遺言を作成するメリット

 遺産相続において遺言の果たす役割は重要です。この点について説明します。

 遺言を作成するメリット(遺産分割のルール)
 民法は,遺産相続について色々な規定を設けてあります(民法第5編882条~1050条。「相続法」と呼ばれます。)。
 しかし,遺産は元々被相続人の財産ですから,どう分割するかについては,被相続人の意思が尊重されるべきでしょう。このような被相続人の意思を書面に残す方法が,遺言(相続法第7章960条~1027条)であり,民法上,法定相続分による遺産分割のルール(相続法第3章第2~3節民法896条~914条)よりも優先されることになっています。自分の財産の処分について意思を示しておくためにも,死後に相続争いを招かないためにも,遺言の作成がお薦めです。

遺言の種類について

 民法上定められている遺言の方式(相続法第7章第2節967条~984条)の種類と,各遺言の内容について説明しています。

 遺言の種類について
 遺言には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言の3種類あります。 それぞれの特徴,メリット・デメリットについて説明します。

自筆証書遺言

  1.   自筆証書遺言(民法968条)は,紙と筆記具さえあれば自由に作成できるものですが,方式が民法上細かく定められています。
    1.  まず,原則として,遺言者がその①全文,②日付及び③氏名を自書して,印鑑を押さなければなりません(968条1項)。
    2.  ただし,自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の目録を添付する場合には,その目録については,自書は必要ではありません(例えば,パソコン印刷したものでも構いません。)。もっとも,この場合には,その目録の各頁(頁が両面ある場合には,その両面)に署名し,押印する必要があります(同条2項)。
    3.  自筆証書(相続財産の目録を含みます。)中の加除変更は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じません(同条3項)。
  2.  また,遺言の保管者は,相続の開始を知った後,速やかに遺言を家庭裁判所に提出して,「検認」というチェックを受ける必要があります(民法1004条1項)。ただし,法務局の遺言保管制度を利用した自筆証書遺言については,検認不要です(遺言書保管法11条)。
  3.  自筆証書遺言は,方式違背により無効と判断されないかに神経を使いますし,筆跡が被相続人のものであることを争われたり,他の相続人に隠匿・破棄されたりする恐れもあります。ただし,法務局の遺言保管制度を利用した自筆証書遺言については,他の相続人に隠匿・破棄されるおそれはありません。また,法務局の窓口で,本人が,法務局の様式に従って作成したものか否かについては,チェックが受けられます(遺言書保管法4条,5条参照)。

秘密証書遺言

  1.  被相続人が作成した遺言を封筒に入れて遺言に用いたのと同じ印鑑を用いて封印した後,公証役場に証人2人以上を同伴して出向き,公証人に提出することになります(民法970条)。公証人は封筒に,証書の提出を受けた日,遺言者の遺言である旨と住所氏名を記載し,遺言者,証人2名とともに,印を押します。
  2.  公証役場で保管されるため,破棄隠匿の恐れはありませんが,遺言内容について公証人のチェックがなされませんし,自筆証書遺言と同じく家庭裁判所の検認手続が必要となります(民法1004条)。

公正証書遺言

  1.  証人2人以上立会のもとに,公証人が遺言者の口述を筆記して作成してもらうものです(民法969条,969条の2)。
  2.  公正証書の作成費用がかかりますが,破棄隠匿の恐れはなく,遺言の存在が明確で,家庭裁判所の検認の必要もありません(民法1004条2項)。

総額1億円の遺産を,妻1人に,相続させる場合の手数料は,4万3000円ですが,
総額1億円の遺産を,妻に6000万円,長男に4000万円の財産を相続させる場合には,妻の手数料は4万3000円,長男の手数料は2万9000円となり,その合計額は7万2000円となります。
加えて,
手数料令19条は,遺言加算という特別の手数料を定めており,1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は,1万1000円を加算すると規定しているので,7万2000円に1万1000円を加算した8万3000円が手数料となります。

  • 公証人のチェックがなされ,無効になるリスクが低く,破棄隠匿される恐れもないので,公正証書遺言を選択することは,費用がかかるとしても,一般的にはお勧めできる選択です。

遺留分

  遺留分という制度(相続法第9章(1042条~1049条))について説明します。

 遺留分という制度
  相続人の相続分のうち,民法上,遺言をもってしても奪うことのできない持分的利益について定められているのが,遺留分という制度です。

遺留分とは

 1.概要
  •  既に述べたとおり,遺産分割については被相続人の意思を尊重すべきであるという考え方から,遺言という制度が設けられています。
     その一方で,共同相続・均等相続を建前とする民法の法定相続制度も定着している中で,相続人の側でも,ある程度自分に財産が相続されることを期待するのが自然であり,このような期待が全く保護されないとすると,相続人に酷な結果となることもあります。
     そこで,民法上,遺留分といって,遺言をもってしても奪うことができない持分的利益が定められています。
  •  具体的には,兄弟姉妹以外の相続人について,直系尊属のみが相続人である場合には,被相続人の財産の3分の1,それ以外の場合には,被相続人の財産の2分の1に相当する額について,遺留分が認められることになります(1042条1項。総体的遺留分といいます)。
     実際の個別の相続人の遺留分(個別的遺留分といいます)は,総体的遺留分に各々の遺留分権利者の法定相続分の率を乗じて計算することになります(同条2項)。
     ですから,たとえば相続人が妻と子1人の場合,子の遺留分は,総体的遺留分である2分の1に個別的遺留分(法定相続分率)である2分の1を乗じた4分の1ということになります。
  •  個別的遺留分の算定式は,次の通りです(民法1042条,1043条)。
    • <個別的遺留分の算定式>

      ①×②×③

      ①遺留分を算定するための財産の価額(民法1043条)
      ②総体的遺留分の割合(1/2又は1/3)
      ③法定相続分の割合

  •  遺留分を算定するための財産の価額の算定式は,次の通りです(民法1043条,1044条)。
    • <遺留分を算定するための財産の価額の算定式>

      ①+②+③ー④

      ① 相続開始時における被相続人の積極財産の額
      ② 相続人に対する生前贈与の額(原則,相続開始前10年以内の贈与のみ*)(民法1044条3項,903条1項)
      ③ 第三者に対する生前贈与の額(原則,相続開始前1年以内の贈与のみ)(民法1044条1項,903条1項)
      ④ 被相続人の債務の額

      * 2019年(令和1年)7月1日の改正相続法施行前に相続が開始された事案では,生前贈与について,「相続開始前10年以内の贈与のみ」という限定はありません。

  •  相続人間で争うことがないように遺言を作ったはずなのに,遺留分を無視してしまったがために,結局相続争いが起こってしまうというのはよくあるパターンです。
     遺言作成の際には,遺留分についても何らかの配慮がある方が望ましいかも知れません。このように,死後の紛争を防止するためにどのように遺言を作成していくべきかという点についても,弁護士に相談いただければと思います。
 2.遺留分侵害額請求制度の発足

   2018年7月に相続法の大改正があり,遺留分制度についても,「遺留分減殺請求」制度から「遺留分侵害額(給付)請求」制度へと変わりました。

    •  2019年6月30日迄に開始した相続:「遺留分減殺請求」制度が適用されます。
       2019年7月1日以降に開始した相続:「遺留分侵害額(給付)請求」制度が適用されます。

(遺留分制度の改正)   

    •  改正前民法の遺留分制度は,遺留分を侵害する遺贈・贈与を減殺して,その効力を失わせ,これを相続人に取り戻す(回復する)というものでした。
       通説・判例は,遺留分減殺請求権が行使されると,遺留分を侵害する範囲で,遺贈・贈与の効力が消滅し,減殺の対象となった財産に対する権利は,当然に遺留分権利者に復帰する(形成権=物権説)と解してきました。価額弁償は,例外的に,遺留分減殺請求の相手方がその選択で価額弁償を行うこともできるという形で規定されていただけでした(改正前民法1041条)。
    •  改正後民法は,この物権的な効果を発生させるという考え方を見直し,遺留分に関する権利を行使すると(形成権),金銭債権が発生する(遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる)ものとしました(民法1046条)。
    •  これに伴い,「減殺」請求という表現を改めて,「侵害額給付」請求という形にしました。
 3.遺留分侵害額請求
  1. 遺留分侵害額請求権には行使期間の制限があります。
     遺留分侵害額請求は,遺留分権利者が,ⅰ相続の開始 及び ⅱ遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った(遺言があること及びその内容を知った)時から1年間行使しないと,時効消滅します。相続開始の時から10年を経過したときも,時効消滅します(民法1048条)。
  2. 遺留分侵害額請求は,意思表示の方法で行使します。
     遺留分侵害額請求は,遺留分減殺請求と同様,形成権です。そこで,内容証明郵便による通知書などを相手方(遺留分侵害額を負担する受遺者,受贈者,及びその包括承継人)に送付する方法でこれを行うことになります。この行使は,あくまでも形成権の行使ですので,遺留分侵害額を具体的に示して意思表示をする必要はないと解されます。
  3. 遺留分侵害額を求める計算式は,次の通りです(民法1046条2項)。
    • ①ー(②+③)+④

          ① 遺留分権利者の個別的遺留分額(1042条)
          ② 遺留分権利者が受けた特別受益の額(民法1046条2項2号)…遺贈又は生前贈与(民法903条1項)
          ③ 遺産分割対象財産がある場合には,遺留分権利者の具体的相続分(民法900902条,903条,904条の規定により算定した相続分)に相当する額
          ④ 遺留分権利者が負担する債務(相続債務のうち,遺留分権利者が承継する債務)の額
 

相続人の範囲

 民法上定められている相続人の範囲について説明します。

 法定相続人の範囲について
 有効な遺言が存在しない場合,民法上のルールに従って遺産分割を進めていくことになりますが,民法上では相続人の範囲についてどのように定められているのでしょうか。

血族

 血族が相続人となる場合には,民法上順位が付されており,先順位の血族がいないときに,はじめて後順位の血族が相続人となります。

1.第1順位の相続人

 第1順位の相続人は,被相続人の子または,その代襲相続人である直系卑属です(民法887条1項・2項)。

 子には,実子のほか養子も含みます。

 普通養子の場合には,特別養子の場合と異なり,養子となっても実方血族との親族関係は断絶しないので,養親を被相続人とする相続が発生するほか,実親を被相続人とする相続も発生します。

2.第2順位

 第2順位の相続人は,被相続人の直系尊属です(民法889条1項1号)。

 上に述べたとおり,被相続人に第1順位の相続人である子及び直系卑属がないときに,はじめて相続資格が発生します。

 親等(しんとう)の異なる直系尊属の間では,親等の近い者が相続資格を取得し,それ以外の直系尊属は相続資格を取得しません(民法889条1項1号ただし書)。

 例えば,被相続人に父および祖父が存在する場合,父が相続人となり,祖父は相続人とはなりません。

3.第3順位

 第3順位の相続人は,被相続人の兄弟姉妹です(民法889条1項2号)。

 父母双方を同じくする兄弟姉妹(「全血」の兄弟姉妹)のほか,一方しか同じくしない兄弟姉妹(「半血」の兄弟姉妹)にも相続権があります。

 *1 兄弟姉妹の代襲者にも相続権があります(民法889条2項,887条2項)

 *2 兄弟姉妹には遺留分はありません(民法1042条)。

 *3 半血の兄弟姉妹(父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹)の法定相続分は,全血の兄弟姉妹の半分です(民法900条4号ただし書後段)。

配偶者相続人

 配偶者は,常に相続人となります(民法890条)。

 民法890条の「配偶者」は,法律上の配偶者を指します。

 内縁の配偶者は,特別縁故者として財産分与を受けるにとどまります(民法958条の3)。

代襲相続

1.代襲相続とは

 例えば,本来相続人となるべき被相続人の子が,被相続人の死亡よりも前に死亡していた場合,親子の亡くなる順序が違うだけで,被相続人の孫が全く相続できなくなりうるというのでは,孫にとって酷な結論になり得ます。

 そこで,相続人となるべき方が,被相続人の相続開始以前に死亡したり,相続欠格や相続廃除によって相続権を失った場合,その相続人の直系卑属が,その相続人の受けるべき相続分を相続します。これを代襲相続といいます(民法887条2項・889条2項)。

 代襲相続の原因は,ⅰ相続開始前の死亡,ⅱ相続欠格,ⅲ相続廃除(民法887条2項)に限定されており,相続人となるべき者が相続放棄により相続人とならなかったとしても,代襲相続は開始しません

2.被代襲者

 代襲相続人となるのは,被代襲者の直系卑属です。すなわち,被相続人の子の子(孫),または兄弟姉妹の子(甥,姪)です(民法887条2項・889条2項)。

 直系尊属は,被代襲者になりません。

3.代襲相続人

 代襲相続人となるのは,被代襲者の直系卑属です。すなわち,被相続人の子の子(孫),または兄弟姉妹の子(甥,姪)です(民法887条2項・889条2項)。
 被相続人の子の子が代襲相続人となるためには,その子が被相続人の直系卑属でなければなりません(民法887条2項ただし書)。

 そこで,被相続人の子が養子で,その養子に縁組前に出生した子(連れ子)がある場合には,その子は直系卑属には当たりませんから(民法727条-養子と養親とは縁組の日から親族関係が発生します。),代襲相続は認められません。

4.再代襲

 相続人となるべき子のみならず,代襲相続人となるべき孫も先に死亡していた場合には,曾孫に代襲相続は生じないのでしょうか。

 民法上,子の場合には再代襲も発生するとされており,被相続人の子の子(孫)に代襲原因が発生した場合には,子の子の子(曾孫)が代襲相続人になります(民法887条3項)。

 再代襲が認められるのは,子についてのみであり,兄弟姉妹については,再代襲は発生しません。

5.代襲相続の効果

 代襲者は,被代襲者の相続分を得ます(民法901条)。

 但し,複数の代襲相続人がある時は,被代襲者の相続分を平等に分けて相続します(民901条ただし書,第900条4号)。

相続分

 民法上,各法定相続人の相続分についてどのように定めてあるのでしょうか。

 法定相続分の定めについて
 民法では,各法定相続人の法定相続分を定めています。近時,法律改正のあった,嫡出でない子の法定相続分についても解説します。

法定相続分

 民法上定められている相続分は,次のとおりです(民法900条)。

  1. 配偶者と子供が相続人である場合
    配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2
  2. 配偶者と直系尊属が相続人である場合
    配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3
  3. 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
    配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

 子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは,原則として均等に分けることになりますが,半血の兄弟姉妹の法定相続分は全血の兄弟姉妹の半分です(民法900条4号ただし書後段)。

嫡出でない子の法定相続分

  法律上婚姻した男女の間に生まれた子のことを,嫡出子といいます。

  1.  以前,民法900条では,嫡出でない子の相続分は,嫡出子の相続分の半分に限定されるという規定が置かれていました。
  2.  2013年(平成25年)9月4日,最高裁判所は,民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分について,法の下の平等を定める憲法14条1項に違反するとの決定を下しました(最高裁平成25年9月4日 大法廷決定)
  3.  これを受け,政府が民法の一部を改正する法律を国会に提出し,同年12月5日成立した改正民法により,嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました(同月11日公布・施行)。
  4.  施行時期等
    •  改正後民法900条の規定は,2013年(平成25年)9月5日以後に開始した相続について適用するものとされています。
    •  ただし,最高裁平成25年9月4日大法廷決定が,「本件規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたものというべきである。」としていますので,家庭裁判所をはじめとして,裁判所では,2001年(平成13年)7月以後に開始した相続であれば,この最高裁判決の判示に基づき,法定相続分は嫡出子と非嫡出子が同等として取り扱われることになります。
        

遺産の取扱いについて

 遺産には,様々な類型の財産が考えられますが,それぞれ,どのように取り扱われるのか,実務的な解説をいたします。

 遺産の取扱いをどのようにするか
 遺産となる財産ごとに,遺産分割における取扱いについて説明します。また,被相続人の債務の取扱いについても説明します。

預貯金

 預貯金債権は,相続開始と同時に,遺産分割協議等を経ず当然に,法定相続分に応じて分割して各相続人に帰属するとするのが判例でした。
 その後,最高裁大法廷平成28年12月19日決定により判例変更がなされ,預貯金債権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるとの,判断に至りました。

 しかし,銀行は,上記の判例変更以前から,遺産分割協議書や相続人全員の同意書など持ってこないと,払戻しに応じない扱いにしていました。
 判例変更後も,同様の実務となっています。これを「預金口座の凍結」といいます。

 口座凍結の時期については,役所と金融機関との間で情報が共有されているわけではなく,死亡届が出されたら金融機関に連絡が回るというわけではありません。
 相続人からの連絡があったり,新聞のお悔やみ欄で知ったりして,金融機関が事実上死亡の事実を把握した時から口座凍結されることになります。

 遺産分割前の相続預貯金の払戻しに関する銀行の取扱については,全国銀行協会(全銀協)のパンフレット「ご存知ですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を参照下さい。

不動産賃借権

 賃貸借契約は,借主の死亡により終了しませんので,賃借権は相続の対象となるのが原則です。

 不動産賃借権は分けることができない不可分の権利ですから,共同相続人間で一種の共有状態になり,これを解消するには遺産分割が必要となります。

 借家権の金銭評価の仕方ですが,大まかに言えば,その家屋の固定資産税評価額の3割程度が目安とされています。
 国税庁が,相続税を算定するにあたって,借家権の評価割合を,事実上*全国一律に,「固定資産税評価額の30%」としていることが,参考にされている,といえます。

* 下記タックスアンサーでは,「貸家建付地の価額は、次の算式1で求めた金額により評価します。」とし,
 (算式1) 貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
 としたうえで,「この算式1における「借地権割合」および「借家権割合」は、地域により異なりますので、路線価図や評価倍率表により確認してください。路線価図や評価倍率表は、国税庁ホームページで閲覧できます。」とあるのですが,実際に確認してみると,借家権割合は,どの都道府県域も30%となっています。

遺産となる不動産

  1. 評価の時点

    • 不動産の価値をいつの時点を基準に評価するかについては,ⅰ相続開始時とⅱ遺産分割時,いずれかの時点が考えられます。
    • この点,遺産目録を調製するときには,実務上,ⅰ相続開始時の評価額と,ⅱ目録作成日現在の評価額(≑遺産分割時の評価額)の両方を,書き込むのが通例です。
    • 「具体的相続分の割合」を算出するには,相続開始時の評価額を用います。
       遺産分割の手続では,法定相続人各人の具体的相続分の割合を基準として,遺産分割が行われます。
       この具体的相続分は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に,法定相続人が被相続人からその生前に受けた生前贈与の価額を加えたり,被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときには,その寄与分を控除たりして,算定されるものです(民法903条,904条の2)。
       そこで,遺産分割の基準となる具体的相続分の割合を算出するには,法律上,相続開始時の評価額を用いることになります。
    • 「具体的相続分の割合」に基づき,各人が取得するべき遺産を各人に割り付けるときには,遺産分割時の評価額を基準とするというのが実務です。
       母が死亡し,子二人が相続したという事案で,母が残した遺産が,自宅土地建物と預貯金のみと言うケースで考えますと,自宅土地建物は,相続開始時の評価額が1000万円,遺産分割時の評価額が800万円であり,預貯金は,相続開始時の残高も遺産分割時の評価額も1000万円であったとします。この場合,遺産を半分ずつ相続するというときに基準とするのは,相続開始時の評価額ではなく,遺産分割をするときの評価額ということになるはずです。実務は,この立場を採用しているという意味です。自宅土地建物を取得する側は,あと100万円を預貯金でもらう。自宅土地建物を取得しない側は,預貯金で900万円をもらう,という風に考えることになります。
  2. 不動産価格の評価基準

     基本的には,時価を基準とします。
     時価を推知する方法としては,

   ① 固定資産税を課税するための評価基準とされる「固定資産税評価額」,
   ② 相続税を課税するための評価基準となる国税庁の決定する土地の単価である「路線価」「倍率」,
   ③ 地価公示法に基づいて国土交通省が発表する全国の土地価格の基準値となる「公示価格」,
   ④ 宅建業者の「査定書」(複数)の平均額
  が考えられます。

 遺産分割調停では,評価基準を何に求めるか,話し合いで折り合うところを探ることになります。
 合意が困難であれば,裁判所に申し立てて,不動産鑑定士による鑑定を実施することになります。裁判所は,特段の事情がない限り鑑定結果を尊重して不動産の時価を認定します。
 鑑定にあたっては,鑑定費用を予め裁判所に納める必要があるので,事前の見積もりをして,費用分担の割合を話し合うことになります。

生命保険金

  1. 生命保険金は,原則として遺産には含まれません。
     保険契約は,保険契約者と保険会社との間で契約締結したときに,保険金受取人に,保険事故の発生を条件として一定金額の支払いを受けることができる権利が発生します。つまり,保険金受取人は,被相続人の生前から,被相続人が死亡した時に保険金を受け取る権利を有していることになります。そうすると,たとえば保険金の受取人として特定の相続人が指定されている場合,保険金を受け取る権利はその相続人の固有の権利であって,遺産には含まれないことになります。
  2. もっとも,保険金受取人が単に「被保険者の相続人」とされており,特定の氏名を挙げずに指定されている場合,保険契約に基づいて,相続人各自が保険金を受け取る権利を取得します。各自受け取る金額について,全体の金額を法定相続分で割るのか,人数で均等割りにするのかは,保険契約の約款の定めによります。
  3. また,保険金の額が遺産の額と比較して著しく高額である場合,遺産に含めて取り扱われることもあります。

 【要旨】被相続人を保険契約者及び被保険者とし,相続人を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,遺贈や生前贈与には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。

 

金銭債務

 金銭債務は,相続により当然に各相続人に法定相続分で承継されるので,遺産分割の対象にはならないというのが判例です。(最判昭和34年6月19日民集6号757頁)

 では,相続人の間で,誰か一人が遺産を単独で取得する代わりに,債務も全額負担するという内容で,取り決めをすることができるのでしょうか。

 相続では,相続人だけでなく,被相続人の債権者も利害関係を有しています。
 債権者の関与しない相続人だけの協議で「金銭債務は当然分割」という判例ルールが変更できるということになりますと,返済する資力のない債務者に債務が集中されるようなことになった場合,判例ルールと比較して,債権者が損害を被る結果となりますので,債権者との関係では,債権者が承諾しない限り、他の相続人も債務の負担を免れることはできません。
 もっとも,相続人らの内部において,どのように債務の負担を分担するかを協議して決めることは自由にできます。

特別受益と寄与分

 民法上定められている,特別受益(民法903904条)と寄与分(民法904条の2)という制度について説明します。

 特別受益と寄与分とは
 民法上のルールに従って,法定相続分どおりに遺産分割するだけでは,公平に解決できない場合もありえます。そのような場合についての解決策として,民法上では特別受益と寄与分という制度が設けられています。

特別受益

 共同相続人の中に,被相続人から遺贈(遺言による財産譲渡)を受けたり,生前に贈与を受けたりしたものがいた場合,相続に際して,この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けるとすると,不公平な結果となります。そこで,民法は,相続人間の公平を図ることを目的に,こうした遺贈や生前贈与を,相続分の前渡しとみて,計算上,贈与を相続財産に持ち戻して(加算して)相続分を算定することにしています(民法903条)。これを特別受益といいます。

    • 第903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

 具体的な相続分の計算としては,まず遺贈分を含めて被相続人の死亡時(相続開始時)に現存する財産(遺贈財産を含む)の額に特別受益に該当する生前贈与の額を加えて(「持戻し」といいます。),その合計額をもって相続財産とします(「みなし相続財産」といいます。)。これを基礎として,法定相続分に従って,各相続人の本来取得すべき「一応の相続分」の額を算出し,特別受益を受けている相続人については,この「一応の相続分」の額から特別受益の額を控除した残額が,現実に受けるべき相続分(「具体的相続分」といいます。)となります。

 被相続人の死亡時(相続開始時)に現存する財産の価額については,相続開始時の時価で評価されることになっています(民法903条)。
 また,生前贈与財産の価額については,その財産が相続開始時に現存していなかったり,現存していても,その価格に増減があったという場合でも,贈与を受けたときの原状のままであるものとみなしてこれを定めるものとされています(民法904条)。

寄与分

 特定の相続人が,被相続人の事業を長年にわたってほとんど無給で手伝ってきた,あるいは被相続人の介護を献身的に行うなど,相続人の中で,被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者があるときに,相続財産からその人の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し,その相続分に寄与分を加えた額をその人の相続分とする制度があります。

  この制度を寄与分といいます。

  どのような場合に寄与分が認められるかといえば,介護の場合,まず療養看護が必要であると認められるケースであることが必要です。具体的には,療養看護が必要となる病状で,近親者による療養看護を必要としていたことが挙げられます。

  完全介護の病院に入院している場合,基本的には寄与分は認められません。

また,被相続人から,対価をもらっていた場合,被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をしているとはいえず,寄与分は認められません。

 寄与分の額を定める方法としては,相続人間の協議でまとまらなければ,寄与をした者が家庭裁判所に寄与分を定める調停や審判を申し立てることが考えられます。もっとも,遺産分割の調停の中で事実上寄与分の主張をすれば足りますので,遺産分割調停が不調となって審判手続に移行して初めて,寄与分を定める調停や審判を申し立てていくのが普通です。

 寄与分の額が定まると,これをもとに各相続人の具体的相続分を計算することになります。

 具体的には,相続開始時の遺産の価額からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし,これを法定あるいは指定相続分に従って按分した額にその者の寄与分を加えた額をもって,その者の具体的相続分とすることとされています。

2018年改正相続法について

 2018年改正相続法について解説します。

 改正項目の概要
 2018年改正相続法について,主なものを述べます。

施行期日

 改正法の主な項目の施行期日は,原則として2019年(令和元年)7月1日です。
 これと施行期日が異なったのは,次の3つでした。
 ① 自筆証書遺言の方式緩和:先行して,2019年(令和元年)1月13日から施行されています。
 ② 配偶者居住権:2020年(令和2年)4月1日から施行されています。
 ③ 法務局による自筆証書遺言保管制度:2020年(令和2年)7月10日から施行されています。

配偶者居住権

被相続人の持ち家の相続に関し,配偶者の短期居住権,長期居住権というものが創設されました。


1.配偶者短期居住権

  1.  相続開始時(被相続人死亡時)に被相続人の持ち家に無償で住んでいた配偶者は,その使用部分に限って少なくとも6ヶ月間無償で使用できる権利が認められました(民法1037条1項)。この権利には例外はありません。
    1.  ここで「その使用部分に限って」と述べましたが,配偶者短期居住権の範囲は,配偶者が無償で使用していた部分に限られます。例えば1階を貸店舗,2階を住居として使用していた場合,配偶者の短期居住権は2階住居部分に限られます(同条項柱書)。
    2.  ここで「少なくとも6ヶ月間」と述べましたが,具体的には,その建物が遺産分割の対象となる場合に,相続開始日から6ヶ月が経過しても,まだ,遺産分割でその建物を取得する者が確定しておらず,6ヶ月を経過した後にこれが確定したという場合には,その確定日までは,短期居住権があります(同条項1号)。
       また,その建物が,遺言があるために,遺産分割の対象とはならないという場合でも,建物を遺言で取得する者が,配偶者に対し,配偶者短期居住権の消滅申し入れをした日から6ヶ月を経過する日までは,短期居住権があります(民法1037条3項,1項2号)。
  2.  配偶者短期居住権は,遺産分割時の計算上,配偶者の取得財産として考慮されない,との考え方が法務省の解釈で示されています。

2.配偶者長期居住権

  1. 相続開始時(被相続人死亡時)に被相続人の持ち家に住んでいた配偶者は,
     ① 相続人間の遺産分割(協議・調停・審判)によって配偶者居住権を取得するものとされたとき,又は
     ② 配偶者に配偶者居住権を遺贈する旨の遺言があるとき
    は,その全部について原則としてその終身の間無償で使用・収益できる権利を設定することができる,という制度ができました(民法1028条)。

    1.  「その全部について」というのは,その持ち家を住宅として使用することのほか,もともと店舗や賃貸物件として利用していた部分(収益部分)についても,引き続き収益のために利用することができるということも含まれます。
    2.  「原則として終身の間」という点ですが,被相続人の遺言や,相続人間の遺産分割(協議・調停・審判)によって,より短い期間と設定できます(民法1030条)。
  2. 配偶者長期居住権は,遺言遺産分割(協議・調停・審判)で決める必要があります(1028条1項1号,2号)。
    この権利は,遺産分割時の計算上,配偶者の取得する財産として考慮されます(民法1028条3項の反対解釈)。
  3. 「長期居住権の簡易な評価方法について」
    法制審議会民法(相続関係)部会第19回会議(平成29年3月28日)開催部会資料19-2参照。

 下記計算式1のように,
 長期居住権を設定した場合に建物所有者が得ることとなる利益の現在価値を長期居住権付所有権の価額とした上で,
 その価額を(何らの制約がない)建物所有権の価額から差し引いたものを長期居住権の価額とすることが考えられる。
【計算式1】
①  建物の価額(固定資産税評価額)=②長期居住権付所有権の価額+③長期居住権の価額
②  長期居住権付所有権の価額(注1)=①固定資産税評価額×{法定耐用年数−(経過年数+存続年数)}/法定耐用年数−経過年数 ×ライプニッツ係数
③  長期居住権の価額=①固定資産税評価額-②長期居住権付所有権の価額

  1. 配偶者居住権は譲渡できません(民法1032条2項)。
  2. 配偶者居住権は,配偶者の死亡により,消滅します(民法1030条)。また,配偶者が違反行為をした場合,所有者の消滅請求によっても消滅します(1032条第4項)。
  3. 配偶者居住権は,登記できます(民法1031条)。義務者である建物所有者と権利者である配偶者との共同申請となります。配偶者居住権は,登記することによって,第三者に対する対抗力を持ちます(民法1031条2項,605条)。

遺産分割前の相続預金の払戻し制度

 預貯金を遺産分割の対象とする最高裁平成28年12月19日決定を受けて,遺産分割前の相続預金の払戻し制度が新設されています。


 最高裁平成28年12月19日大法廷決定 民集70巻8号2121頁/判タ1433号44頁 

 共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。以上説示するところに従い,最高裁平成15年(受)第670号同16年4月20日第三小法廷判決・裁判集民事214号13頁その他上記見解と異なる当裁判所の判例は,いずれも変更すべきである。

 

 上記の最高裁による判例変更の結果,遺産分割前の払戻しは,相続人全員の同意がない限り,認められないことになりました。

 しかし,そうなりますと,実際上,葬儀代,病院代等の支払,被相続人の資産に依存して生活してきた相続人の当座の生活費の工面をどうするのかといった差し迫った必要に応えられないことになってしまい,それはそれで硬直的な結果が生じます。

 そこで,この度の相続法改正では,遺産分割前の預貯金の払い戻しを認める制度として,

  1. 家庭裁判所の保全処分を利用する方法(家事事件手続法200条3項)と
  2. 少額の金額に限り,相続人単独で,裁判所を用いなくても払戻を認める方法(民法909条の2)

が用意されました。

 1.の制度は,相続預金の仮分割の仮処分と呼ばれるものです。
 家庭裁判所に対して,当該相続人に仮払いを行うことの必要性・相当性を疎明すれば認められますが,通常は弁護士利用型の方法となります。

 具体的には,①家庭裁判所に,遺産分割の審判又は調停が申し立てられている場合に,相続預金の仮分割仮処分という審判の申立てにより,相続預金の全部又は一部を仮に取得し,金融機関から単独で払戻しを受けることが出来ます。
 ただし,相続債務の弁済とか,相続人の生活費の支弁その他の事情により相続預金の仮払いの必要性が認められ,かつ,他の共同相続人の利益を害しない場合であることという要件があります。
 この制度で単独で払い戻しを受けることが出来るのは,裁判所が仮取得を認めた金額です。
 金融機関の窓口では,
 ① 家庭裁判所の審判書謄本と
 ② 預金払戻しをする相続人のⅰ本人確認書類,ⅱ実印,ⅲ印鑑証明が必要です。

 2.の制度は,狭義の相続預金払戻し制度であり,相続開始時の預貯金の額(口座毎)の3分の1に払戻を求める相続人の法定相続分を掛けた額と,法務省令で定められる額(150万円)を比較して,どちらか少ない方に限って,相続人単独で払戻を認めるというものです。家庭裁判所の判断を経る必要はなく,各金融機関の窓口で手続ができます。

 具体的には,例えば,相続人が長男と長女の2名で,相続開始時の預金額がある金融機関の1つの口座(A口座)で普通預金が600万円あったという場合,長男が単独で払い戻しを受けることが出来る額は,600万円×3分の1×2分の1=100万円となります。
 もう一つの口座(B口座)にも普通預金が600万円あったという場合,同一の金融機関からの払戻しは,150万円が上限となっていますので,長男がA口座から100万円の払い戻しをうけるとなると,B口座からは上限50万円までしか払い戻しをうけることはできません。
 金融機関の窓口では,
① 被相続人の除籍謄本,戸籍謄本又は全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの),
② 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書,
③ 預金払戻しをする相続人のⅰ本人確認書類,ⅱ実印,ⅲ印鑑証明が必要です。

 * 遺産分割前の相続預貯金の払戻制度については,こちらも参照下さい。
      1. 遺産分割前の相続預貯金の払戻制度(1)
      2. 遺産分割前の相続預貯金の払戻制度(2)

 

自筆証書遺言の方式の緩和

 自筆証書遺言を作成するに際し,財産目録を別紙に添付する場合には,その財産目録は,パソコンで作ったものでもよく,また全部事項証明書や通帳の写しを添付する方法でもよいことになりました{民法968条2項)。


 この要件緩和の措置は,2019年1月13日から施行されています。

自筆証書遺言保管制度

 自筆証書遺言を法務局に保管してもらう制度ができました(遺言書保管法2条)。

 法務局では,遺言書の本人確認があり,また形式審査も受けられるので,遺言の不備のチェックが可能です。

 遺言をした方の死亡後に,相続人等の関係者は遺言書の閲覧等を請求できます。

 保管制度を利用すれば,裁判所の検認が不要となります(遺言書保管法11条,民法1004条1項)。


  1. 法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)」という単行法が作られました。
  2. 法務局に保管申請できるのは,自筆証書遺言のみです(公正証書遺言は保管申請できません。)。保管申請の手続は,遺言者本人が法務局に出頭して行う必要があります。遺言は法務省令で定める特定の様式に従って,封をしない状態で提出する必要があります。
  3. 遺言者は,いつでも保管中の遺言の閲覧ができますし,保管申請を撤回して遺言書の返還を受けることができます。
  4. 遺言者の関係相続人等(相続人・受遺者・遺言執行者等)は,遺言者の死亡後は,遺言書の閲覧等を請求できます。
    ・具体的には,①遺言書の保管の有無の確認,保管されているときには,②遺言書情報証明書の交付,③遺言書保管事実証明書の交付,④遺言書の閲覧を請求することができます。
    ・上記①~③は,遺言書を保管していない法務局でも請求できます。
  5. 自筆証書遺言書がこの保管制度により法務局に保管されている場合には,検認の手続(民法1004条)は不要となります。

 様式のチェックも一応受けられ,検認が不要となるというのは画期的な制度といえます。

 財産目録については自筆を不要とするという要件の緩和と合わせて,これから,自筆証書遺言が増えてくることが予想されます。
 超高齢化社会に対応する新しい制度として期待されます。

遺留分減殺請求が金銭請求のみとなりました。

 遺留分の考え方が基礎から改められ,遺留分権利者は,遺留分侵害者に,遺留分侵害額に相当する金銭を請求できる制度にすることになりました。
 経済的には遺留分権利者に有利な改正です。


  1.  判例で定まったこれまでの考え方では,遺留分減殺請求権が行使されると,当然に物権的効果が生じ,遺留分を侵害している贈与などはその侵害額の限度で効力を失い,減殺された財産はその限度で遺留分権利者のものになると解されてきました。これが立法により抜本的に改められ,遺留分減殺請求権が行使されると,遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずるものという制度に変更されました。
  2. これにより,不動産について,受贈者と遺留分権者との複雑な共有関係が生じることが回避されるうえ,遺留分権が主張しやすくなります。
  3. 付け加えますと,判例では相続人に対する生計の資本としての贈与(特別受益)は,過去に遡って,遺留分を算定するための財産の価額に算入するものとされてきましたが,改正法では,相続開始前の10年間にされたものに限り,算入するものとされました。これも一般的には,通常は遺留分を主張する側に有利な改正となります。
  4. 遺留分権を強くすると,法定相続分に基づく機械的な権利主張をする側の支援に厚くなり,親が亡くなる前の段階まで親と縁が深かった(通常老後の親の面倒をよく看ていたと考えられる)相続人の支援に薄くなります。どうしてこのような結果となる立法がなされるに至ったか(どのような力が働いたか)は,正直,よく分からないところがあります。

債権者等への遺言・遺産分割の効力主張に対抗要件を必要とする改正

 債権者などの第三者に対して,遺言による不動産の取得を主張等する場合,「相続させる」方式の遺言でも,登記手続を経る必要があることになりました。

被相続人の相続人ではない親族の特別寄与料請求制度

 相続人の配偶者などの被相続人の相続人ではない親族が,無償で療養看護などを行って特別の寄与をした場合,相続人に対し,特別寄与料を請求できる制度が設けられました。

公正証書遺言の存否確認について

 公正証書遺言があるかどうか分からないときは公証役場で確認しましょう。

 遺言検索システム
 あなたが,法定相続人であれば,被相続人の公正証書遺言で,平成元年以降に作成されたものは,全国の公証人が利用できる「遺言検索システム」により調べることができます。

遺言検索システム

 あなたが法定相続人であれば,公証役場で,亡くなられた方(「被相続人」)が1989年以降に作成した公正証書遺言があるかどうか,作成しているときはその公正証書が保存されている公証役場はどこであるかを,調べてもらうことができます。(公証人は,「遺言検索システム」を利用して調べます。)

 次の書類が必要となります。

  1. 相続を証する書面(戸籍謄本等)その他利害関係を証する書面
  2. 本人確認書類(運転免許証等)

 「遺言検索システム」では,

  • 証書で遺言をされた方の氏名,生年月日,遺言公正証書作成年月日等(遺言の内容は含みません。)が,データベース化されています。

 遺言者が亡くなられた後,相続人等の利害関係人から遺言の有無等について照会があった場合に、これに答えられるようにして、遺言の存在が相続人等に知られないまま終わるような事態が発生するのを防止するため,このデータベースが作成され,遺言検索システムによって,運用されています。

最近の重要裁判例

 遺産分割・相続に関する,最近の重要な最高裁判例その他の裁判例を紹介します。

投資信託及び個人向け国債は相続により当然分割されないとした判例

 最高裁(3小)平成26年2月25日判決・判例時報2222号53頁

【判旨】

(1) 株式は,相続により当然相続分に応じて分割されない(最高裁昭和42年(オ)第867号同45年1月22日第一小法廷判決・民集24巻1号1頁等参照)。
  • 株式は,配当を受ける権利,残余財産の分配を受ける権利などのいわゆる自益権と,株主総会における議決権などのいわゆる共益権とを有するので,このような株式に含まれる権利の内容及び性質に照らせば,共同相続された株式は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。
(2) 共同相続された委託者指図型投資信託は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。
  • 本件投資信託受益権は,口数を単位とするもので,
  • その内容として,法令上,償還金請求権及び収益分配請求権という金銭支払請求権のほか,信託財産に関する帳簿書類の閲覧又は謄写の請求権等の委託者に対する監督的機能を有する権利が規定されており,可分給付を目的とする権利でないものが含まれている。
  • このような上記投資信託受益権に含まれる権利の内容及び性質に照らせば,共同相続された委託者指図型投資信託は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。
(3) 個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。
  • 個人向け国債の額面金額の最低額は1万円とされ,その権利の帰属を定めることとなる振替口座簿の記載又は記録は,上記最低額の整数倍の金額によるものとされており,取扱機関の買取りにより行われる個人向け国債の中途換金も,上記金額を基準として行われるものと解される。
  • そうすると,個人向け国債は,法令上,一定額をもって権利の単位が定められ,1単位未満での権利行使が予定されていないものというべきであり,
  • このような個人向け国債の内容及び性質に照らせば,
  • 共同相続された個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。

 

裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 大橋正春 裁判官 木内道祥)

預貯金も遺産分割の対象に

最高裁大法廷平成28年12月19日決定 (最判(三小)平成16年4月20日のその他の判例を変更)

【判旨】

平成27年(許)第11号 遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する
許可抗告事件 平成28年12月19日 大法廷決定

【事案】

<抗告人>は被相続人Aの甥で被相続人の養子。<相手方>は被相続人の別の養子(妹B)の子(姪)。AはBに約5500万円の生前贈与をしており,これが相手方の特別受益となっていた。Aの相続財産としては,不動産(価額約260万円,「本件不動産」)のほか,預貯金が日本円として256万円,外貨建約36万ドルあった(「本件預貯金」)。

原審(大阪高裁)は,上記事実関係等の下において,従来の判例(*)に従い,本件預貯金は,相続開始と同時に当然に相続人が相続分に応じて分割取得し,相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とならないとした上で,抗告人が本件不動産を取得すべきものとした。

* 従来の判例

  例えば,最判平成16年4月20日は,次の通り判示している。

 相続財産中に可分債権があるときは,その債権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり,共有関係に立つものではないと解される(最高裁昭和27年(オ)第1119号同29年4月8日第一小法廷判決・民集8巻4号819頁,前掲大法廷判決参照)。したがって,共同相続人の1人が,相続財産中の可分債権につき,法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合には,当該権利行使は,当該債権を取得した他の共同相続人の財産に対する侵害となるから,その侵害を受けた共同相続人は,その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるものというべきである。

【判旨】

最高裁は,次のように述べて,従来の判例を変更した。

(1) 相続人が数人ある場合,
各共同相続人は,
相続開始の時から被相続人の権利義務を承継するが,
相続開始とともに共同相続人の共有に属することとなる相続財産については,
相続分に応じた共有関係の解消をする手続を経ることとなる
(民法896条,898条,899条)。
 そして,この場合の共有が基本的には同法249条以下に規定する共有と性質を異にするものでないとはいえ(最高裁昭和28年(オ)第163号同30年5月31日第三小法廷判決・民集9巻6号793頁参照),
 この共有関係を協議によらずに解消するには,通常の共有物分割訴訟ではなく,遺産全体の価値を総合的に把握し,各共同相続人の事情を考慮して行うべく特別に設けられた裁判手続である遺産分割審判(同法906条,907条2項)によるべきものとされており(最高裁昭和47年(オ)第121号同50年11月7日第二小法廷判決・民集29巻10号1525頁参照),
 また,その手続において基準となる相続分は,特別受益等を考慮して定められる具体的相続分である(同法903条から904条の2まで)。
 このように,遺産分割の仕組みは,
被相続人の権利義務の承継に当たり共同相続人間の実質的公平を図ることを旨とするものであることから,
 一般的には,遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とすることが望ましく,また,遺産分割手続を行う実務上の観点からは,現金のように,評価についての不確定要素が少なく,具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在することがうかがわれる。
 ところで,具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産であるという点においては,
 本件で問題とされている預貯金が現金に近いものとして想起される。
 預貯金契約は,消費寄託の性質を有するものであるが,
 預貯金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には,預貯金の返還だけでなく,振込入金の受入れ,各種料金の自動支払,定期預金の自動継続処理等,委任事務ないし準委任事務の性質を有するものも多く含まれている(最高裁平成19年(受)第1919号同21年1月22日第一小法廷判決・民集63巻1号228頁参照)。
 そして,これを前提として,
普通預金口座等が賃金や各種年金給付等の受領のために一般的に利用されるほか,
公共料金やクレジットカード等の支払のための口座振替が広く利用され,
定期預金等についても総合口座取引において当座貸越の担保とされるなど,
預貯金は決済手段としての性格を強めてきている。
 また,一般的な預貯金については,
預金保険等によって一定額の元本及びこれに対応する利息の支払が担保されている上(預金保険法第3章第3節等),その払戻手続は簡易であって,
金融機関が預金者に対して預貯金口座の取引経過を開示すべき義務を負うこと(前掲最高裁平成21年1月22日第一小法廷判決参照)などから預貯金債権の存否及びその額が争われる事態は多くなく,預貯金債権を細分化してもこれによりその価値が低下することはないと考えられる。
 このようなことから,預貯金は,預金者においても,確実かつ簡易に換価することができるという点で現金との差をそれほど意識させない財産であると受け止められているといえる。
 共同相続の場合において,
一般の可分債権が相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるという理解を前提としながら,遺産分割手続の当事者の同意を得て預貯金債権を遺産分割の対象とするという運用が実務上広く行われてきているが,これも,以上のような事情を背景とするものであると解される。

(2)前記(1)に示された預貯金一般の性格等を踏まえつつ以上のような各種預貯金債権の内容及び性質をみると,共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。

(3) 以上説示するところに従い,最高裁平成15年(受)第670号同16年4月20日第三小法廷判決・裁判集民事214号13頁その他上記見解と異なる当裁判所の判例は,いずれも変更すべきである。

【裁判官岡部喜代子の補足意見】

(上記大法廷判決の)多数意見の結論は,預貯金債権について共同相続が発生した場合に限って認められるものであろう。

ところで,私は,民法903条及び904条の2の文理並びに共同相続人間の実質的公平を実現するという趣旨に鑑みて,

可分債権は共同相続により当然に分割されるものの,
上記各条に定める「被相続人が相続開始の時において有した財産」には含まれると解すべきであり,
分割された可分債権の額をも含めた遺産総額を基に具体的相続分を算定し,
当然分割による取得額を差し引いて各相続人の最終の取得額を算出すべきであると考えている。

相続に関すること

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