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【最高裁大法廷平成25年9月4日決定】 非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は憲法14条1項に違反し無効。  ( 裁判例watching   憲法 ) 2013/09/15
 【最高裁大法廷平成25年9月4日決定】 
<判旨等>

● 非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定(民法900条4号ただし書)は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたものというべきである。

●   法的安定性は法に内在する普遍的な要請であり,当裁判所の違憲判断も,その先例としての事実上の拘束性を限定し,法的安定性の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず,このことは,裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得る。

● 既に関係者間において裁判,合意等により確定的なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが,関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば,本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当である。

●  本決定の違憲判断は,A[被相続人]の相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない。

上記決定が,注目された重要な大法廷決定であることはいうまでもありません。
ここでは,その重要な部分について紹介しておきたいと思います。
以下,判旨を見ておきましょう。

<憲法14条1項適合性の判断基準>
●憲法14条1項 法の下の平等 :事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべき(最大判昭和39年5月27日,最大判昭和48年4月4日等)。
●相続制度は,被相続人の財産を誰に,どのように承継させるかを定めるもの
 相続制度を定めるに当たっては,それぞれの国の伝統,社会事情,国民感情なども考慮されなければならない
●現在の相続制度は,家族というものをどのように考えるかということと密接に関係している
 その国における婚姻ないし親子関係に対する規律国民の意識等を離れてこれを定めることはできない。
●これらを総合的に考慮した上で,相続制度をどのように定めるかは,立法府の合理的な裁量判断に委ねられている。
●立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても,そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には,当該区別は,憲法14条1項に違反する。

<本件規定の憲法14条1項適合性について>
(1)  
憲法24条1項:「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない。」
    同条2項:「配偶者の選択,財産権,相続,住居の選定,離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならない。」
 民法739条1項は,「婚姻は,戸籍法(中略)の定めるところにより届け出ることによって,その効力を生ずる。」と定め,いわゆる事実婚主義を排して法律婚主義を採用。
 相続制度: 昭和22年民法改正により,「家」制度を支えてきた家督相続が廃止され,配偶者及び子が相続人となることを基本とする現在の相続制度が導入された。
 遺産相続に関し嫡出でない子の法定相続分を嫡出子のそれの2分の1とする規定(昭和22年民法改正前の民法1004条ただし書)は,現行民法にも引き継がれた。
(2)
 最大決平成7年7月5日(「平成7年大法廷決定」)は,
本件規定を含む法定相続分の定めが,法定相続分のとおりに相続が行われなければならないことを定めたものではなく,
遺言による相続分の指定等がない場合などにおいて補充的に機能する規定であることをも考慮事情とした上,
前記2と同旨の判断基準の下で,
嫡出でない子の法定相続分を嫡出子のそれの2分の1と定めた本件規定につき,「民法が法律婚主義を採用している以上,法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが,他方,非嫡出子にも一定の法定相続分を認めてその保護を図ったものである」とし,その定めが立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないのであって,憲法14条1項に反するものとはいえないと判断した。

 しかし,法律婚主義の下においても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分をどのように定めるかということについては,前記2<憲法14条1項適合性の判断基準>で説示した事柄を総合的に考慮して決せられるべきものであり,また,これらの事柄は時代と共に変遷するものでもあるから,その定めの合理性については,個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らして不断に検討され,吟味されなければならない。
(3)  昭和22年民法改正以降の変遷等の概要
  ア
  昭和22年民法改正の経緯:
・ 相続財産は嫡出の子孫に承継させたいとする気風,法律婚を正当な婚姻とし,これを尊重し,保護する反面,法律婚以外の男女関係,あるいはその中で生まれた子に対する差別的な国民の意識
・ 嫡出でない子には相続分を認めないなど嫡出子と嫡出でない子の相続分に差異を設けていた当時の諸外国の立法例
○昭和22年民法改正以降:
・ 婚姻,家族の形態が著しく多様化。これに伴い,婚姻,家族の在り方に対する国民の意識の多様化が大きく進んでいることが指摘されている。
 イ  
諸外国の状況も,大きく変化
・ 特に欧米諸国において,昭和22年民法改正当時は,多くの国が嫡出でない子の相続分を制限する傾向にあり,そのことが本件規定の立法に影響を与えた。しかし,1960年代後半以降,これらの国の多くで,子の権利の保護の観点から嫡出子と嫡出でない子との平等化が進み,相続に関する差別を廃止する立法がされ,
・ 平成7年大法廷決定時点でこの差別が残されていた主要国のうち,ドイツにおいては1998年,フランスにおいては2001年,嫡出子と嫡出でない子の相続分に関する差別がそれぞれ撤廃されるに至っている。現在,我が国以外で嫡出子と嫡出でない子の相続分に差異を設けている国は,欧米諸国にはなく,世界的にも限られた状況にある。
 ウ 
我が国は,
   昭和54年に「市民的及び政治的権利に関する国際規約」,
   平成6年に「児童の権利に関する条約」(平成6年条約第2号)を批准。
・ 条約に,児童が出生によっていかなる差別も受けない旨の規定が設けられている。
・ 我が国の嫡出でない子に関する上記各条約の履行状況等については,平成5年に自由権規約委員会が,包括的に嫡出でない子に関する差別的規定の削除を勧告し,その後,〔上記2規約に対応する国連の〕各委員会が,具体的に本件規定を含む国籍,戸籍及び相続における差別的規定を問題にして,懸念の表明,法改正の勧告等を繰り返してきた。最近でも,平成22年に,児童の権利委員会が,本件規定の存在を懸念する旨の見解を改めて示している。
 エ
我が国における嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等も変化。
・ 住民票における世帯主との続柄の記載:・昭和63年に訴訟が提起,
・ 控訴審係属中の平成6年に,住民基本台帳事務処理要領の一部改正世帯主の子は,嫡出子であるか嫡出でない子であるかを区別することなく,一律に「」と記載することとされた。
・ 戸籍における嫡出でない子の父母との続柄欄の記載
・平成11年に訴訟が提起,
・第1審判決言渡し後の平成16年に,戸籍法施行規則の一部改正
嫡出子と同様に「長男(長女)」等と記載することとされ,
・ 既に戸籍に記載されている嫡出でない子の父母との続柄欄の記載:
・ 通達(平成16年11月1日)
当該記載を申出により上記のとおり更正することとされた。
・ さらに,最大判平成20年6月4日は,
嫡出でない子の日本国籍の取得につき嫡出子と異なる取扱いを定めた国籍法3条1項の規定(平成20年法律第88号による改正前のもの)が遅くとも平成15年当時において憲法14条1項に違反していた旨を判示し,同判決を契機とする国籍法の上記改正に際しては,同年以前に日本国籍取得の届出をした嫡出でない子も日本国籍を取得し得ることとされた。
 オ 
嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を平等なものにすべきではないかとの問題:
かなり早くから意識。
・ 昭和54年 法務省民事局参事官室 「相続に関する民法改正要綱試案」
  嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を平等とする旨の案が示された。
・ 平成6年 「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」
・ 平成8年 法制審議会(法務大臣答申)「民法の一部を改正する法律案要綱」
  両者の法定相続分を平等とする旨が明記された。
・ 平成22年 上記要綱と同旨の法律案が政府により準備された。
  (国会提出には至っていない。)
 カ  
前記ウの〔国連〕各委員会から懸念の表明,法改正の勧告等がされた点について同エのとおり改正が行われた結果,我が国でも,嫡出子と嫡出でない子の差別的取扱いはおおむね解消されてきたが,本件規定の改正は現在においても実現されていない。
 (理由)
・ 欧米諸国:全出生数に占める嫡出でない子の割合が著しく高く,中には50%以上に達している国もある のとは対照的に,我が国:嫡出でない子の出生数が年々増加する傾向にあるとはいえ,平成23年でも2万3000人余,上記割合としては約2.2%にすぎない。
・ 婚姻届を提出するかどうかの判断が第1子の妊娠と深く結び付いているとみられるなど,全体として嫡出でない子とすることを避けようとする傾向がある。
・ 換言すれば,家族等に関する国民の意識の多様化がいわれつつも,法律婚を尊重する意識は幅広く浸透しているとみられることが,上記理由の一つではないか。
(しかし)
・ 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子のそれの2分の1とする本件規定の合理性は,種々の要素を総合考慮し,個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし,嫡出でない子の権利が不当に侵害されているか否かという観点から判断されるべき法的問題であり,
 法律婚を尊重する意識が幅広く浸透しているということや,
 嫡出でない子の出生数の多寡,
 諸外国と比較した出生割合の大小は,
上記法的問題の結論に直ちに結び付くものとはいえない。
 キ 
当裁判所は,平成7年大法廷決定以来,結論としては本件規定を合憲とする判断を示してきたものであるが,
・ 平成7年大法廷決定において既に,嫡出でない子の立場を重視すべきであるとして5名の裁判官が反対意見を述べたほかに,
・ 婚姻,親子ないし家族形態とこれに対する国民の意識の変化,更には国際的環境の変化を指摘して,昭和22年民法改正当時の合理性が失われつつあるとの補足意見が述べられ,
・ その後の小法廷判決及び小法廷決定においても,同旨の個別意見が繰り返し述べられてきた(最判一小平成12年1月27日,最判二小平成15年3月28日,最判一小平成15年3月31日,最判一小平成16年10月14日,最判二小平成21年9月30日等)。
・ 特に,前掲最高裁平成15年3月31日第一小法廷判決以降の当審判例は,その補足意見の内容を考慮すれば,本件規定を合憲とする結論を辛うじて維持したものとみることができる。
 
 ク
前記キの当審判例の補足意見の中には,
・ 本件規定の変更は,相続,婚姻,親子関係等の関連規定との整合性親族・相続制度全般に目配りした総合的な判断が必要であり,また,上記変更の効力発生時期ないし適用範囲の設定も慎重に行うべきであるとした上,
・ これらのことは国会の立法作用により適切に行い得る事柄である旨を述べるものもある。
(しかし)
・ 関連規定との整合性を検討することの必要性は,本件規定を当然に維持する理由とはならない。また,裁判において本件規定を違憲と判断しても法的安定性の確保との調和を図り得ることは,後記4で説示するとおり。
(4)  
本件規定の合理性に関連する以上のような種々の事柄の変遷等
・その中のいずれか一つを捉えて,本件規定による法定相続分の区別を不合理とすべき決定的な理由とし得るものではない。
・しかし,総合的に考察すれば,家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。
法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても,上記のような認識の変化に伴い,上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。
・以上を総合すれば,遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては,立法府の裁量権を考慮しても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。したがって,本件規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたものというべきである。
 
<先例としての事実上の拘束性について>
 本決定は,本件規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断するものである。
 憲法に違反する法律は原則として無効であり,その法律に基づいてされた行為の効力も否定されるべきものであることからすると,本件規定は,本決定により遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断される以上,本決定の先例としての事実上の拘束性により,上記当時以降は無効であることとなり,また,本件規定に基づいてされた裁判や合意の効力等も否定されることになろう。
 しかしながら,本件規定は,国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し,相続という日常的な現象を規律する規定であって,平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると,その間に,本件規定の合憲性を前提として,多くの遺産の分割が行われ,更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。取り分け,本決定の違憲判断は,長期にわたる社会状況の変化に照らし,本件規定がその合理性を失ったことを理由として,その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず,本決定の違憲判断が,先例としての事実上の拘束性という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し,いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは,著しく法的安定性を害することになる。
 法的安定性は法に内在する普遍的な要請であり,当裁判所の違憲判断も,その先例としての事実上の拘束性を限定し,法的安定性の確保との調和を図ることが求められているわなければならず,このことは,裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる。

 以上の観点からすると,既に関係者間において裁判,合意等により確定的なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが,関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば,本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当であるといえる。
 
 そして,相続の開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については,債務者から支払を受け,又は債権者に弁済をするに当たり,法定相続分に関する規定の適用が問題となり得るものであるから,相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的なものとなったとみることは相当ではなく,その後の関係者間での裁判の終局,明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて,法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当である。
 したがって,本決定の違憲判断はAの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。

<先例拘束性に関する判示・判例の不遡及的変更に関する判示に関する補足意見>
1.裁判官金築誠志の補足意見
 法廷意見のうち本決定の先例としての事実上の拘束性に関する判示は,これまでの当審の判例にはなかったもので,将来にわたり一般的意義を有し,種々議論があり得ると思われるので,私の理解するところを述べておくこととしたい。
 本決定のような考え方が,いかにして可能であるのか。
 ○我が国の違憲審査制度において確立した原則である,いわゆる付随的違憲審査制と違憲判断に関する個別的効力説を前提とすべき。
▼付随的違憲審査制は,当該具体的事案の解決に必要な限りにおいて法令の憲法適合性判断を行うものであるところ,本件の相続で問題とされているのは,同相続の開始時に実体的な効力を生じさせている法定相続分の規定であるから,その審査は,同相続が開始した時を基準として行うべきである。本決定も,本件の相続が開始した当時を基準として,本件規定の憲法適合性を判断している。
▼また,個別的効力説では,違憲判断は当該事件限りのものであって,最高裁判所の違憲判断といえども,違憲とされた規定を一般的に無効とする効力がないから,立法により当該規定が削除ないし改正されない限り,他の事件を担当する裁判所は,当該規定の存在を前提として,改めて憲法判断をしなければならない。個別的効力説における違憲判断は,他の事件に対しては,先例としての事実上の拘束性しか有しないのである。
 
 ○ とはいえ,遅くとも本件の相続開始当時には本件規定は憲法14条1項に違反するに至っていた旨の判断が最高裁判所においてされた以上,法の平等な適用という観点からは,それ以降の相続開始に係る他の事件を担当する裁判所は,同判断に従って本件規定を違憲と判断するのが相当であることになる。その意味において,本決定の違憲判断の効果は,遡及するのが原則である。
 
 ○ しかし,先例としての事実上の拘束性同種の事件に同一の解決を与えることにより,法の公平・平等な適用という要求に応えるものであるから,憲法14条1項の平等原則が合理的な理由による例外を認めるのと同様に,合理的な理由に基づく例外が許されてよい。
 また,先例としての事実上の拘束性は,同種の事件に同一の解決を与えることによって,法的安定性の実現を図るものでもあるところ,拘束性を認めることが,かえって法的安定性を害するときは,その役割を後退させるべきであろう。
 
 本決定の違憲判断により,既に行われた遺産分割等の効力が影響を受けるものとすることが,著しく法的安定性を害することについては,法廷意見の説示するとおりであるが,特に,従来の最高裁判例が合憲としてきた法令について違憲判断を行うという本件のような場合にあっては,従来の判例に依拠して行われてきた行為の効力を否定することは,法的安定性を害する程度が更に大きい。
★ 遡及効を制限できるか否かは,裁判所による法の解釈が,正しい法の発見にとどまるのか,法の創造的機能を持つのかという問題に関連するところが大きいとの見解がある。
・ 確かに,当該事件を離れて,特定の法解釈の適用範囲を決定する行為は,立法に類するところがあるといわなければならない。裁判所による法解釈は正しい法の発見にとどまると考えれば,遡及効の制限についても否定的な見解に傾くことになろう。そもそも,他の事件に対する法適用の在り方について判示することの当否を問題にする向きもあるかもしれない。
・ しかし,本決定のこの点に関する判示は,予測される混乱を回避する方途を示すことなく本件規定を違憲と判断することは相当でないという見地からなされたものと解されるのであって,違憲判断と密接に関連しているものであるから,単なる傍論と評価すべきではない
・ また,裁判所による法解釈は正しい法の発見にとどまるという考え方については,法解釈の実態としては,事柄により程度・態様に違いはあっても,通常,何ほどかの法創造的な側面を伴うことは避け難いと考えられるのであって,裁判所による法解釈の在り方を上記のように限定することは,相当とは思われない。
 コモン・ローの伝統を受け継ぐ米国においても,判例の不遡及的変更を認めている。
・ また,判例の不遡及的変更は,憲法判断の場合に限られる問題ではないが,
  法令の規定に関する憲法判断の変更において,法的安定性の確保の要請が,より深刻かつ広範な問題として現出することは,既に述べたとおりである。法令の違憲審査については,その影響の大きさに鑑み,法令を合憲的に限定解釈するなど,謙抑的な手法がとられることがあるが,遡及効の制限をするのは,違憲判断の及ぶ範囲を限定しようというものであるから,違憲審査権の謙抑的な行使と見ることも可能であろう。
・ いずれにしても,違憲判断は個別的効力しか有しないのであ繧