ホーム
弁護士紹介
事務所概要
相談・依頼
顧問弁護士について
アクセス
平田元秀ブログ
吉谷健一ブログ
topics
大阪高裁平成20年9月2...
「バテレンの世紀」と「潜...
留置場での一般面会日・時...
簡易裁判所の訴訟手続に関...
読者のお便り
一覧へ
CATEGORY
  弁護士の小話
  過去のニュース
  平和
  裁判例watching
  消費者問題
  司法のあり方
  刑事弁護・刑事裁判
  司法修習生の方へ
  民事弁護・民事裁判
  【法律相談】
  お便り
logo
管理画面へ
blog
「消費者契約法,特定商取引法の成果と課題」逐語レジュメ〔3〕  ( 消費者問題   ) 2012/07/15
(続きです。)


4.民事判例の展開(民法)
★ 次に,消費者契約法・特定商取引法の展開を受けた民事判例の展開の成果に言及しましょう。
 成果は主に,不法行為法の発展という形で現れていると思います。
 これは,古くは取締法規違反の民事効として論じられていた領域に関することですが,近時は,説明義務違反とか開示義務違反の行為に限らず,業法において,顧客を保護するために置かれた行政規範に違反する勧誘行為は,原則として不法行為法上の違法を構成するという理解が一般的になっています。
  判例上は,最高裁平成17年7月14日判決が,証券取引の事案で,「証券会社の担当者が,適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしたときは,当該行為は不法行為法上も違法となる」としており,この判例が有名なわけですが,この「著しく」という部分は,行政規範をストレートに裁判規範にできると限らず,ギアをチェインジしなければならないので,そのクッションないしクラッチ用語であるという風に理解した方がよいと思います。
  業者には,業法を守った勧誘をして顧客を保護する注意義務があり,それが行政規範となっているので,その注意義務違反は,民事における注意義務違反とかぶる。「違法性」というエンジンは一緒だけれど,行政規範と裁判規範は適用場面が違うので,ギアを変えるという程度の違い。国会がエンジン部分で顧客を保護するために,違法宣言・無価値判断をしているわけなので,裁判所は不法行為法上は,その判断を基本的には尊重するべきだということになります。
  この点については,潮見佳男教授が平成21年9月に改訂された「不法行為法Ⅰ」という教科書においても,「ある法律規定が保護法規の性質を持つ場合には,当該規定によって定型的に記述された違反類型に該当する行為(定型的行為義務違反〔定型的注意義務違反〕)は,それ自体が当該行為の(不法行為法上の)過失を導くものと考えてよい。」と明言されており,この方向はもはや後戻りしないといえます。
・ パワーポイントのパネルに「民法1条2項,1条1項を媒介として不法行為法上の違法を構成する消費者(弱者)保護法規」と書いています。このうちの民法1条2項を媒介として,というのは信義則を媒介として,という意味です。説明義務や安全配慮義務は,信義則上の付随義務として認められると述べる裁判例も多く,これは分かりやすい話です。
  では民法1条1項を媒介というのはどういう意味か。1条1項は「私権は公共の福祉に適合しなければならない」と規定しています。ここでいう「私権」というのは,「契約書に書いてある事業者の権利」とか,「事業者の営業の自由」と読み替えることができます。そして,ここでいう「公共の福祉」というものの中には,「消費者の安全・安心」というものも含めて考えることができます。そうなると,この条項は,「事業者の営業の自由は,消費者の安心・安全に適合しなければならない。」「契約書に書いてある事業者の権利は,消費者の安心・安全に適合するものでなければならない。」というような規範に生まれ変わります。
  業法の中におかれた消費者保護法規は,こうした意味での公共の福祉にかかる政策を具体化したものであるということが出来るので,民法1条1項を媒介することによって,不法行為法上の違法を構成するという説明もできる,という意味です。
  こうして業法におかれた,例えば交渉力格差を是正するための,政策的な業者に対する行為規範も,民法・民事法・裁判所でその規範を活用する道が広く拡がっています。交流があるということになります。民法の契約法が十分発展しない間でも民法の不法行為法は発展を続けてきたし,具体的なケースにおける日本の不法行為法の救済レベルは,決して国際的に見て,例えばアメリカやイギリスやドイツに比べて,恥ずかしいレベルにはありません。
  むしろ不法行為法の世界だけ,判例だけを比較すれば,我が国の救済水準は,トップクラスである,という風にいえると思います。
  遅れてきたのは,法政策の企画立案,執行ツールであり,行政的・政策的な保護措置です。
5.民事判例の展開(特別法)
★ 次に,消費者契約法制定後の特別法の展開に伴う関係判例の展開についてです。
 利息制限法にかかる判例
  利息制限法は,貸金業者が金を貸す際に利息を幾らと定めようと自由ではないかという契約自由の原則を,社会正義の観点から制限し,上限利率を定めたものです。
  裁判所は,社会正義を実現しようという法の趣旨を徹底してきました。そのようにできたのは,「利率」を制限するという立法,20,18,15%という具体性のある立法により,裁判官にとって,利息契約の有効・無効の線引きが明確だったからです。その基礎があったから,判例がすくすくと発展したのです。
  この社会正義観は,日本社会に根付いています。裁判所は,国会の揺り戻しも押さえて判例を発展させ,最後に,貸金業法によるグレーゾーン金利を撤廃させるに至りました。裁判所をフルに働かせる立法の成功例といえます。
  逆に言えば,司法・裁判所を使うときに失敗する立法例もあります。
 消費者契約法等にかかる判例の不安定展開
  これに言及したいと思います。
  消費者契約法について,最近重要な最高裁判例が続いています。
・ まずは,9条1号の平均的損害額を超える違約金条項に関して,入学金・学納金訴訟がありました。これについては,平成18年11月27日の最高裁判決があります。判決は,入学金は返還不要,授業料等は原則3月31日までに辞退を申し入れれば全額返還すべきという風に決めました。これは,消費者契約法が切り開いた大いなる成果であるということができます。しかし,この訴訟で裁判所としてはどのように判断をするのがよいか,時間をかけて世論を見極めていたと思います。そこは政治的・政策的判断をしていたと思います。
・ 他方,特商法の定める法定限度額を超える違約金条項に関して,有名な英会話教室N
  OVAの判決が平成19年4月3日にありました。ここでは,契約時単価で使用済みポイントが清算するべきか,清算規定による単価で,使用済ポイントが清算されるべきかが争点となりましたが,契約時単価によると判断されました。これについては,消費者側は,歓迎しましたが,国会などでは,問題だという声もかなりありました。
・ 他方,消費者契約法10条に関しては,敷引金の額が契約経過年数に応じて月額賃料額の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていることなどから,敷引金の額が高額に過ぎるとはいえず,敷引特約が消費者契約法10条に違反しないとした,平成23年3月24日の最高裁判決はショッキングなインパクトを与えています。「通常損耗は賃料に含まれていると考える」という民法の任意規定のルールがあるのに,その規定に比して消費者に一方的に不利であるのに,その不利の程度は,信義則に反する程度ではないというわけです。信義則の基準は敷引が高すぎるかどうかの「程度問題」を図る基準として,用いられた。
・ これに引き続き,平成23年7月15日の最高裁判決は,賃貸借契約の更新料についても,更新料の額が賃料の額,更新期間等に照らし高額すぎる等の事情がない限り,消費者契約法10条に違反しないとしています。ここでも,信義則基準は,更新料が高すぎるかどうかの「程度問題」を図る基準として,用いられています。
・ なお,新聞報道では,平成24年3月1日に,京都地裁で,更新料について,新たな判決が出て,そこでは,1年ごとの更新の場合には更新料の上限は賃料年額の2割が相当とし,超過分が無効と判断されたとのことです。
・ これらは賃貸借契約に関する判例ですが,今後とも,10条は,信義則論をめぐり,不安定状態が続くということです。
・ まあ,それでも,消費者契約法10条がなかったときよりはよくなっていると評価すべきかも知れませんし,逆に最高裁はさすがにバランス感覚がある,という風に評価する人もいると思います。
  議論の分かれるところだと思います。
  この信義則基準の解釈の仕方をおかしいというのなら,もはや法律を改正する必要があると思います。
・ 消費者契約法4条1項2号と4条4項の重要事項についても,ショッキングな最判が出ています。平成22年3月30日の最高裁判決です。この判決は,消費者契約法上,断定的判断の提供の対象となる事項(商品先物取引の委託契約に係る将来における当該商品の価格など将来における変動が不確実な事項)は,事実不告知取消権の対象とならないと判断しました。「金の値段の値上がりは確実と予想されており,金を購入するとお得だと思います。」と説明したが,実際には業界では「金は暴落する危険性がある」との噂が広がっていた事案で,上記の説明は,断定的判断の提供にもあたらないし,そもそも,こうした将来の変動が不確実な事項については,いくら,利益が得られると告げても,事実不告知の取り消し対象とならない,ということになってしまいました。
・ これも,この解釈をおかしいというのなら,もう,法律を改正する必要があります。
  正直,消費者契約法を改正するか特別法を制定するしかありません。
・ デート商法をめぐる個別クレジット契約に関する平成23年10月25日の最高裁判決もありました。この判決は,公序良俗違反とされる訪問販売契約に関する個別クレジット契約も,ざっくりというと,クレジット会社において,その事情を知っていたとか容易に知り得た,というような特段の事情がない限りは,無効となることはないと述べています。
(〔4〕に続く)