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超高金利貸付は不法原因給付だとした最判(2008年)とハムラビ法典(紀元前18世紀)  ( 弁護士の小話   ) 2014/06/29

 最高裁第3小法廷平成20年6月10日判決(民集62巻6号1488頁)は,「いわゆるヤミ金融の組織に属する業者が,借主から元利金等の名目で違法に金員を取得して多大の利益を得る手段として,年利数百%~数千%の著しく高利の貸付けという形をとって借主に金員を交付し,これにより,当該借主が,弁済として交付した金員に相当する損害を被るとともに,上記貸付けとしての金員の交付によって利益を得たという事情の下では,当該借主から上記組織の統括者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として当該借主の損害額から控除することは,民法708条の趣旨に反するものとして許されない。」と判示しました。

 この判示の理由には,次のようにあります。「著しく高利の貸付けという形をとって上告人[債務者]らから元利金等の名目で違法に金員を取得し,多大の利益を得るという反倫理的行為に該当する不法行為の手段として,本件各店舗から上告人[債務者]らに対して貸付けとしての金員が交付されたというのであるから,上記の金員の交付によって上告人[債務者]らが得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべきであり,同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として上告人らの損害額から控除することは許されない。」

 この判決は,分かりやすくいうと,ヤミ金の超高金利貸付の如きものは,人倫に反する不法行為というべきものであって,ヤミ金が先に債務者に渡した金銭(元金)は,不法原因給付(民法708条)というべきであるから,ヤミ金が債務者に返還請求しうるものではない,と述べているものです。

 金融に関するビジネス書でメソポタミアのハムラビ法典(紀元前18世紀)の上限金利規制を読み,あらためて,上記の最高裁判決の規範が,時代を超えた法の規範として相応しいものであることを思いました。

 ハムラビ法典は,「もし商人が穀物を貸借契約に供した時には穀物1クールにつき60クーの利息を徴収する。もし銀を貸借契約に供したときには、銀1シケルにつき6分の1シケルと6シェの利息を徴収する」「もし商人が違反して1クールに対し60クーの利息あるいは1銀シケルに対して6分の1シケルと6シェの利息を超過して徴収したときは、商人は与えたものを失う」と定めていたといいます。

 なお,この「1シケルに対して6分の1シケルと6シェ」というのは,現在の10進法でいうと20%の利息です。現在の利息制限法と出資法の上限金利です(後注)。

 ここで重要なのは,ハムラビ法典が「商人が上限金利を超過して徴収した時は,商人は,与えたものを失う」と定めていたことです。これは,商人が法典の規定にも拘わらず上限金利を超える利息を徴収した時は,元金の返金も求めることができなくなるということです。考え方,価値判断の基本は,最高裁平成20年6月10日判決と同じであるといえるように思います。

 実に興味深いですね。

 ちなみに,ハムラビ法典では,あとがきに,「強者が弱者を虐げないように、正義が孤児と寡婦とに授けられるように」の文言があるそうです。社会正義を守り,弱者を救済するのが法の原点であることを世界で2番目に古い法典が語っていることは,現代においても注目される,とウィキペディア「ハンムラビ法典」の記事はコメントしていますが,同感です。

(注1)利息制限法1条 

  •  金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。

  •  ① 元本の額が十万円未満の場合 年二割

  •  ② 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分

  •  ③ 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分

(注2)出資法 5条(高金利の処罰)

  1. 金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

  2. 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。