ロシアのウクライナ侵攻 兵庫県弁護士会が会長談話を出しました。

プーチン大統領のロシアが,24日,ウクライナへの武力侵略を開始しました。
これを受け,2022年2月26日,兵庫県弁護士会は,会長談話を出しました。次の通りです。

https://www.hyogoben.or.jp/news/iken/13226/

ロシア連邦のウクライナ侵攻に関する会長談話

 

2022年(令和4年)2月26日
兵庫県弁護士会      
会 長  津  久  井  進

 このたびのロシア連邦のウクライナに対する侵攻は、国連憲章及び国際法に違反し、市民に重大な危険と恐怖をもたらすもので、到底、許されるものではありません。ウクライナやロシア連邦をはじめとする市民の方々に一刻も早く平和な日常が取り戻されることを強く望みます。

 私たちは国際社会における一市民として、第1に、他国で起きている事実を他人事とせずしっかり直視すること、第2に、その一方で冷静さを欠いた国家主義に陥らないこと、第3に、他者の生命・自由・人権を守り支えることの重要性を、あらためて認識する必要があります。とりわけ、平和的生存権は、戦争や暴力の応酬が絶えない今日の国際社会において、全世界の人々が平和に生きるための全ての基本的人権の基礎となる人権です。自らへの危険を顧みず、政府に反対意思を表明しているロシア連邦の市民の方々の勇気にエールを送ると共に、広く平和的生存権が保障されることを希求します。そして、権力の濫用・暴走の歯止めとなる法の力を期待します。
 こうした観点から、日本政府には、解決に向けた積極的な外交努力を求めます。

 当会は、これまで数多くの機会で、市民の方々とともに、個人の尊厳と恒久の平和の実現に不可欠である平和的生存権の保障を求めてきました。基本的人権の尊重と社会正義の実現を使命とする弁護士として、外交努力によって戦争の惨禍がこれ以上深刻化しないことを心より願って、この会長談話を発表いたします。
以上


(参考)

侵略の定義に関する決議

(国連総会決議3314:United Nations General Assembly Resolution 3314 on the Definition of Aggression)

1974年12月14日 国連総会第29回総会採択

第一条(侵略の定義)

 侵略とは、
 国家による <他の国家>の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する
  又は国際連合の憲章と両立しないその他の方法による
 武力の行使であ って、
 この定義に述べられているものをいう。

第二条(武力の最初の使用)

 国家による国際連合憲章に違反する武力の最初の使用は、侵略行為の一応の証拠を構成する。
 ただし、安全保障理事会は、国際連合憲章に従い、侵略行為が行われたとの決定が他の関連状況(当該行為又はその結果が十分な重大性を有するものではないという事実を含む。)に照らして正当に評価されないとの結論を下すことができる。

第三条(侵略行為)

 次に掲げる行為は、いずれも宣戦布告の有無に関わりなく、二条の規定に従うことを条件として、侵略行為とされる

(a) 一国の軍隊による他国の領域に対する侵略若しくは、攻撃、一時的なものであってもかかる侵入若しくは攻撃の結果もたらせられる軍事占領、又は武力の行使による他国の全部若しくは一部の併合

(b) 一国の軍隊による他国の領域に対する砲爆撃、又は国に一国による他国の領域に対する兵器の使用

(c) 一国の軍隊による他国の港又は沿岸の封鎖

(d) 一国の軍隊による他国の陸軍、海軍若しくは空軍又は船隊若しくは航空隊に関する攻撃

(e) 受入国との合意にもとづきその国の領域内にある軍隊の当該合意において定められている条件に反する使用、又は、当該合意の終了後のかかる領域内における当該軍隊の駐留の継続

(f) 他国の使用に供した領域を、当該他国が第三国に対する侵略行為を行うために使用することを許容する国家の行為

(g) 上記の諸行為い相当する重大性を有する武力行為を他国に対して実行する武装した集団、団体、不正規兵又は傭兵の国家による若しくは国家のための派遣、又はかかる行為に対する国家の実質的関与

第四条(前条以外の行為)

 前条に列挙された行為は網羅的なものではなく、安全保障理事会は、その他の行為が憲章の規定の下で侵略を構成すると決定することができる。

第五条(侵略の国際責任)

 政治的、経済的、軍事的又はその他のいかなる性質の事由も侵略を正当化するものではない。

 侵略戦争は、国際の平和に対する犯罪である。侵略は、国際責任を生じさせる。

 侵略の結果もたらせられるいかなる領域の取得又は特殊権益も合法的なものではなく、また合法的なものととし承認されてはならない。

第六条(憲章との関係)

 この定義中のいかなる規定も、特に武力の行使が合法的である場合に関する規定を含めて、憲章の範囲をいかなる意味においても拡大し、又は縮小するものと解してはならない。

第七条(自決権)

 この定義中のいかなる規定も、特に、第三条は、「国際連合憲章に従った諸国家間の友好関係と協力に関する国際法の諸原則についての宣言」に言及されている。その権 利を強制的に奪われている人民の、特に植民地体制、人種差別体制その他の形態の外国支配化の下にあ る人民の、憲章から導かれる自決、自由及び独立の権利を、また国際連合諸原則及び上記の宣言に従いその目的のために闘争し、支援を求め、かつ、これを受け入れるこれらの人民の権 利をいかなる意味においても害するものとするものではない。

第八条(想定の解釈)

 上記の諸規定は、その解釈及び適用上、相互に関連するものであり、各規定は、他の規定との関連において解されなければならない。