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「これからの『正義』の話をしよう」(その2)  ( 弁護士の小話   ポスト・グローバリズム ) 2010/08/05
引き続き,マイケル・サンデルの「これからの『正義』の話をしよう」の引用です。
今回の引用は,同書338頁~341頁の一部です。

 この本を,この夏私が読んでいるのは,「ポスト・グローバリズムの思潮の胎動」ということと,この本の内容が,とても関係すると思うからです。また,私が「市民法律事務所」を立ち上げた考え方と関係すると感じるからです。
 読み解く必要のある,読み解く価値のある本のように思います。
 



 第10章 正義と共通善
 …(中略)
 新たな共通善の政治とはどんなものになるだろうか?以下が予想されるいくつかの要点だ。
1 市民であることと,犠牲と,奉仕
 公正な社会には強いコミュニティ意識が求められるとすれば,全体への配慮,共通善への献身を市民のうちに育てる方法を見つけなければならない。公共の生における市民の姿勢と性向,いわゆる「心の習慣」に無頓着ではいけない。善良な生活という純粋に私事化した概念によらずに市民的道徳を育てる方法を見つけなければならない。
 伝統的に,公立学校は公民教育の場だった。世代によっては,軍隊もそうした場だった。ここで私が主に言いたいのは,市民道徳を直截に教えることではなく,知らず知らずのうちに行われることの多い実践的な公民教育のことだ。そういう教育は,青少年が異なった経済的階級,宗教的背景,民族コミュニティから同じ教育機関に集まったときに生まれる。
 多くの公立学校が荒れた状態にあり,アメリカ社会のごく一部の人しか兵役につかない時代に,これほど広く多様な民主的社会がどうすれば公正な社会に必要な連帯と相互責任の意識を育てられるかは,深刻な問題だ。この問題は最近,われわれの政治的言説に,少なくともある程度は再登場してきている。…
2 市場の道徳的限界
 現代の最も驚くべき傾向に数えられるのが,市場の拡大と,以前は市場以外の基準に従っていた生の領域における市場指向の論法の拡大だ。これまでの章で扱ってきた道徳的問題は,たとえば,以下のような場合に生じるものだった。国家が兵役や捕虜の尋問を傭兵や民間業者に委託する場合。親が妊娠と出産を,発展途上国で報酬と引き替えに分娩する人に外注する場合。公開市場で腎臓を売買する場合。それ以外の例も,枚挙にいとまがない。学業がふるわない学校の生徒が標準テストで高得点をあげた場合,現金が支払われるべきだろうか?州は,営利団体である民間経営の刑務所に服役者の収容を委託すべきだろうか?アメリカ合衆国は,アメリカの市民権を10万ドルの取得料で売ればいいというシカゴ大学のエコノミストの提案を採用し,移民政策を簡素化すべきだろうか?
 そうした問題で問われるのは,功利と合意だけではない重要な社会的慣行-兵役,出産,教育と学習,犯罪者への懲罰,新しい国民の受け入れなど-の正しい評価法も問われる。社会的慣行を市場に持ち込むと,その慣行を定義する基準の崩壊や低下を招きかねない。そのため,市場以外の基準の内,どれを市場の侵入から守るべきか問わなくてはいけない。そのためには,善の価値を判断する正しい方法をめぐって対立するさまざなま構想を公に論じることが必要だ。市場は生産的活動を組織する有用な道具だ。だが,社会制度を支配する基準が市場によって変えられるのを望まないならば,われわれは,市場の道徳的限界について公に論じる必要がある。

3 不平等と,連帯と,市民道徳
 (前略)…功利あるいは合意という言葉の枠に問題を押し込もうとする傾向のせいで,哲学者たちは不平等への反対論を見過ごしている。不平等反対論こそ,政界が最も耳を傾けるはずの主張であり,道徳的・公民的刷新の企ての中核をなすと思われる主張だ。
 貧困層を助けるために富裕層に税を課すべきだとする哲学者たちは,功利の名の下に持論を展開する。富者から100ドルを徴収して貧者に与えても,富者の幸福はごくわずかしか減らないが,貧者の幸福は大きく増すと,彼らは推測する。ジョン・ロールズも再分配を擁護するが,彼が根拠とするのは仮設的合意だ。平等な原初状態での仮説的社会契約を想像すれば,誰もが何らかの形の再分配を支持する原理に同意するはずだ,と彼は主張する。
 だがアメリカ人の生活に広まる不平等を懸念する理由には,より重要なものがもう一つある。貧富の差があまりにも大きいと,民主的な市民生活が必要とする連帯が損なわれるという理由だ。
 …(中略)…
 貧困層公共の領域の空洞化により,民主的な市民生活のよりどころである連帯とコミュニティ意識を育てるのが難しくなる。
 したがって,功利や合意に及ぼす影響とはまったく別に,不平等は市民道徳をむしばむおそれがある。
 …(中略)…
 前の世代が州間自動車道計画に多額の投資をしたおかげで,アメリカ人はかつてないほど大きな個人の移動性と自由を手にしたが,そのいっぽうで,自家用車への依存,郊外スプロール化[訳注:都市が無秩序に広がること],環境の悪化,コミュニティを衰退させる生活様式という問題も生まれた。われわれの世代は,同じくらい大きな投資を公民的刷新の基盤づくりに捧げてもいいはずだ。富者も貧者も同じように子どもを通わせたくなる公立学校,富裕層の通勤者にとっても魅力的な信頼性ある交通手段,公立の病院,児童公園,公園,レクリエーション・センター,図書館,博物館や美術館。…