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「消費者契約法,特定商取引法の成果と課題」逐語レジュメ〔4〕  ( 消費者問題   ) 2012/07/15
(続きです)

6.民事判例の展開(特別法)

 ・ 以上見たように,最近は,最高裁の消費者契約法,特定商取引法,割賦販売法領域における民法の解釈適用は,不安定さを増しているといえるかもしれません。
  ではこれをどう評価し,どう対処するのがよいのでしょうか。 
  ◦ 消費者法(立法)政策策定レベルでの法発展
      ◦ 消費者行政施策レベルでの実務展開
     冒頭でも述べましたように,現在,消費者庁・消費者委員会が消費者行政の一元化を担っています。こうした体制がある元で,問題対処型の無効・取消・解除ルールを他の規制とミックスして機動的に導入することのできる可能性は広がっています。これは本腰を入れてこれからわが国が行っていく必要のある事柄だと思います。ただ,これには,国家財政はほぼ破綻していますので,そのような行政を育て・支える消費者市民社会・企業社会のバックボーンはあるのかが常に問われてくると思います。
      ◦ 民法・消費者契約法の改正
        他方,民法・消費者契約法の改正と言うところで言いますと,この法律は,国民のくらしに与える影響が大きく,しかも,リーチが長い。思わぬところに被害を及ぼす可能性がある。利害調整を慎重に行いながら,取引の予測可能性を担保していくべき領域について,司法という裁判所と,一部当事者のみが進行する手続によって法を形成する,そういう制度に委ねてしまって良いのかという点はあります。もうすこし細かく,機動的に動かせる,体系的ではあるが,百科辞典的法律の中で処理をしていく方がよいのではないかという気もしています。
      ◦ 司法研修所教育等による法教育
        消費者センターや法律事務所には,契約弱者の被害の救済を求めて常に消費者,中小零細業者が相談に来られます。私たちの用いる基本的な救済ツールは民事訴訟です。なので,私たちが消費者ルールをよく知っていても,裁判官が,民事と離れた世界のものとしてそれを遠くに感じるというのでは,なにもならない。そこは法教育が必要。しかしそのような骨太な法教育を支える価値観がまだ生まれていない。
      ◦ 適格消費者団体等による訴訟
        適格消費者団体は消費者・国民に近い立場に本来あるわけですから,世論を盛り上げるためのキャンペーンを行えるだけの力がないといけないと思っています。裁判に打ち勝てる有能な弁護士集団にバックアップしてもらえるというだけではなく,その裁判によって法を獲得するというのであれば,世論の支持を受けないといけないと思います。
7.消費者法形成に係る論点~消契法・特商法的視点から
★ 続いて,消費者法の形成に係る論点のパネルに移ります。
  このように見てきて,消費者契約法制定から10年という今の時点で,これからどのように消費者法を形成していくのかという点についてですが,
  現在,日本ではご承知の通り法務省で民法改正が議論されており,その審議会では,民法に消費者概念を入れて,消費者契約法をそこに統合するのがよいという意見も出ています。たしかに,民法はつねに国民生活の基本となる法律であるべきだと,考えますと,民法の中には,消費者契約法などの国民生活に身近なルールも入るべきだという考え方は理解できます。
  しかし,消費者の立場からは,消費者の安心安全のためには政策法典を志向すべきで,そこの政策目的に見合って機動的かつ合目的的に民事ルールを設定することについては,民法理論にあまり縛られるとよくない(政策目的が達成できない)訳ですから,その民法に消費者に関する基本的なルールを規定するとするなら,民法に規定した消費者ルールの反対解釈によって,消費者政策法規に新しい民事ルールを入れようとしたときに,その民法的基礎が失われてしまうようなことにならないように,細心の注意を払う必要があると思われます。私は,実際には,民法に規定した消費者ルールの反対解釈の害悪は避けられないと思っており,そのことが将来の消費者政策立法の足かせであろうから,よろしくないと思っています。
★ 次に,「民法に消費者概念を取り入れるべきかどうか」という点に関しては2つの点を上げたいと思います。
 ・ 一つは,消費者契約法上の「消費者」概念が前提とする,情報・交渉力モデルの限界についてです。これは,村本教授が,消費者法ニュース80号の論文の中で述べられている点です。
   すなわち,EU諸国では,「被害に遭いやすい消費者」論のもと,消費者の属性毎にきめ細かく事業者の営業行為の不公正さを判断しようとする法制があり,また非良心性の法理や状況の濫用法理に基づく法制がある。これらは,日本でいわれる消費者取消権や公序良俗論を超える射程を持っているが,現在の民法改正論議は,あくまで「消費者」概念,情報・交渉力モデルに立つもので,EUに追いついてない,と述べています。
 ・ 次に,民法が憲法秩序による正当性の検証にさらされていると理解すべきこととの関係です。
   潮見教授は不法行為法Ⅰの教科書のなかで,「民法の解釈と構成は,常に憲法秩序による正当性の検証にさらされる。」と述べています。自由権,平等権,生存権,社会権,手続的権利の全てが憲法に基づく保護要請のもとに置かれるとされています。そうだとすると,消費者概念を定立して保護しようとする問題も,自由権や平等権の確保にかかわる格差是正の原理に基づいて民法を一般に立法・解釈すればいいので,その手段として消費者概念を民法に入れ込むというのは,わざわざという突出観を否めないという風に感じました。
☆ 最後に,「消費者」の「契約弱者」としての再定義と契約弱者たる事業者保護論のもたらした視座という点に触れる必要があると思います。
   近畿弁護士会連合会が開催した11月25日のシンポジウムでは,「情報・交渉力」モデルが妥当するのは果たして「消費者」だけであるのか,という観点から「事業者」が契約弱者という立場でした契約トラブルの問題が取り上げられています。
   そこでは,消費者問題は,「取引状況に応じた要支援状態」「契約弱者の問題」であると再定義がなされました。
   ここからは,新たに2つの視座が得られています。
    第1に,消費者民事ルールを民法改正に持ち込む視座です。
     これは,消費者契約法の消費者概念を民法に取り込むというのではなく,むしろ,消費者契約法を基礎に育まれた考え方を民法改正に生かすというものです。今まさに民法改正論議に必要な視点を提供しています。
    その中には,次のものが上げられます。
         約款規制,情報提供義務・不実表示,公序良俗違反の具体化
         動機の錯誤の判例法理の明文化,詐欺の拡充
         与信者に対する抗弁対抗,与信契約の誤認取消権
    第2に,消費者民事ルールを事業者間取引規制立法に持ち込む視座
         割賦販売法上の個別信用購入あっせん規制法と同種の規制法を事業者間取引たる提携リースにおいても立法する等の理論的根拠を提供
○ 「消費者契約法・特定商取引法の成果と課題」から消費者法の今後を考える手がかりとして私が考えていることは,ほぼ,以上の通りです。
                                                                          以 上
(逐語レジュメ終わり)