「ベネズエラ 独裁の教訓」(朝日新聞インタビュー記事2025年12月11日)メモ

ベネズエラの反体制派活動家マリア・コリナ・マチャド氏がノーベル平和賞を受賞したことを機に、朝日新聞は2025年12月11日、野党指導者レオポルド・ロペス氏へのインタビュー記事を掲載しました(インタビューは同年10月31日、スペイン・マドリードで実施)。この記事を読み、印象に残った言葉を整理しておきます。


民主政治から独裁政治へ移行する際の3つの要素

ロペス氏は、民主政治が独裁政治へと傾いていく国々に共通する移行過程での特徴として次の3点を挙げています。

  • メディアや表現の自由への攻撃

  • 司法制度の政治化・統制

  • 治安部隊や軍隊・警察の政治利用

 

民主主義を守るための注意点

ロペス氏は「国民には民主主義の健全性に常に注意を払うことが必要」と指摘しました。
 つまり、上記の3点の特徴を含め、独裁化につながる危機的な動きが社会に現れていないかを監視し、声を上げ行動することが重要だということです。
さらには、

  1. 「民主主義の下では問題を解決できないという不満を放置しないこと」
  2. 「非効率な民主主義は独裁を望むウイルスの温床になり、内部からの破壊を招く」
  3. 「指導者は政治の結果をしっかりと出すことをもっと意識する必要がある。」

 とも指摘しました。「1」の例としては、➀貧困層の拡大、資産・所得格差の拡大、中間層の縮小の問題、➁人口減少・少子高齢化問題、➂デジタル犯罪の蔓延の問題、➃災害や災害級気候変動に対する対処の問題、⑤中ロ米の利己的覇権的な威圧に対する国としての対処の問題などが挙げられます。

 こうした問題については、政治は、対策は打っているものの、その結果を出せているかといえば、成果が目に見える形で示されていないのが現状です。つまりは、政府や国会の側では、これらの問題は、容易ではない、難しい問題であるとされています。
 しかし、そのような状況がずるずると続いてしまう現状は、結局、「民主主義の下では問題を解決できない」という不満を生みます。それが独裁を望むウイルスの蔓延につながることになるともいえます。独裁政治がこうした問題を解決してくれるわけではないとしても、「自分たちが信じるリーダー個人に権限を集中させ、強力に引っ張ってもらいたい」という風潮が生まれつつあるのも事実でしょう。こうした期待が社会に緊張感を生んでいるのも事実でしょう。一般的には、日本には、強いリーダーへの権限集中を好まない伝統があるように思います。それでも現状を理解する上で、ロペス氏の言葉は示唆を与えてくれるものと思います。