離婚相談にあたって

 離婚相談で最初にお伺いする事項,一番基本となる事項をお話しします。

最初にお伺いする事項

まずお伺いする事項をお話しします。

 弁護士は,相談者のお話のさわりを承りつつ,まず<家族関係図>を作成します。

 相談者の氏名・生年月日,職業,収入 相手方の氏名・生年月日,職業,収入

 お子さんの有無,名前・生年月日,婚姻届出日,別居の有無,別居日,離婚日

 相談者,相手方,お子さんの現在の住所

 相談者,相手方の実家のご両親・ご兄弟について,お住まいとお仕事等について

 同居者の構成,グループ分け

 等。

 夫婦宅がマイホームか,借家等か。マイホームの場合,土地建物の所有者・住宅ローンの有無,借家等の場合,名義人は誰か。

 これらをお伺いした後,「今日はどうされましたか。」と,より深く相談者の抱えている相談事項についてお伺いしていきます。

離婚相談の基本

離婚に関する事項の基本をお話しします。

離婚相談で問題となる事項

離婚相談という場合,基本的には次の点が問題となります。

  1. 離婚それ自体
  2. 子どもの親権,監護権
  3. 子どもの養育費
  4. 子どもとの面会交流
  5. 離婚までの生活費(婚姻費用)請求
  6. 離婚時,離婚後の財産分与請求
  7. 離婚時,離婚後の慰謝料請求
    関連:不貞行為の相手方に対する慰謝料請求
  8. 離婚時,離婚後の年金分割

 弁護士は,離婚相談という場合,初回相談の間に,相談者のご家庭でどこが問題となっているかを把握するよう努め,その問題ごとに,さらに各論を詰めていきます。

 最初から,特に上記項目の中のどこが聞きたいということがある方は,それを明示頂き,詳しくお話し頂けると,短時間にその各論的な実務を詳しく聞くことができます。

正確・迅速な相談回答を得るためのこつ

 離婚の際に問題となりうる8つの事項ごとに,「例えば,こういう書類を持参頂けると助かるのですが」というものを書き出してみましょう。

〇 8つの事項共通
  • 戸籍謄本(全部事項記載)住民票謄本(世帯全員のもの)(相談者と相手方のもの)
① 離婚それ自体 …
  • 夫婦関係に生じているトラブルを時系列で整理したもの(パソコンでまとめたものがある場合,リムーバブルディスクやSDカードを持参頂くと便利です),この整理した事実を裏付ける証拠がある場合にはそれも。
② 子どもの親権,監護権 … 
  • 別居のいきさつ,現在の監護者,子どもさんの通学・通園先,相談者と相手方の現在の日常生活の状況(平日及び休日の平均的な過ごし方),現在及びこれまでの子どもさんの育児・監護への関わり状況,相談者側・相手方側それぞれの監護援助者などを整理したもの(子どもの意思や,育児ネグレクト,その他の特徴的な事項の把握はヒアリングとこれにともなう証拠確認で行われます。)
③ 子どもの養育費 … 
  • 相談者・相手方のそれぞれの現在の職業及び年収の分かる書類(源泉徴収票,所得証明書,申告書,通帳等)
④ 子どもとの面会交流 … 
  • ②とほぼ同じ。ヒアリングでの事情把握とこれに伴う証拠収集が基本です。
⑤ 離婚までの生活費(婚姻費用)請求 … 
  • ③とほぼ同じ。
⑥ 離婚時,離婚後の財産分与請求 …
  • 書類の収集が特に重要となる相談項目です。
  • 不動産:登記全部事項証明書,住宅ローン返済予定明細表,預貯金:通帳(写し),社内積立・財形・共済:給与明細,生命保険・損害保険:証書(写し)・解約返戻金証明書,株式その他の有価証券(証券会社の取引残高報告書),退職金証明書(退職金規程),自動車:車検証(写し)など
⑦ 離婚時,離婚後の慰謝料請求 … 
  • ①とほぼ同じ。
  • 関連:不貞行為の相手方に対する慰謝料請求
⑧ 離婚時,離婚後の年金分割 … 
  • 最初の相談時に必要となるわけではありませんが,年金分割を行うためには,「年金分割のための情報提供通知書」が必要です。最寄りの年金事務所で発行請求手続をします。取り寄せに3~4週間かかります。

夫婦,親子の問題でお悩みの方へ

 離婚問題として相談される事柄について,よく聞かれる事柄などを説明します。

離婚の際に決めるべきこと

離婚するときには,色々と決めなければいけない事があります。 具体的には,どういうことを決めていくのでしょうか?

離婚の際に決めるべきこと

 離婚するときには,色々と決めなければいけない事があります。

 具体的には,どういうことを決めていくのでしょうか?

1 子どものこと

 民法では,夫婦間に未成年の子がいる場合,離婚する際に親権者を決めなければならないことになっています。

 また,親権者とならない親が子どもと定期的に会いたいという場合,子どもとの面会交流の内容について決めるのが一般的でしょう。

 子どもを養育する費用として,親権者とならない相手方に養育費の分担を求めることもよくあります。

 子どもへの愛情が強い分だけ,どちらが子どもの親権を持つのか,子どもとの面会をどういう形で実現していくのか,離婚となると揉めやすいポイントです。

2 財産のこと

 夫婦が婚姻中に築いてきた財産をどう分割するかという財産分与の問題があります。夫が稼いできた給料であっても,夫婦で協力して稼いだものとして分けてもらうことができたりします。

 また,夫婦別居中で,夫だけ働いて稼いでいるのに生活費をもらっていないというような場合,結婚生活を維持する費用として婚姻費用の分担を求めることが考えられます。

 さらに,夫婦の一方のみが働き,厚生年金保険等の被用者年金の被保険者等となっている夫婦が離婚した場合,婚姻中働いていなかった一方配偶者が働いていた他方配偶者の標準報酬等の分割を受けることができるという,離婚時年金分割制度もあります。

 その他,相手配偶者が第三者と浮気している場合など,離婚慰謝料を請求することなども考えられます。

財産について

夫婦の財産関係をめぐる問題点について,解説します。

婚姻費用

1 婚姻費用とは

 夫婦は,自分の生活を維持するのと同程度の生活を維持させる義務を負うものと考えられていて,このような義務から,夫婦双方の収入を考えて,通常は収入の多い夫から収入の少ない妻に金銭を支払うことになります。

 養育費は,離婚後に子どもの養育の費用を分担してもらう問題ですが,婚姻費用は,離婚前の別居の段階において,妻の生活費と子どもの養育の費用を分担してもらう問題と考えると分かりやすいかも知れません。

2 いつの時点からの婚姻費用を支払ってもらえるのか

 婚姻費用の支払義務は通常は別居時に発生すると考えられます。

 しかし,この考え方からすると,別居後何年も経ってから,いきなりまとめて何年分もの婚姻費用を請求できることになりかねません。

 そこで,義務者が任意に支払いに応じない場合には,権利者が請求したときから支払義務が生じるとする扱いが多いようです。

 もっとも,その場合でも,財産分与において過去の未払いの婚姻費用を考慮してもらうことは可能です。

3 どうやって金額を決めるのか

 お互いの話し合いで決まればそれでいいのですが,話し合いがまとまらない場合,家庭裁判所に調停を申し立てることになります。

 家庭裁判所では,算定表というものに基づいて,夫婦双方の収入をあてはめて,婚姻費用の支払額を決定します。この算定表は,裁判所のホームページにも掲載されていますので,参照ください。

 夫婦双方の収入を把握するために,源泉徴収票や給与明細などの提出を求められることになります。

 裁判所では,算定表により算定された額が基準とされることが多いですが,便宜的に作成されたものであって,必ず従わなければならない唯一絶対の基準というわけではありません。考慮してもらいたい事情などあれば,弁護士にご相談ください。

財産分与

 離婚はしたいけど,離婚後の生活を考えると経済的に難しい,という悩みはよく聞きます。

 民法は,夫婦の財産関係について,次のように定めています。

 結婚する前に一方が取得した財産,たとえば結婚する前に得た収入は,稼いだ人のものです。

 一方,結婚した後に一方の名義で取得した財産は,その人の財産となります。たとえば,自分の親から相続した財産であれば,相続は親から子にわたるものですから,一方の名義で取得したといえます。

 しかし,結婚して一緒に生活していると,夫婦のどちらに属するか明らかでない財産も出てきます。ですからその場合,夫婦の共有に属すると推定するというのが民法のルールになっています。たとえば,結婚してから得られた夫の給料は,確かに夫が働いて稼いだものですが,妻の家事労働があって稼ぐことができたものともいえますので,実質的には夫婦の共有財産とされます。

 もっとも,離婚しても共有状態で維持していくことは不自然でしょう。

 そこで,離婚に伴って夫婦の共有財産を清算する方法として,民法上財産分与という手段が定められています。

1 財産の分け方はどうやって決めていくのか

 基本的に共有財産の分け方は夫婦の話し合いで決めるのですが,まとまらなければ,家庭裁判所に審判や調停を申し立てるということになるでしょう。

 裁判所は,夫婦が婚姻中に取得した財産は,原則として夫婦が協力して築いたものであり,互いに2分の1ずつ協力して築いたものと考えています。ですから,夫婦は婚姻後に形成した財産について互いに2分の1ずつ権利を持つということになります。

2 預貯金について,どのように分与するのか

 夫と同居しているならば,財産分与を請求した時点までに稼いできた財産を分けることになりますが,別居されているのであれば,別居時の残高を分けることになります。

 別居して以降稼いだお金は,夫婦で協力して稼いだお金とは考えられないからです。

 また,結婚前の収入は夫のものですから,これは除いて考えることになります。

3 退職金も財産分与の対象になるか

 将来的に退職金がもらえるか,もらえるとしていくらもらえるか予測することは難しく,受給できるかはっきりしないものを財産分与の対象とできるのか問題となるところです。 

 また,離婚後は夫婦で共同して退職金を形成したとはいえないので,将来の退職金への貢献をどう評価するべきかという問題もあります。

 そこで,将来の退職金については,数年後に退職しその時点の退職金の額が分かっている場合に限り,分与の対象となると扱うことが多いようです。

4 不動産や株式については,どこを基準に価格を算定するのか

 不動産や株式については,評価額が変動するので,分与するときの評価額を基準として計算します。

5 夫婦の一方が債務を負っている場合には,どのように財産分与するのか

 財産分与は,存在する財産を分ける制度ですから,財産をトータルでみてマイナスの場合は,財産分与を請求できないことになります。

 従って,プラスの財産よりも借金の方が多ければ、財産分与を求めることはできないでしょう。

 では,これといって夫婦の共有財産がない場合,何ももらえないということになるのでしょうか。それでは専業主婦をしてきた女性に酷な結論になることもありますよね。

 夫から慰謝料を払ってもらえるケースならいいのですが,それには夫が慰謝料を払うだけの責任が認められる必要があります。浮気もDVもない普通の夫では認められません。

 そこで,離婚後経済的に自立できるまでの間の生活費を財産分与として負担してもらうことができる場合があります。

 具体的には,夫婦の一方が家事や子育てを担当して仕事をしていないこと,一定期間の生活費をまかなえるだけの財産分与や離婚慰謝料を得られず,自分の財産としても持ち合わせていないこと,相手配偶者が従前から稼働しており,離婚後も一定の収入を得られるか,相当額の自分の財産を有していて,離婚後の生活費として一定額を支払わせても生活に支障がないことなどが認められれば,そのような財産分与が認められる可能性があります。

6 未払いの婚姻費用について

 別居中の夫から生活費をもらっておらず,自分で親兄弟から借金をして生計を立てているような場合,財産分与でこれまでの生活費の分までもらうことができるのでしょうか。

 別居中の生活費は,婚姻費用の分担として相手方に支払うように請求できますが,これを支払ってもらっていない場合,財産分与において上乗せしてもらうことも可能です。

年金分割

1 離婚時年金分割制度とは

 分かりやすく説明すると,年金のうち,いわゆる2階部分,つまり厚生年金や共済年金について,夫が被保険者となっていたとしても,夫婦間で分割できるという制度です。

2 分割の割合はどのように決めるのか

 夫婦で合意できるのであれば,分ける割合をどう定めても自由です。

 しかし,話し合いでまとまらず,審判などによって裁判所に決めてもらう場合,裁判所としては,保険料納付について夫婦は同等に寄与して保険料を納付してきたものと考えており,原則として2分の1ずつ分割すると考えています。

 長年別居していたとしても,特段の事情がない限り2分の1の割合で分割されているのが現状です。

3 年金分割はどのように進めていくのか

 合意分割と3号分割という2つの制度があります。

 合意分割制度は,原則として夫婦双方またはその代理人が年金事務所に行って年金分割の改定請求を行うことになります。しかし,調停や審判により分割する割合を決めた場合には,どちらか一方が年金事務所に行って手続をすることができます。

 3号分割制度は,年金手帳と双方の戸籍謄本を持って行けば,自動的に2分の1の按分割合で年金分割を請求できます。裁判所が関与することもありません。ただし,平成20年4月1日以降の国民年金第3号期間のみが対象となります。

子どものことについて

離婚する際には,夫婦間の子どものことについても決めるべき事柄があります。

親権

 子どもがいる夫婦が離婚を考えている場合,夫と妻のうち,どちらがその子の親権者になるのかを決めなければなりません。

1 親権者を決める基準,考慮要素

 親権の問題で最も重要なことは,父と母のどちらを親権者にすることが,子どもの利益と福祉にとってより望ましいか,ということです。

 その際,色々な諸般の事情が判断材料となります。たとえば,父母の年齢・性格・健康状態といった監護能力に関る事情や,資産・収入・職業などの経済的環境もありますし,これまで父と母のどちらが主に監護してきたかや,愛情のかけ方・程度はどのようなものだったか,また子どもの側の事情として,その子の年齢,性別,父母との結びつきも重視されます。

2 どのような点が重視されるか

 色々と考慮要素を挙げましたが,具体的にどのような点が重視されるのでしょうか。

  1. 現状の尊重
    たとえば,子どもが幼稚園や小学校に通っている場合など,転校しなければならないということはマイナスに働きます。
  2. 子の意思の尊重
    おおむね10歳前後から,意思を表明する能力があると考えられ,調査官面接でヒアリングしたりします。
     5,6歳の子どもの場合,周囲の影響を受けやすく,空想と現実とが混同される場合も多いので,たとえ一方の親に対する感情や意向を明らかにしても,それを重視するべきでないとされています。
  3. 母親の優先
    特に幼い子どもの場合,母親の役割というものが重視される傾向にあります。
  4. 兄弟の不分離
    兄弟の中で揉まれて人格形成することが重要と考えられるからです。
  5. 監護能力
    例えば,昼間働いているのであれば,その間の養育はどうするのか,住む場所や生活環境なども重要になります。

養育費

民法上,親は子供に対して扶養義務があるので,たとえ親権者でなくとも養育費を負担すべき義務があります。

1 養育費の金額としては,どのくらい請求できるのか

 金額については,支払義務のある者の収入とそれを要求する権利のある者の収入を目安とする算定表というものがあり,裁判所ではそれを参考にして金額を決めています。この算定表は,裁判所のホームページにも掲載されていますので,参照ください。

  • 養育費・婚姻費用算定表
    令和元年12月23日に公表された改定標準算定表(令和元年版)です
     夫婦双方の収入を把握するために,源泉徴収票や給与明細などの提出を求められることになります。

 裁判所では,算定表により算定された額が基準とされることが多いですが(最高裁は,平成18年4月26日に出された決定で,算定表によって婚姻費用を算定した原審の判断について,その算定方式が合理的なものであって,是認することが出来るとしました。判例タイムズ1208号90頁参照),算定表は便宜的に作成されたものであって,必ず従わなければならない唯一絶対の基準というわけではありません。考慮してもらいたい事情などあれば,弁護士にご相談ください。

2 養育費は子どもが何歳になるまで請求できるのか

 基本的には,成人になるまで請求できるとされています。成人に達した者は,働いて自分で生計を建てるのが原則だからです。もっとも,夫婦間の話し合いで,例えば子どもが大学卒業までとすることも可能です。

3 一度決めたものは変更できないのか

 養育費は,いったん取り決めたとしても,父母の収入の変化や,再婚して扶養家族が増えたときなど,事情の変更があれば,増額や減額について双方が話し合って取り決めなおすことも可能です。

面会交流

 親権者とならなかった親や子どもを監護養育していない親が子どもと会うことを面会交流といいます。

1 相手方を子どもに会わせないようにすることができるのか

 面会交流は親の法的権利と考えられており,原則として面会交流を拒むことはできないと考えた方がよいでしょう。

 もっとも,面会交流は子どもの福祉のために認められるという側面もありますので,明らかに子どもの福祉を害するような場合には,認められないと考えられます。

 たとえば,極端な例としては,親が子どもを虐待するなど,面会交流を実施することが子どもの平穏な生活や精神的,情状的安定を揺るがし,子どもの健全な成長を妨げる恐れが強いというような事情がある場合には,面会交流は認められないことになります。

2 養育費を払わない元夫から子どもへの面会を要求されたら,拒否できるのか

 よく聞かれることですが,心情として理解できる部分があっても,養育費の問題と面会交流の問題は別問題と考えられています。ですから,たとえ養育費が滞っていたとしても,面会交流を拒絶することはできません。養育費の支払を,面会交流の条件とすることも認められません。

その他の問題

離婚事件においてよく聞かれる問題について取り上げます。

不貞行為について

 離婚事件においてよく相談を受けるのが,「夫あるいは妻に不倫された。許せないので離婚したい。」という話や,「不貞行為の慰謝料はいくらぐらい貰えるか。」という話です。

 民法の規定する裁判上の離婚事由は5つありますが,そのうちの一つに「配偶者に不貞行為があったとき」というのがあります。

 ところが,実際には,配偶者が不貞行為に及んだことで即離婚となるとは限りません。通常は,全ての事情を総合してみても,到底円満な夫婦生活の継続及び回復が期待できず,婚姻関係が破綻しているといえれば,裁判上の離婚が認められるでしょう。ですから,不貞行為を理由に離婚訴訟を提起するときは,民法の規定する離婚事由として,先ほどの「配偶者に不貞行為があったとき」だけではなく,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」も同時に上げることが多いです。

1 不貞行為の存在はどのように立証するのか

 不貞行為の現場を捉えた写真があればかなり強力ですが,相手が用心している場合も多いですから,なかなか証拠を準備することは難しいです。

 写真あるいは不貞行為の存在をうかがわせるメールがなければ,不貞行為の立証は難しいといえるかも知れませんが,最終的にはケースバイケースです。

2 不貞行為の証拠が無ければ,離婚も認められないのか

 理屈からすればそうなりますが,最終的には証人尋問や原告及び被告の当事者尋問をやって,不貞行為があったかどうかははっきりしないものの,婚姻関係自体は破綻しているとして離婚が認められることもあります。

3 不倫をした側が,配偶者に対して離婚を請求することは認められるか

 有責配偶者からの離婚請求が認められるかという問題です。自ら婚姻を破たんさせた者のことを有責配偶者といいます。

 判例は,かつては,たとえ婚姻が破たんしていても認めるべきではないとしていましたが,現在では,婚姻が破たんしている以上,離婚を広く認めるべきであるという考え方に変わってきています。

 裁判所も,夫婦の別居期間が同居期間に比べてどの程度長期に及んでいるか,未成熟の子どもがいないか,相手方配偶者が離婚により過酷な状態におかれないかなどの事情を,具体的に判断していくことになります。

4 慰謝料の相場はどのくらいなのか

 慰謝料の金額については非常によく聞かれますが,これはもうケース・バイ・ケースとしか言いようがありません。通常,慰謝料の請求は離婚訴訟に含めて行うことが多いのですが,その場合は,相手方配偶者の不貞行為によって婚姻関係が破たんした,よって離婚を求めるし,慰謝料も求めるということになります。そうすると,慰謝料の額についても,破たんの原因,破たんの程度・内容,破たんに至る経緯や動機等を元に判断されることになります。

5 不貞行為の相手方への請求も同じ手続の中でできるのか

 不貞行為をした配偶者と不貞行為の相手方は共同不法行為をしたものとして,連帯して慰謝料債務を負うことになります。

DV(ドメスティックバイオレンス)事件

 DVとは,ドメスティックバイオレンス,つまり家庭内暴力の略ですが,近年,一般的には,家庭内で起きたかを問わず,元夫婦や恋人など親密な関係にある者の間に起こる暴力全般に対してこの言葉が使用されています。

 DV事案については,DVを防止するための法律があります。この法律は,「配偶者からの暴力」のみを対象としていますので,単なる交際相手やストーカーからの暴力はまた別の法律で規制されています。暴力の具体的内容については,「被害者に対する身体的暴力のほか,その心身に有害な影響を及ぼす言動」と定められています。つまり,直接体に振るう暴力だけではなく,言葉の暴力や経済的暴力なども含まれます。

1 加害者に自分の過ちに気付かせてDVを止めさせることはできないか

 被害者に謝罪して絶対もう暴力は振るわないと約束したのに,約束を守らず暴力を振るい続ける人はたくさんいます。

 また,DV加害者は,被害者や子供に対する所有意識・支配欲が強く,暴力についての加害意識・責任感がないので,暴力を振るって気が済んだ後に表面上反省しているように見せても,実際は改心していないことも少なからずあります。

2 対応策

 それでは,被害者はどのように対処すればいいのか。

 加害者のもとを去る決意ができたのなら,まず加害者のもとを去り,加害者から何を言われても加害者のもとへは帰らない事です。

 もしかしたら,こんどこそ改心してくれるかもと期待して戻ると,加害者は,今回の程度暴力では夫婦の絆は切れないと確信し,もう一段エスカレートした暴力を振るいます。

 被害者が加害者のもとを去る時,加害者は被害者を引き留めようと必死になるので,もっとも危険な状態になります。そこで,まずは,一人で悩むのではなく周囲に相談して,協力者を探してください。

3 誰に相談すればよいか

 まずは,両親や友人でもいいです。ただ,彼らがDVについて多くの情報を持っているとは限りませんから,DV専門の相談窓口に是非行ってください。

 一つには配偶者暴力相談支援センターがあります。DV被害者の支援の中心的な機関です。姫路では,姫路市DV相談支援センターで,電話での相談や面接での相談が受けられます。

 次に警察です。今まさに暴力を振るわれている時は迷わず110番してください。差し迫った危険がなくても,警察に相談しておくことで,その後,何かあった時に警察がすぐに対処してくれます。

 他には,市区町村の相談窓口もあります。

4 裁判所の保護命令について

 保護命令とは,簡単に言えば,裁判所が加害者に対して「被害者に近づくな」「自宅から出ていけ」などの命令をしてくれる制度です。この命令に加害者が違反した場合,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられますので,多くの加害者はこの命令に従い,被害者の安全を確保できます。

 保護命令は,DVのうち,「身体に対する不法な攻撃であって生命身体に危害を及ぼすもの」,つまり身体に対する直接的な暴力だけが対象になっていて,精神的暴力や経済的暴力は含まれません。このような身体に対する暴力を受けている被害者は,裁判所に保護命令を出してくれという申立てができますが,他にも満たすべき細かい要件がありますので,申立をする前にご相談ください。

 相談の際, 暴力の証拠が非常に重要になってきます。一般に身体的暴力の有効な証拠になりえる資料としては,暴力に由来する精神疾患や怪我の診断書,怪我の写真,怒鳴ったり罵り声の録音,メールの記録などです。また,第三者が暴力を見ていればその目撃証言も重要です。

 あとは,加害者と知り合ってから現在に至るまでの出来事を時系列にまとめた表や,今まで受けた暴力の詳細について記載した書面を持参されると良いと思います。限られた相談時間の中で,長い夫婦生活や長年の暴力の話を一から思い出して話していると,あっという間に時間が過ぎてしまいますからね。

 証拠がない場合でも,保護命令が出なくとも,相手から逃げて,DV被害者を匿う施設に身を寄せるなどして身の安全を確保することはできます。

 保護命令が出されるケースで,加害者が子供を連れ戻そうとしている場合,被害者に加えて,子供への接近も禁止してもらえます。 また,保護施設には子供と一緒に入所できますし,新しい住所に住民票を移動させなくても,実際に住んでいるところの学校に子供を通わせることもできますので,加害者の知らない場所で子供と生活できます。

離婚事由

 民法が規定する裁判上の離婚事由を説明します。

 民法770条(裁判上の離婚事由)
 民法は,①不貞行為,②配偶者の悪意の遺棄,③回復の見込みのない強度の精神病,⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるときに,裁判上の離婚請求を認めています。

①不貞行為(1項1号)

1.不貞行為とは

 不貞行為とは,婚姻外の異性と自由な意思のもとに性的関係を結ぶことです。

 不貞行為は,不貞行為の相手方と合意の上であったか否かということは関係ありません。相手方と合意があった場合(いわゆる不倫行為や売春行為)も合意がない場合(強姦行為)であっても,不貞行為といえます。また,一時的なものか継続的なものかも問いません。

 なお,同性との性的関係は,不貞行為にはならず,民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たることになります。

 このように判断して離婚を認めた裁判例もあります。

 【裁判例】東京地裁 平成17年3月1日判決/平成15年(ワ)第24052号
 LLI/DB 判例秘書登載

2.宥恕(ゆうじょ)

 一方が相手方の不貞行為を知ったうえでこれを許したような場合(宥恕)には,離婚原因としての不貞行為にはならないと考えられています。もっとも宥恕がされたかどうかについては,慎重に判断しなければなりません。

【裁判例】東京高裁平成4年12月24日判決判例時報1446号65頁

【判示事項】 妻に不貞行為があったが、夫がこれを宥恕し、通常の夫婦関係に戻り、その後破綻するに至った場合に、妻の離婚請求が許されるとした事例

3.不貞行為の立証

 不貞行為の立証については,相手方が認めている場合や不貞行為の現場の写真・ビデオ等がある場合のほか,パソコンのメールの内容等により密接な交際をしていることが明らかで,性的関係への言及がある様な場合には,立証できる場合が多いと思われます。

 仮に,不貞行為の立証まではできない場合であって,そのため民法770条1項1号所定の不貞行為該当性は認められない場合でも,そこで認められる密接な交際関係が,同条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」,すなわち婚姻関係の破綻の原因及び事実として認められ,離婚請求が許される例は普通にみられます。

4.不貞行為に基づく慰謝料

 不貞行為は,離婚事由となるだけではなく,婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害したことになります。したがって,不法行為に基づく損害賠償義務(民法709条)が発生します。
 もっとも,不貞行為がされたとしても,その時点において,すでに婚姻関係が破綻していた場合には,婚姻共同生活の平和を破壊したということにはなりません。したがって,損害賠償義務も負いません。

【判 例】最高裁(3小)平成8年3月26日判決最高裁判所民事判例集50巻4号993頁

【判示事項】 婚姻関係が既に破綻している夫婦の一方と肉体関係を持った第三者の他方配偶者に対する不法行為責任の有無

【判決要旨】 甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わない。 

 不貞行為の相手方(第三者)も,不貞行為をした婚姻当事者と共同して不法行為をしたことになりますので,同じく損害賠償義務(民法709条,719条1項)を負います。

②配偶者の悪意の遺棄(1項2号)

 悪意の遺棄とは,婚姻倫理からみて非難される態様で,夫婦の義務である同居,協力,扶助義務に違反する行為をすることです。

 配偶者の一方が理由もなく,他方配偶者や子どもを放置して,自宅を出て別居を続けたり,収入がありながら,婚姻費用の分担をしないような場合です。
 なお,配偶者が仕事等の都合で,同居することなく別居を続けているような場合には,それだけでは,悪意の遺棄とはいえません。

③3年以上の生死不明(1項3号)

 配偶者が3年以上,その生死が不明であるような客観状況が継続する場合です。

 実際に生死不明であることは問いません。

 こうした場合には,婚姻関係を継続する意味がありませんので,離婚原因とされています。

④回復の見込みのない強度の精神病(1項4号)

 相手方が精神病にかかり,夫婦間に相互に精神的交流が失われ,婚姻関係が形骸化しているような場合に離婚を認めるものです。  夫婦には協力扶助義務があるのだから,病気になった相手方を保護すべきですが,当事者の意思を無視し,能力を超えてまで,配偶者をいつまでもこうした婚姻に縛り付けておくのは酷であるという考え方に基づくものです。破綻主義の考えに基づくものといえます。  しかし,これが離婚原因となると,精神病に罹患した配偶者は,自己の責任ではないにもかかわらず,離婚され,他方配偶者からの経済的援助(生活費や療養費等)を得られなくなってしまいます。また,精神病に罹患した者に対する公的,社会的支援態勢が必ずしも十分でないというのが現状です。したがって,離婚により婚姻生活から解放される他方配偶者の利益と精神病に罹患した本人の保護をどう考えるべきかということが問題になります。こうしたこともあって,この要件での離婚にっいては,裁判例は,厳格な傾向にあるといえます。  【参照すべき判例】  最高裁昭和33年7月25日判決民集12巻12号1823頁  最高裁昭和45年11月24日判決民集24巻12号1943頁

⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由(1項5号)

 すべての事情を総合してみても,到底円満な夫婦生活の継続又は回復を期待することができず,婚姻関係が破綻状態になっているといわざるを得ない場合をいいます。

  1. 婚姻の当事者双方が婚姻を継続する意思がないことと,
  2. 婚姻共同生活の修復が著しく困難であること

 のいずれかが認められれば,これに該当するといえます。

 実際に,事由の有無が争われるのは,婚姻共同生活が客観的に見て修復することが著しく困難な状況になっているといえるかどうかをめぐってです。

 そこには,①破綻の事実の認定と,②継続しがたいかどうかを判断する法的判断の2つの作業が含まれています。

 具体的に問題となるのは,次のとおりです。

ア 長期間の別居
 夫婦が長期間別居していれば,婚姻関係が破たん状態にあると考えられます。したがって,別居期間は,重要な要素です。
 法務省でも,夫婦が別居期間5年以上,婚姻の本旨に反する別居をしていることを離婚事由とするということが検討されたことがあります(平成8年2月26日法制審議会「民法の一部を改正する法律案要綱」)。
イ その他の婚姻を継続し難い重大な理由
 別居期間のほかに,「婚姻を継続し難い重大な事由」として挙げられるのは,

  1. 暴行・虐待
  2. 同居に堪えないような重大な侮辱
  3. 犯罪行為・服役
  4. 勤労意欲の欠如・浪費癖・借財等
  5. 性生活の不一致(性的不能,正当な理由のない性行為拒否,異常な性行為の要求など)
  6. 過度の宗教活動
  7. 親族との不和
  8. 性格の不一致

 多くは,他の要素とあいまっての総合判断です。

 法律上の離婚事由となるためには,婚姻関係が客観的に破たん状態にあることが必要ですから,特段の事情もないまま,一方配偶者が他方との婚姻生活を続けたくないと主張するだけでは,5号の離婚事由があるとはいえません。

●最近の5号関連裁判例

  • 大阪高裁平成21年5月26日判決 家裁月報62巻4号85頁
  • 別居期間が1年余りの夫婦について婚姻を継続し難い重大な事由があるとされた事例
  • 要旨

 控訴人(夫)は,被控訴人(妻)と約18年にわたり大きな波風の立たないまま婚姻生活を送ってきていたが,80歳に達して病気がちとなった控訴人がかつてのような生活力を失って生活費を減じたのと時期を合わせるごとく,被控訴人が,日常正活の上で控訴人を様々な形で軽んじるようになった上,長年仏壇に祀っていた控訴人の先妻の位牌を無断で親戚に送り付けたり,控訴人の青春時代からのかけがえない思い出の品々を勝手に焼却処分したりしたことなどから,被控訴人と別居するようになったものであるところ,こうした被控訴人による自制の薄れた行為は,控訴人の人生に対する配慮を欠いた行為であって,控訴人の人生の中でも大きな屈辱的出来事として心情を深く傷つけるものであったこと,それにもかかわらず,被控訴人に控訴人が受けた精神的打撃を理解しようとする姿勢に欠けていることなどにかんがみると,控訴人と被控訴人の婚姻関係は修復困難な状態に至っており,別居期間が1年余りであることなどを考慮しても,控訴人と被控訴人との間には婚姻を継続し難い重大な事由があると認めるのが相当である。


【コメント】

  • この裁判例は,民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」の解釈としては,別居以外の破綻事情として掲げられることのある「同居に堪えないような重大な侮辱」の一例として整理することも可能ですが,そもそも,5号は,別居開始に至った事情や経過と別居後の経過とがあいまって,婚姻関係が修復困難な状態に至っているかどうかを常識に従って判断することを許す規定です。
  • 破綻主義を採用した「5号」にあたる事由として例示される別居及び別居期間やその他の事由は,要件的に捉えるべきものではありません。それらは「例示」であって,要するに,婚姻関係が修復困難な状態に至っていると判断された裁判例を整理してみると,そのような事由を理由にしている場合が多いというだけのことです。
  • 裁判例を整理して参考事情を提供するのは思考経済に資するものですが,もともと参考事情や例示に過ぎなかった「教科書に出てくる破綻類型」を,あたかもいずれかの破綻類型に該当することが離婚の「要件」であるかのように捉える実務家も散見します。しかし,これは教科書の誤読です。両性の平等の本旨に立脚し,破綻主義を採用した民法770条1項5号の立法趣旨に照らし,実際には修復困難な関係にある当事者に,形骸化した婚姻関係の継続を,国家である裁判所が強制するようなことがあってはなりません。

(2020年3月8日一部修正)

最近の重要裁判例

 離婚・親子に関連する近時の重要裁判例を紹介します。

東京高裁平成25年7月3日第12民事部決定

面会交流審判について,頻度等,受渡場所,受渡方法について審理不尽があるとして,原審差し戻しとなった事例。

東京高裁平成25年7月3日決定「面会交流の実施について」

(1)

 未成年者が上記のような葛藤を抱える中で,いかにして両親が適切な対応をすべきか,すなわち,どのようにして相手方との面会交流を実施し,継続していくかは,子の福祉の観点から重要な問題である。父母,子三者の情緒的人間関係が色濃く現れる面会交流においては,これら相互の間において,相手に対する独立した人格の認識とその意思への理解,尊重の念が不可欠である。

 特に父母の間において愛憎葛藤により離別した感情と親子間の感情の分離がある程度できる段階にならないと,一般的に面会交流の実施には困難が伴うというほかない。

 殊に,子が幼少である場合の面会交流においては,父母間に十分な信頼関係が醸成されていないことを念頭に置きながら,詳細かつ周到な面会交流の実施要領をもって行わなければ,面会交流の円滑な実施は困難であり,仮に実施したとしても,継続性を欠いたり,両親の間で板挟み状態にある子に不要なストレスを与える等,子の福祉の観点からは却って有害なものとなりうるおそれが大である。

(2)

 これを本件についてみるに,現在のところ,抗告人と相手方の間で離婚を巡る調停が係属しており,父母の間における愛憎葛藤の感情と親子間の感情とを分離することまでは困難な状況にあるといえる。

 したがって,未成年者及び当事者の現状を踏まえた上で,具体的な実施要領を定めることにより,円滑な面会交流の実施を図ることが相当である。

 そして,未成年者が上記のような葛藤を抱えていることによれば,実施要領の策定に当たっては,両親である当事者が未成年者の現状を理解した上で,これに対応するための条項として,面会交流時や,普段時における禁止事項や遵守事項などを盛り込むことが考えられる。

 このことは,双方の不信感や抗告人の相手方に対する恐怖心などを軽減するのみならず,条項の内容についての検討を通じて,共に親権者である当事者双方が,未成年者の現在の状況についての認識を共通のものとし,監護親,非監護親それぞれの立場における未成年者に対する接し方を考えることにも繋がり,未成年者の福祉の見地からも必要な過程であるといえる。

(3)

 しかるに,原審判が定めた面会要領のうち,頻度等(実施日)や受渡場所,未成年者の受渡しの方法は,その根拠となる情報等が一件記録からは窺えず,その相当性について判断することができないばかりか,これらについて当事者間で主張を交わす等して検討がされた形跡も認められない。殊に,抗告人が,同居中に行われた相手方の暴力や言動を理由に,相手方に対する恐怖心を強く主張している本件において,未成年者の送迎時に相手方と顔を合わせるような受渡方法は,かなり無理があるというべきである。また,相手方が抗告人に対する暴力の事実を否定していない本件においては,第三者機関の利用等を検討することがまず考えられるべきであるし,その場合,仲介費用等の面で問題があれば,未成年者が一人でも行くことができる受渡場所の設定を検討したり,未成年者が信頼できる第三者を介したりすることも検討すべきと考えられる。
 また,上記(2)で述べたとおり,当事者双方が未成年者の現状を踏まえた上で具体的な実施要領を策定するのが相当であるのに,未成年者の現状についての調査は,当初の調査では夫婦関係調整調停における調査であったこともあってか,調査の目的や調査官であることを秘したままの調査であり,充分な調査が尽くされたとは言い難い。

 そして,このことを踏まえて実施されたと思われる最後の調査は,調査の目的や調査官であることを未成年者に明らかにしたこともあってか,最初の調査のときに比べて未成年者の態度が大きく異なっており,十分な面接時間をとることができなかったこと,面接終了後に未成年者の状態が不安定となった旨抗告人からの指摘があったことによれば,両親に対し未成年者の現状を理解してもらうとの趣旨からは,十分な調査内容とは言い難い。

 また,未成年者が未だ7歳であり,聡明であるとされているとはいえ言語的な表現力には欠けることや,抗告人が中間の調査において面会交流を否定する姿勢に終始し,最後の調査における面接終了後には未成年者を辛い思いに巻き込む調査には応じられないなどと述べ,以後の調査に消極的な姿勢を示したことによれば,その後,未成年者との面接にこだわることなく,幼稚園や小学校を調査してこれらにおける未成年者の言動を比較検討し,父母の葛藤下の影響を更に具体的に検証することも考えられるところである。

 そして,これらの調査の結果,未成年者の相手方への思慕の気持ちが明らかになれば,直接的な面会交流を支持する理由の一つともなり得たはずである。仮に,幼稚園に対する調査結果において,当時の未成年者が精神的に不安定な言動を繰り返していた事実が判明すれば,その原因を更に調査することにより,面会交流の可否も含めた未成年者の情緒面の安定に配慮すべき事項を明らかにすることも可能であったというべきである。
 以上の審理や調査が行われていない原審は,審理不尽であるといわざるを得ない。

東京高裁平成25年7月3日決定「面会交流の実施の可否」(1)

 子は,同居していない親との面会交流が円滑に実施されていることにより,どちらの親からも愛されているという安心感を得ることができる。したがって,夫婦の不和による別居に伴う子の喪失感やこれによる不安定な心理状況を回復させ,健全な成長を図るために,未成年者の福祉を害する等面会交流を制限すべき特段の事由がない限り,面会交流を実施していくのが相当である。

東京高裁平成25年7月3日決定「面会交流の実施の可否」(2)

 抗告人が,未成年者と相手方との面会交流を拒絶する理由として主張しているのは,

①相手方による未成年者連れ去りの懸念が払拭できないこと,
②未成年者との面会交流を通じて相手方に現在の住所地を知られることに対する不安,
③相手方の言動が未成年者に与える悪影響,
④相手方への恐怖心から,面会交流の受渡しの際に相手方と会うことができないこと
などである。

 これらのうち,上記①,②及び④は,いずれも抗告人が相手方に対して抱いている恐怖心に由来するものであり,相手方が同居中に抗告人に対し暴力をふるった事実を認めていることなどによれば,抗告人が相手方に対し恐怖心や不安を抱くことはやむを得ないところではある。

 しかし,相手方が同居中に未成年者に対し暴力等を振るった事実は認められず,抗告人の相手方に対する恐怖心や不安をもって,直ちに未成年者と相手方との面会交流を制限すべき特段の事由があるということはできない。

 また,上記③について,抗告人は,調査官に対し,未成年者は幼稚園在籍時に相手方の抗告人に対する言動の影響で,問題行動が多かった旨述べているが,かかる事実が認められる場合には,未成年者の問題行動の頻度や程度,未成年者に対する相手方の影響との因果関係等のいかんによっては,面会交流の制限事由に当たる場合がないではない。しかし,未成年者に上記問題行動の事実を認めるに足りる幼稚園関係者の陳述や,連絡帳等の記載内容などの的確な証拠資料が存在しない本件においては,上記抗告人の供述のみをもって,上記面会交流の制限事由があるとまでいうことはできない。

 そして,前記認定したとおり,調査官による調査によっても,未成年者が相手方を拒絶していることが窺える事情が認められず,未成年者が同居中の両親との良好な思い出を有しているといえる本件においては,原審が説示するとおり,面会交流を実施していくことが必要かつ相当である。

東京高裁平成28年4月26日決定(面会交流方法の原審からの変更)

面会交流の方法について,時間を最初は比較的短時間に設定して,段階的に伸ばす方法が相当であるとして原審を変更した例。

【事案】

 相手方が,元妻に対し,子らとの面会交流を求めた事案。原審が,試行的面会交流において子の福祉を害するような事情は生じていないことなどから面会交流は実施すべきとし,面会の日時を毎月第2土曜日の午前11時から午後5時まで,引渡は相手方宅の最寄り駅改札付近とするのを相当としたので,元妻が抗告。抗告審は,相手方と子らとの交流が長らく途絶えていたことなどを考慮し,最初は面会交流時間を短時間に設定し,段階的に時間を伸ばしていく方法をとるのを相当として,原審判を変更した事例

【判旨】

 未成年者らに相手方を拒否する明確な意思があるとは認められないが,相手方と未成年者らとの交流は長らく途絶えていたことから,未成年者Dには,相手方の記憶がなく,未成年者Cの記憶も断片的なものであり,相手方も,成長した未成年者らの性格等を把握できているとはいえず,

 本件試行的面会交流が双方共に緊張して十分に打ち解けないままに終わってしまい,未成年者らが面会交流に対して消極的な気持ちに転じてしまったことを考慮すると,

 最初から相手方(原審申立人)と未成年者らとだけで長時間の面会交流を設定することは,未成年者らにとって精神的負担が大きく,かえって面会交流に対する消極的な気持ちを強くさせかねないことや,

 未成年者らに対する対応に不慣れな相手方にとっても課題が多いといえることから,

 最初は面会交流時間を比較的短時間に設定し,回数を重ねながら,段階的に面会交流時間を伸ばしていく方法を執るのが相当である。