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深夜割増賃金は管理監督者でも請求できる(最判平21・12・18)  ( 裁判例watching   ) 2010/05/05
 平成21年12月18日に管理監督者にあたる労働者に対しても労基法の深夜割増賃金に関する規定が適用される,との
最高裁判決が出ています。管理職であれば残業手当は請求できない(管理職にしておけば残業代の請求を受けないで済む
)というスキームで裁判例は動いてきましたが,最高裁は,深夜割増賃金の支払を義務づける規定は管理職にも適用があるとしたのです。実務に
与える影響は少なくないと思われます。


以下,紹介します。



最判 平成21年12月18日第二小法廷判決
判例時報2068号159頁

  主 文
原判
決中,深夜割増賃金に係る反訴請求に関する部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を東京高等裁判所に差し戻す。

  理 由


 上告代理人廣瀬正司の上告受理申立て理由について
1 本件反訴請求は,美容室及び理容室を経営する被上告人に雇用されていた上告人が,労働基準法(以下「労基法」という。)37条3項に基づく深夜割増賃金
等の支払を被上告人に対して求めるものである。
  
2 原審は,労基法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という。)には,同法の定める深夜割増賃金に関する規定は適用
されないと解した上,上告人は管理監督者に該当すると認定して,深夜割増賃金に係る反訴請求を棄却すべきものと判断した。
  
3 しかしながら,管理監督者には深夜割増賃金に関する規定が適用されないとする原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
労基法における労働時間に関する規定の多くは,その長さに関する規制について定めており,同法37条1項は,使用者が労働時間を延長した場合においては,延
長された時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならないことなどを規定している。他方,同条3項は,使用者が原則として午後10時から午前5時ま
での間において労働させた場合においては,その時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならない旨を規定するが,同項は,労働が1日のうちのどのよ
うな時間帯に行われるかに着目して深夜労働に関し一定の規制をする点で,労働時間に関する労基法中の他の規定とはその趣旨目的を異にすると解される。
また,労基法41条は,同法第4章,第6章及び第6章の2で定める労働時間,休憩及び休日に関する規定は,同条各号の一に該当する労働者については適用しな
いとし,これに該当する労働者として,同条2号は管理監督者等を,同条1号は同法別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者を定めて
いる。一方,同法第6章中の規定であって年少者に係る深夜業の規制について定める61条をみると,同条4項は,上記各事業については同条1項ないし3項の深夜
業の規制に関する規定を適用しない旨別途規定している。こうした定めは,同法41条にいう「労働時間,休憩及び休日に関する規定」には,深夜業の規制に関する
規定は含まれていないことを前提とするものと解される。
  
 以上によれば,労基法41条2号の規定によって同法37条3項の適用が除外されることはなく,管理監督者に該当する労働者は同項に基づく深夜割増賃金を請求
することができるものと解するのが相当である。
  
4 もっとも,管理監督者に該当する労働者の所定賃金が労働協約,就業規則その他によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな
場合には,その額の限度では当該労働者が深夜割増賃金の支払を受けることを認める必要はないところ,原審確定事実によれば,上告人の給与は平成16年3月まで
は月額43万4000円,同年4月以降退社までは月額39万0600円であって,別途店長手当として月額3万円を支給されており,同16年3月ころまでの賃
金は他の店長の1.5倍程度あったというのである。したがって,上告人に対して支払われていたこれらの賃金の趣旨や労基法37条3項所定の方法により計算され
た深夜割増賃金の額について審理することなく,上告人の深夜割増賃金請求権の有無について判断することはできないというべきである。
5 以上によれば,原審の判断のうち深夜割増賃金に係る反訴請求に関する部分には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,
原判決のうち上記の部分は破棄を免れない。そして,上記4の点について更に審理を尽くさせるため,上記の部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀 裁判官竹内行夫)