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妻のしたNHKの受信契約について夫が受信料の支払義務を負わないとした事例  ( 裁判例watching   ) 2010/08/10

おもしろい判例を発見しました。

妻のしたNHKの受信契約について夫が受信料の支払義務を負わないとした事例です。
札幌地裁平成22年3月19日判決(平成20年(ワ)第1499号放送受信料請求事件)〔TKC〕

 NHKが原告です。妻が放送受信契約を締結している事案で,夫に,受信料が未払であるとして,民法761条の日常家事債務を夫婦が連帯するという規定に基づき,または民法110条の表見代理の規定に基づき,受信料の支払を求めた事案です。棄却です。

1.判決は,放送受信契約を,契約当事者間に対価関係はない片務契約であるとし,こうした契約に民法761条の日常家事債務の規定の適用はないと解釈しています。
 判旨「民法761条は,双務契約における一方当事者から夫婦の一方と契約した場合に,その行為が日常の家事に関する法律行為に含まれる場合には,夫婦それぞれに連帯責任を負わせて,夫婦と取引をした第三者を保護しようとする規定である。そうすると,契約当事者間に対価関係はない片務契約である放送受信契約に民法761条の適用はないと解するのが相当である。したがって,民法761条の適用があることを前提とする原告の主張は採用できない。」


2.また,同様の理由から,取引の第三者を保護するための表見代理の規定の適用もないと解釈しています。
 判旨「放送受信契約は,契約当事者間に対価関係はない片務契約であるから,取引の第三者を保護するための表見代理の規定の適用はないと解するのが相当である。したがって,表見代理の規定の適用があることを前提とする原告の主張は採用できない。」

3.この片務契約という性質決定について,次のように解釈を組み立てています。
 判旨「放送法は,2で検討したとおり,原告に受信料という特殊な負担金の徴収手段として,租税と同様の取扱いとしたり,電気料金に上乗せしたりする特別な徴収方法を認めず,一般債権と同様の民事訴訟法によるべきこととした。その結果,原告が本件訴訟において主張する放送受信契約は,個人主義を基調とする民法その他の私法によって修正されることになり,放送受信契約の成立は,受信設備(テレビ)を設置した日ではなく,放送受信契約を締結した日からであること,契約主体も世帯ではなく,受信設備(テレビ)設置者に限定されることになったものと考えられる。そして,受信料という特殊な負担金を国民から徴収するという放送受信契約は,国民の側からみれば,受信設備(テレビ)を設置した場合に受信料という特殊な負担金を原告に納付するという,民法上の贈与契約に準ずる契約と解することができる。
 そこで,原告と被告との間に本件契約が成立したというためには,被告が妻に代理権を授与しているか,妻の行為を追認するか,取引の第三者を保護する民法上の規定(民法761条の日常家事債務の連帯責任,民法110条の表見代理)がなければならない。本件に提出された証拠によれば,これらを認めるに足りる事実は認定できない。」

 なかなか民法上の性質決定に関しては骨太な解釈の組立がなされており,興味深いです。

<平田元秀wrote>:)