホームページ作成用のソフトウェアのリースを受ける名目で,リース会社である被告との間でリース契約を締結した場合において,被告が若干の注意を払えば,役務の提供にリース契約が利用される事案であることを知り得たのに,その点の調査をせずにリース契約を締結したところ,JOA社が業務を停止し,ホームページが作成されなかったときは,原告らは被告に対し,未払いリース料の支払義務を負わない。

3.主 文(抜粋)

1) 原告Aと被告との間において,原告Aの被告に対する,別紙契約目録記載1のリース契約に基づく残リース料債務106万7850円が存在しないことを確認する。

3 )原告Aのその余の請求を棄却する。

7 )訴訟費用はこれを4分し,その1を原告らの,その余を被告の各負担とする。

4. 裁判所の判断(抜粋)


(1) 被告とJOA社
ア  被告は,主として事業会社との間でリース取引を行う株式会社である。
   被告は,当初,規模の大きい事業会社を中心にリース取引を行っていたが,平成10年に  商品事業部を創設し,以後,個人事業主または小規模事業を対象とする事業用資産リース(以下「商品事業部リース」という。)を行うようになったが,一般消費者を対象とするリース取引は行っていない。
 商品事業部リースでは,多数の契約を迅速に処理し得るよう,ワンライティング方式の書式を用意してサプライヤーに使用させており,その契約の対象は,物のリース,またはソフトウェアの使用許諾権のリースに限られ,ファイナンス・リース契約の本質と矛盾し,役務提供の不履行がリース料不払の主張を招くとの理由で,サプライヤーによる役務の提供そのものをリース契約の対象とすることは予定しておらず,役務の提供をリースの対象にしたいとの申出があっても,被告は契約の締結に応じない。

イ  JOA社は,横浜市神奈川区に本社を置き,大阪市淀川区に関西支店を置き,Web制作,DTP制作,ソフトウェア開発,映像制作,音楽配信を事業内容に掲げる会社である。JOA社は,平成15年12月4日,被告との間で業務協定を締結し,商品事業部リースを取り扱うようになった。
 上記業務協定は,JOA社が被告のリースシステムを利用して販売促進を図り,被告はJOA社の推薦する顧客とリース契約を締結することによって,双方の事業の発展させることを目的とするものであり,JOA社と被告は,上記業務協定において,要旨以下の内容を合意した。
(ア)  対象顧客は事業者であること。
(イ)  リース取引の対象商品は,JOA社が取り扱い,被告の承認する商品であって,プログラム・プロダクトが含まれること。
(ウ)  顧客より制度利用の申出があったとき,JOA社は顧客に被告所定の申込書に必要事項を記入させ,被告宛に申し込むこと,被告は前記申込みに基づき,速やかに顧客の信用調査及び審査を行い,リース契約締結の可否を決定して,その結果をJOA社に通知すること。
(エ)  被告・顧客間のリース契約の申込みには,被告所定のリース契約書を使用し,リース契約書の授受等リース契約に必要な業務は,被告に代わりJOA社が行うことができものとすること,被告がリース契約書を受領し,被告所定の手続により,顧客に契約の意思,検収,連帯保証人に保証の意思を確認した後,リース契約が成立するものとし,リース売買契約成立日は,被告の指定する日とすること。
(オ)  JOA社・被告間のリース物件の売買契約書は,事務合理化のためその締結を省略するが,前記リース売買契約成立日に当然に売買契約が締結されたものとし,JOA社から被告へリース物件の所有権が移転すること,JOA社は,顧客にリース物件を直接納入すること。
(カ)  本協定の有効期間中といえども,JOA社または被告における信用事故の発生,並びにJOA社,被告のいずれかが本協定の義務を怠ったときは,相手方はいつでも協定を解約し,損害賠償を請求できること。
ウ  商品事業部リースでは,契約の申込があると,コンピューターを使った自動審査により,法人情報,代表者の個人情報による与信審査を行うが,被告がリース物件価格の相当性を審査することは予定されていなかった。
  また,物件がユーザーに引き渡された後に,ユーザーが物件借受証を発行するという手続も行われなかった
エ  前記業務協定締結後,被告の商品事業部から,当初はIが,平成20年4月以降はGが,担当者として一月に一回程度JOA社を訪れ,営業状況を確認し,契約書を回収するなどしていた。
  JOA社は,当初,J株式会社の代理店として,ファクシミリや電話機のリースを主たる業務としていたが,平成17年ころから,本件ソフトを対象とするリースを扱うようになり,その取扱件数は,平成17年度17件,平成18年度3件,平成19年度193件,平成20年度は9月までで188件と急増する一方,電話機等の販売はなくなった。
  Gは,平成20年4月にIから引継ぎを受ける際,JOA社は,ソフトウェアを販売する会社と説明されたが,JOA社を訪問した際に,ソフトウェアの現物を現認したことはなく,買主にどのような形でソフトウェアを交付するのか,CD−ROMで渡すのか,パスワードを知らせるのかも把握していなかったが,電話確認がされているので,ソフトウェアは納入されていると思っていた。
  Gが担当するようになり,毎月20ないし30件のソフトウェアの契約があったが,平成20年9月,被告は,業績不振を理由に,JOA社のリースの取扱を停止し,その後,JOA社は倒産した。
(2) 原告Aの関係
ア  原告Aは,平成17年当時,大阪府茨木市で洋裁教室を経営しており,原告Bは,原告Aの被用者または共同経営者であった。
イ  原告Aは,平成17年5月,JOA社のKに勧誘され,JOA社に対し,洋裁教室のホームページの作成等を依頼した。
  この時,Kは,原告Aに対し,ホームページ(オリジナル)7ページを作成すること,150点の更新を行うこと,1.5時間の指導を行うこと,ヤフーのビジネスサイトに登録すること,ADSLモデム及び液晶ディスプレイを交付することを約した上で,月額8700円,6年,72か月のリース料金となる旨を告げ,原告Aはこれを了承した。
  Kは,原告AのJOA社に対する「お申し込み受付書」には,上記合意に沿った役務の提供等を記載したが,原告Aを申込者,原告Bを保証人とする,訴外L株式会社に対するリース契約の申込書には,リース物件として,品名・JOA社オリジナルソフト,メーカー名・JOA社,品名・ADSLモデム,メーカー名・J株式会社と記載して,原告A及び原告Bに署名させた(甲A4,甲A5,A供述)。
ウ  JOA社では,WEBプランナーのMらがホームページの作成を担当し,平成17年12月に作成したホームページを納品したが,注文との相違や不具合があったため,原告Aはクレームを付け,Mらは手直しを約したが,完全には修正されなかった
エ  原告Aの洋裁教室は,平成19年7月に兵庫県芦屋市に移転したが,平成20年7月,JOA社のNが洋裁教室を訪れ,以前作成したホームページをリニューアルするよう提案し,その翌日ころ,NとMとが原告Aを訪ね,前リースの契約残金31万0590円を返還すること,納得のいくホームページを作ること,きめ細かいサポートをすることを約したところ,原告Aは,ホームページのリニューアルをJOA社に依頼した。
オ 原告Aは,Nに対し,ホームページを作成すること,SEO(検索エンジンの最適化)対策をすること,顧客からのアクセスについての解析をすること,ホームページのトップにフラッシュ(動画またはアニメーション)を入れること,アイテム及びカレンダーを更新できるようにすることなどを依頼し,Nは,平成20年7月18日,JOA社に対する「お申し込み受付書」に,注文内容として,ホームページ(オリジナル)4ページの作成,検索エンジン最適化サービス,アイテム更新プログラム,アイテム更新追加ページ,カレンダー更新プログラム,フラッシュC,アクセス解析といった,上記依頼に対応する役務の提供を記載した。Nは,これと同時に,被告宛のワンライティング方式のリース契約申込書も作成して,原告A及び原告Bに署名押印させたが,Nは,同申込書のリース対象物件の欄には,JOA社オリジナルソフトとのみ記載した上,リース料月額2万3730円,リース期間60か月と記載した(本件第1契約)。またNは,同日,被告宛の書面である「リース物件受領書及び契約確認書」に,原告Aの署名押印を求めたが,同確認書には,被告との間で締結した契約に基づき下記物件(JOA社ソフトと記載されている。)を検収したこと,物件が契約に適合しかつ瑕疵がないことを確認したこと,検収日欄記載の日付をもってその引渡を受けたこと,リース物件については被告が所有権(ソフトウェアについては使用権)を有しているものであり,物件の瑕疵,不具合,使用の有無並びに売主と申込者との間で別途約定された役務提供の有無,履行の程度及び内容のいかんと関係なく,被告に対するリース料の支払義務が発生し,リース期間中解約できないこと等が不動文字で記載されていたが,検収日,契約締結日の欄は,その時点では空白であった(甲A1,甲A2,乙A2,A供述)。
カ  JOA社は,被告宛のリース契約申込書及びリース物件受領書及び契約確認書を被告に送付し,被告は,信用審査の後,平成20年8月11日,原告Aに電話をかけ,原告A本人であることを確認の上,リース契約の申込みをしたのは間違いないか,リース物件がJOA社オリジナルソフトであることは間違いないか,リース物件の納入はあったか,リース料は原告AのQ銀行の口座から毎月2万3730円を60回支払うということで間違いないかといった質問を発したこの時点では,JOA社から原告Aに対し,ホームページ更新等の新たな役務の提供はなく,何らかのソフトウェアの引渡しもなく,原告Aが,JOA社のサーバーにアクセスして,JOA社のソフトウェアを使用できる状態にもなっていなかったが原告Aは,上記質問をすべて肯定した。この時,被告の担当者は,原告Aに対し,リース契約の対象にホームページの作成等,役務の提供が含まれないかを確認したり,ホームページ作成等の役務の提供を受けられない場合であっても被告に対するリース料の支払は免れない旨を説明したりすることのないまま,原告Aの回答にネガティブな要素はないものとして,平成20年8月11日付で原告Aの検収があったと認め,原告Aと被告との間のリース契約書の契約日の欄,及び前記リース物件受領書及び契約確認書の検収日,契約締結日の欄に,いずれも2008年8月11日と記載した。また被告の担当者は,同日,保証人である原告Bにも,電話でその保証意思等を確認した。被告は,同年8月14日,上記リース契約の物件代金として,121万6845円をJOA社に支払った(乙A1から乙A5まで,A供述)。
キ  原告Aは,平成20年12月中旬ころ,JOA社より新たなホームページの下書きを示されたが単純なものであったため,担当者に連絡をとろうとしたがうまく連絡がとれない状態が続き,JOA社が支払を約した前リースの契約残金の支払も一部しかなされないまま,平成21年7月以降,事実上,JOA社との連絡が取れない状態となったため,消費者センターや弁護士に相談の上,被告に対するリース料の支払を停止した(A供述)。
<中略>
(4) 本件ソフトの存在
ア  なお,本件各契約のリースの対象は本件ソフトとされるところ,原告はその不存在を主張している。
イ この点について検討するに,JOA社がリース料総額100万円前後となるオリジナルソフトを開発し,それを年間200本近く販売するとすれば,具体的な商品名を付し,JOA社の事業の中心として宣伝等を行うものと考えられるが,JOA社のホームページにそのような宣伝等はなく
(甲C4),JOA社の担当者が本件各契約の契約申込書を作成した際に,JOA社ソフト,JOA社オリジナルソフトといった抽象的な名称を用いたことは,前記認定のとおりである。
原告Aは平成17年以降,原告Cは平成19年以降,いずれも本件ソフトを対象とするリース契約を締結しているが,いずれもJOA社が作成したホームページ自体の提供を受けるに止まり,原告らにおいて,本件ソフトの引渡しを受け,あるいは自ら本件ソフトを使用した事実はない。月一
回程度JOA社に赴いて契約書の回収等を行い,月20ないし30件も本件ソフトのリースを扱ったとされるGでさえ,本件ソフトの現物は見たことがないとされることも前記認定のとおりである。
ウ 上記内容を総合すると,JOA社の担当者は,原告らに対し,ホームページ作成の役務の提供を約する一方で,その代金の支払方法として被告のリースを利用するに際し,名目上のリース物件として本件ソフトを記載したに過ぎず,JOA社ソフト,JOA社オリジナルソフトなるものは,実在しないと考えるのが相当である。
 
2 当事者の主張に対する判断
<中略>
(3) 信義則違反の主張について
ア 問題の所在
 原告らは,被告が原告らに本件各契約に基づきリース料を請求することは,信義則に違反し許されないと主張する。
 既に述べたとおり,被告と原告らとのリース契約である本件各契約は,役務の提供を約するJOA社と原告らとの関係とは別個のものであり,両者の齟齬が直ちに一方の不成立または無効を招来するものではないが,訴外JOA社が原告らに対しては役務の提供を約する一方,本件ソフトのリースであるとして被告のリース契約を利用させるという齟齬を生じさせながら役務の提供を止めた場合に,原告らは残リース料を支払わなくても良いとすれば,本件ソフトの代金相当額をJOA社に支払ったのにこれを原告らより回収できなくなる損失は,被告が負担することになり,逆に,原告らは残リース料を支払わなければならないとすれば,JOA社より役務の提供を受けられない損失は,原告らが負担するとの問題が生じる。
イ 原告らの責任
(ア)  この点について検討するに,原告らは,真実,本件ソフトを取得し使用する意思はないのに,これをリース物件として掲げた契約申込書に署名押印しているが,小規模事業者である原告らにとって,役務の提供がリース契約の対象にならないとの知識は一般的とはいえず,原告らの立場において,JOA社が役務の提供を約すると同時に,支払の方法として,被告のリース契約を利用するとの説明を受けた場合に,格別の問題を感じなかったとしても不思議ではないから,上述のような経緯で本件各契約を締結したことについて,原告らに特別の過失があったとまでいうことはできない。
 原告らが,自らの利益を図るため,あるいはJOA社に利益を得させる目的で,ことさら本件各契約を締結したとすべき事情も認められない
(イ)  なお,被告は,原告らが書面または電話による確認に対し,本件ソフトの引渡しがあった旨を被告に回答したことから,原告らは,信義則上,役務の提供のないことを主張できないとする。
 しかしながら,仮に本件各契約が,被告の主張するとおり本件ソフトを対象とするリースであるならば,そのリース契約は,本件各ソフトについて,権利者であるJOA社から被告に使用権を設定し,被告から原告らに使用権の再設定をすることになるのであり被告においても,ソフトウェアのリースでは,役務の提供が混入してくる可能性のあることを認識しているのであるから(F証言),原告らに確認する際も,それに対応した発問をすべきである。具体的には,本件ソフトの使用権の設定の手続がなされ,本件ソフトを使用し得る状態になったか,本件各契約の対象に,ホームページ作成等の役務の提供は含まれず,本件ソフトのみを対象とする趣旨か,といった適切な質問をすべきであり,これを原告らが肯定した場合には,信義則上,原告らは,役務の提供のないことを主張できないと解する余地もあるが,前記認定のとおり,被告は,物件の現実の引渡が行われる一般的なリースと同様の,平板な発問しかしていない。
(ウ)  以上,被告からの電話による確認に,原告らが回答した事実は,役務の提供を停止したことによる損失を,原告らに負担させるべき理由とはならないし,契約申込の段階で,リース物件受領書及び契約確認書に原告らが署名したことも同様である。
ウ 被告の責任
(ア) JOA社が実質的には役務の提供を約しつつ,支払の手段のために本件ソフトをリースの対象とした事実を知りながら,被告が本件各契約を締結したと認めるに足りる証拠は提出されていない。しかしながら,リース事業者である被告は,サプライヤーが前述のような方法でリース契約を利用した後に役務の提供を止めた場合,被告または原告らに損失が生じることは当然認識しているというべきであるし,被告の担当者においても,JOA社が,原告らとの間では役務の提供を約する旨の書類を作成した事実を把握していれば,本件各契約の締結には応じていなかった旨を明言することに加え(F証言),被告は,訴外JOA社と業務協定を締結し,契約手続の一部を委ねているのであるから,JOA社が,役務の提供を行う趣旨で,顧客にリース契約を締結させることを疑わせる事実が存するときは,この点を確認し,不適切なリース契約を締結しないこととする信義則上の義務を,顧客に対し負っているというべきである
(イ)  これを本件について見るに,
 前記検討したとおり,客観的には,本件ソフトの存在自体が疑われる状況にあり,被告の担当者においても,その点は認識可能であったこと,
 プロが業務用に使うホームページ作成ソフトであっても5万円前後で入手可能であり,これを一本入手すれば,パソコン用,携帯用を含め,複数のホームページを自由に作成できること(甲C27の1〜6),
 原告らは,司法書士事務所または洋裁教室を経営する小規模事業者であり,第三者のためにホームページの作成業務を請け負うことを予定して,高額なプロ用ソフトを購入するとは考えにくいこと,短期間に高額なソフトを買い替え,あるいは同時に複数のソフトを購入すること自体異例であること,
 以上の点を指摘することができるのであり,これらを総合すると,
 本件各契約を扱う被告としては,JOA社が,真実は役務の提供を目的としつつ,名目上本件ソフトを対象とするリース契約を利用しようとするものであることを,若干の注意を払えば了解可能であったのに,適切に調査確認せず,本件各契約を含む多数のリース契約を締結したことになるのであって,信義則上の注意義務違反が認められる。
エ まとめ
  上述のとおり,JOA社が原告らに役務の提供を約し,その支払の方法としてリース契約である本件各契約を利用するという齟齬が生じた点について,原告らと被告双方の責任を検討するに,後者が前者を大きく上回っているといわざるを得ない。
 よって,原告らとの関係において,役務を提供すべき相手方はJOA社であり,リース料債務の相手方は被告であって,本来,原告らはJOA社に対する抗弁をもって被告に対抗することはできないが,本件の事実関係を前提とすると,原告らは,役務の提供がないことを理由とするJOA社に対する抗弁を,信義則上,被告に対しても主張できると解するのが相当である。
3  結語
<中略>
(2)原告らは,信義則上,JOA社に対する抗弁をもって被告に対抗することができ
 具体的には,役務の提供がない以上,未払のリース料を被告に支払う必要がないことになるのであって,連帯保証債務についても同様である
 (なお,既払リース料にも,役務の提供を受けていないのに,被告に徴求された部分が存するはずであるが,被告がJOA社に支払った代金全額を回収するといった特段の事情が認められない限り,不当利得の問題はJOA社との間に存するというべきである。)。
 
(3) よって,原告らの請求のうち,既払リース料の返還を求める部分は理由がないが,未払リース料部分の債務不存在確認を求める部分は理由があるので,主文のとおり判決する。

裁判官 谷 有恒