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2.最高裁平成2年判決との関係

(1)

  • 最高裁平成2年判決は,個品割賦購入あっせん(平成20年割賦販売法改正前の旧法2条3項2号の定義によるもの。平成20年改正後は,割賦要件が撤廃され,名称も個別信用購入あっせんとなった(新法2条4項)。)について,割賦販売法の抗弁対抗規定の適用がない場合,民法の解釈としては,購入者・クレジット業者間の立替払契約と購入者・販売業者間の売買契約の別個の契約を前提とする以上,両契約が経済的・実質的に密接な関係にあることは否定し得ないとしても,購入者が売買契約上生じている事由をもって当然にあっせん業者に対抗することはできないとしています。その上で,抗弁対抗権を定めた特約のある場合,又はクレジット業者において販売業者が債務不履行に至るべき事情を知り若しくは知り得べきでありながら立替払を実行したなど上記不履行の結果をクレジット業者に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事情があるときは,抗弁対抗ができるとしています。
  • これに対して本件の事案は,割賦販売法上の抗弁対抗規定の適用がある事案であり,かつ,立替払契約の未払金請求は,購入者の抗弁対抗権により,原判決で棄却され,この点は確定していますので,そこから一歩進んで,売買契約が公序良俗に反し無効であることにより,購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となるかの問題が正面から判断対象となっており,本判決は,この点に関し初めて判断を示したものです。

(2)

  • 本判決は,個品割賦購入あっせんにおいて,「販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるとき」には,立替払契約が無効となる余地があると述べています。
  • そして,上記の特段の事情としては,
    • ①販売業者とあっせん業者との関係,
    • ②販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容及び程度,
    • ③販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度
  • 等を照らし合わせるべきものとしています。
  • もっとも,そのあてはめをみると,本判決は,特段の事情としては,かなり限定を加えているように見えます。
  • すなわち,まず,上記①について,「本件販売業者は,本件あっせん業者の加盟店の一つにすぎず,本件販売業者と本件あっせん業者との間に,資本関係その他の密接な関係があることはうかがわれない。」と述べています。加盟店契約関係があるだけでは足りず,資本関係その他の密接な関係が必要だというのですが,そんな事例は稀でしょう。
  • また,上記②について,「本件あっせん業者は,本件立替払契約の締結の手続を全て本件販売業者に委ねていたわけではなく,自ら被上告人に本件立替払契約の申込みの意思,内容等を確認して,本件立替払契約を締結している。」と述べています。しかし,個別クレジット業者が立替払契約の意思確認をするというのは,当たり前のことで,この手続を販売業者が代行するというのはほぼ100%ないでしょう。
  • 次に,上記③について,(購入者が)「本件立替払契約に基づく割賦金の支払につき異議等を述べ出したのは,長期間にわたり約定どおり割賦金の支払を続けた後になってからのことであり,本件あっせん業者は,本件立替払契約の締結前に,本件販売業者の販売行為につき,他の購入者から苦情の申出を受けたことや公的機関から問題とされたこともなかった。」と述べています。この点だけは,各事案毎に異なることになります。異議等を述べ出した時期というのも(それがどれほど重要とみるべきかは別として)事案によって異なるでしょうが,特に,本件の事案では,あっせん業者側の事情について,上記の事実を覆すに足りる証拠が提示されなかったということです。そこは個別性がありましょう。
  • 本判決は,これら①②③に関する事実を総合して,本事案では,上記の特段の事情があるということはできないと述べている訳です。
  • こうして見ると,本判決は,上記①と②のあてはめ箇所における判示で,要するに,個品割賦購入あっせんの販売信用取引において,売買契約が公序良俗違反で無効と評価されたとしても,それだけで,立替払契約も無効と評価するという民法解釈は,行わないと述べているものといえます。
  • しかし,本判決の評価としては,上記③の要素を注意深く見る必要があります。最高裁は,本判決で,上記①及び②の事情が消極的であっても(通常の個別クレジットにかかる販売信用取引ではそうです。),「販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度等に照らし,販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるとき」には,立替払契約が無効となる余地があると述べている訳です。
  • この「販売業者の公序良俗に反する行為についての認識の有無及び程度等」という言葉は,非常に幅があります。最高裁は,公序良俗に反する行為を認識していなければならない,と限定している訳ではありません。「認識の有無及び程度等」の「等」の中には,「通常の注意を払えば知り得た事情」を含むと解する余地があります。

(3)

  • 平成2年判決の特段の事情との比較でいうと,平成2年判決は抗弁接続を認める特別事情の一つ目として,「特約があるとき」を掲げています。これに対し本判決ではクレジットの連動失効が認められる可能性のある特別事情として,「特約があるとき」を掲げていませんが,一定の場合に売買契約と連動して失効する旨の「特約があるとき」には,この特約の適用により立替払契約が無効となることは判決を待つまでもないでしょう。
  • 次に平成2年判決は,特別事情の2つめとして,「販売業者に生じている債務不履行基礎付け事情を知り若しくは知り得べきであったときなど」を掲げています。平成2年判決は,この事情があるときには抗弁対抗を認めますという事情として積極的に書かれています。これに対して本判決は,「販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度等」が積極的でなければ,連動失効の「余地はない」と表現している訳ですから,平成2年判決より消極的な書き方だといえます。最高裁としては,「認識の有無及び程度等」をきちんと踏まえたうえで売買契約の無効に伴い立替払契約も失効すると判示した高裁判決が上がってくれば,あらためてその当否を判断しましょう,というスタンスだと思えます。