所有者不明土地関係法について

2021年4月21日,所有者不明土地関係法*が参院本会議で可決され成立しました。

*「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)

法制審議会では「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱」が2月10日に総会議決され,閣法として改正法案(所有者不明土地関係法)が通常国会に提出されていました。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021040100855&g=pol

わが国の基本法である民法の物権法や相続法の改正を伴う,とても重要な法改正ですので,
順次,法制審議会の要綱案(下記サイト)に沿って要旨をご紹介したいと思います。
http://www.moj.go.jp/content/001340751.pdf

まず,民法の相隣関係共有に関する改正内容を要綱などを見ながら,かいつまんでご紹介します。
なお,「財産管理制度の見直し」に関する改正内容については,現在「工事中」です。
難しい法律用語がでてきますが,今後機会を見ながら,順次分かり易く改訂したいと思いますので,今はこの程度でご容赦ください。

民法等の見直し

第1 相隣関係

  相隣関係に関する改正民法の施行期日は,令和5年(2025年)4月1日となりました。

1 隣地使用権

〈旧法〉
 民法209条1項は,「土地の所有者は,境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で,隣地の使用を請求することができる。」と規定している。
〈改正の内容〉
 隣地を使用できる目的の範囲を,境界又はその付近における障壁,建物その他の工作物の築造,収去又は修繕と拡大し,
 さらに,境界標の調査又は境界に関する測量目的 ,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときのその枝を切除目的も加えられることとなった。また,旧法は隣地使用請求権(債権)であったが,改正法では,隣地使用者(隣地所有者及び現使用者)に対する事前の通知を条件とする隣地使用権(物権)となった(改正法209条1項)。
 ただし,法務省のスライド資料の考え方では,「物権と行っても,自力執行は禁止されているので,使用を拒まれたときは,妨害禁止の判決を求めることになる。他方,例えば,隣地が空き地となっていて,実際に使用しているものがおらず,隣地の使用を妨害しようとする者もいないケースでは,裁判を経なくても適法に隣地を使用できるものと考えられる。」とされている。
 隣地を使用する場合には,使用の日時,場所及び方法について,隣地の所有者及び隣地使用者のために損害が最も少ないものを選ばなければならない旨の規定が新設された(改正法209条2項)。
 隣地を使用する際には,予め(法務省のスライド資料の考え方では,「緊急性がない場合は通常は2週間程度」とされている。),その目的,場所,及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならないとの規定が設けられた(改正法209条3項)。

2 竹木の枝の切除等

〈旧法〉
 民法233条1項は,「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その竹木の所有者に,その枝を切除させることができる。」と規定している。
〈改正の内容〉
 ア 越境した竹木の所有者に対して枝の切除を催告したにもかかわらず,相当の期間内に切除しないとき,
    * 催告後の相当期間は2週間が目安となる。(国会質疑の結果)
    * 切除費用は,基本的には竹木所有者の負担と考えるべきであるが,調整が必要な場合もある。
 イ 竹木の所有者が不明なとき及び
 ウ 急迫の事情があるとき
は,越境された側の土地所有者は当該竹木の枝の切除が可能となった(改正法233Ⅲ)。

3 継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権

〈旧法〉
 民法220条は,排水のための低地の通水権について定め,「高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。」と規定している。
 また,民法221条は,通水用工作物の使用権について定め,第1項で「土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。」とし,第2項で「前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。」としている。
 ライフラインの引き込みについては,これらの規定の類推適用が可能と解されている。
 しかし,次の問題があった。
 1.明文の規定がないため,設備の設置・使用に応じてもらえないときや,所有者が所有不明のときには,対応が困難。
 2.権利を行使する際の事前の通知の要否などのルールが不明確
 3.土地・設備の使用に伴う償金の支払義務の有無などのルールが不明確

〈改正の内容〉
 電気,ガス,水道等のライフラインについても関係規定を置いた。すなわち,
 他の土地に設備を設置し,又は他人が所有する設備を使用しなければ,電気,ガス又は水道水の供給等の継続的給付を受けることができないときは,他の土地への設備設置又は他人の設備の利用が認められることとなった(改正法213条の2Ⅰ)。
 ただし,設備の設置・使用の場所・方法は,他の土地及び他の設備のために損害が最も少ないものに限定される(改正法213条の2Ⅱ)。また,利用者は,他の土地の所有者等への事前の通知(改正法213条の2Ⅲ),土地等の損害に対する償金の支払い義務(改正法213条の2Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ,Ⅶ)がある。

第2 共有等

1 共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等

〈改正の内容〉
 共有物を使用している共有者は,別段の合意がある場合を除き,他の共有者に対し,自己の共有持分を超える部分の使用の対価の償還義務を負い,使用についての善管注意義務を負うこととなった。

2 共有物の変更行為

〈旧法〉
 民法251条は,共有物の変更について「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」と規定している。
 しかし,共有物に軽微な変更を加える場合であっても,共有者全員の同意が必要ということになると,共有物の円滑な利用・管理を阻害する。例えば,「砂利道のアスファルト舗装」も,変更行為となってしまう。
〈改正の内容〉
 共有物の変更について,「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。」という例外が入った。
   法務省のスライド資料では,これにより「砂利道のアスファルト舗装や,建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は,基本的に共有物の形状または効用の著しい変更を伴わないものにあたると考えられる。」とされている。
 また,所有者不明土地問題等への対応のため,他の共有者が不明なときは,裁判により共有物の変更が可能となった。

3 共有物の管理

〈旧法〉
 民法252条は,共有物の管理について「共有物の管理に関する事項は,前条の場合を除き,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。ただし,保存行為は,各共有者がすることができる。」と規定している。
 しかし,共有物を使用する共有者がいる場合に,その共有者の同意がなくても,持分の過半数で,管理事項を決定できるかは明確ではなかった。このため,無断で共有物を使用している共有者がいる場合には,他の共有者が共有物を使用することは,事実上困難であった。
〈改正の内容〉
 次の通り,詳細な規定を置いた。

  1.  共有物の管理に関する事項は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決し,共有物を使用する共有者があるときも同様とする。
  2.  また,他の共有者が不明な場合等においては,当該共有者以外の共有者の持分の価格に従い,その過半数で共有物の管理事項を決定することができる旨の裁判をすることができる。
  3.  ただし,いずれの場合にも,共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼす場合には,その者の承諾を得なければならない。
  4.  また,5年以内の土地の賃貸借,3年以内の建物の賃貸借の設定等が管理行為に属するものと明記された。
  5.  1から4までの規律にかかわらず,各共有者が保存行為をすることができることは旧法と変更はない。
    •  上記3.の「特別の影響を及ぼすべきとき」とは,対象となる共有物の性質に応じて決定を変更する必要性とこれによって使用者が受ける不利益とを比較衡量し,その不利益が使用者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される(法務省)。
    •  共有者の一人に使用貸借契約上の使用借権があるといえる場合には,その権利の消滅事由がなお必要となる。

 また,上記2のとおり,形状・効用の著しい変更を伴わない変更(軽微変更)は,管理に属する事項として,持分価格の過半数で決定できることとされた(改正法251条1項,252条1項)。

4 共有物の管理者

〈改正の内容〉
 共有者による共有物の管理者の選任・解任の規定,共有物の管理者の権限等に関する規定が新しく設けられた。

  1.  共有者は、共有物の管理の規律により、共有物を管理する者(「共有物の管理者」)を選任し、又は解任することができる。
  2.  共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。3において同じ。)を加えることができない。
  3.  共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
  4.  共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
  5.  4の規律に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

5 共有物の変更・管理の決定に関する裁判手続

〈改正の内容〉
 共有物の変更・管理の決定に関する裁判手続規定が新設された。

    •  賛否を明らかにしない共有者がいる場合には,裁判所の決定を得て,その共有者以外の共有者の持分の過半数により,管理に関する事項を決定することができるものとされた(改正法252条Ⅱ②)。
    •  所在等不明共有者がいる場合には,裁判所の決定を得て,
      • 所在等不明共有者以外の共有者の全員の同意により,共有物に変更を加えることができる(改正法252条Ⅱ)
      • 所在等不明共有者以外の共有者の過半数により,管理に関する事項を決定することができる(改正法252条Ⅱ①)。

 なお,裁判管轄は,対象財産の所在地を管轄する地方裁判所とされている。

6 裁判による共有物分割

〈旧法〉
 民法258条2項は,裁判による共有物の分割について「共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。」と規定している。
 このように同法は,裁判所が命じる共有物分割方法として,現物分割と競売分割のみを規定し,現物分割が基本的な分割方法で,競売分割は補充的な分割方法と位置づけている。
 しかし,最高裁判所は,部分的価格賠償(最高裁昭和62年4月22日判決民集41巻3号408号)や全面的価格賠償(最高裁平成8年10月31日民集50巻9号2563頁)を認める判断を出している。
 そこで,価格賠償を明文化し,現物分割,競売分割との関係を明確化する必要があり,本改正に至った。
〈改正の内容〉
 共有物分割について,裁判所は,現物分割又は価格賠償による分割を命ずることができ,いずれの方法でも分割することができないとき,又は,分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは競売分割を命ずることができることとなった(改正法258条)。

7 相続財産に属する共有物の分割の特則

〈従来の規律〉
 共有物の全部又はその持分が相続財産に属し,その財産について,遺産分割をすべき場合には,共有物分割はできないとされ,遺産共有の部分については別途遺産分割により解決する必要がある。
〈改正の内容〉
 共有物の持分が相続財産に属している場合に,相続開始時から10年を経過したときは,遺産分割の請求を求める相続人からの異議の申出がない限り,共有物分割規定による分割が可能となった。
 これにより,相続開始時から10年が経過している場合には,通常共有と遺産共有が混在している財産の共有物分割が可能となり,一回的解決ができることとなった。

8 所在等不明共有者の持分の取得・譲渡

〈改正の趣旨〉
 共有者の中に所在等が不明な者がいる場合には,共有物の円滑な管理等を行うことに支障が出る。
 そこで,このような所在等不明の共有者との共有関係を解消する方法等が求められ,本改正に至った。
   * 現行法上の不在者財産管理人の選任申立は,手続・費用面で問題がある。
〈改正の内容〉
(1)不動産の持分の取得

 不動産が数人の共有に属する場合において,共有者が所在等不明の場合には,
 裁判により,
 他の共有者が,当該所在等不明共有者の共有持分を取得することができるようになった(改正法262条の2)。
 所在不明共有者は,持分を取得した共有者に対する時価相当額請求権を取得する(実際には,裁判所する供託命令に基づき時価相当額の金銭が供託される仕組みであるので,その供託金から支払を受ける。)。
(2)不動産の持分の譲渡

 所在等不明共有者以外の共有者には,
 所在等不明共有者以外の他の共有者全員が特定の者に不動産の持分の全部を譲渡することを停止条件として,
 特定の者に,当該所在等不明共有者の持分を譲渡することができる権限も付与されることとなった(改正法262条の3)。

9 財産管理制度の見直し

土地建物の管理制度の創設

<改正の趣旨>

 現行の財産管理制度(不在者財産管理人(民法25条1項),相続財産管理人(現行民法952条1項),清算人(会社法478条2項))は,対象者の財産全般を管理する「人単位」の仕組みとなっているところ,この方法では,土地・建物以外の財産を調査して管理しなければならず,管理期間も長期化しがちであり,予納金の高額化により,申立人にも負担が大きかった。また,所有者を全く特定できない土地・建物については,毀損の各種の財産管理制度を利用することができない問題点があった。

 そこで,特定の土地・建物のみに特化して管理を行う,所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度を創設した(改正民法264条の2~264条の8)

<改正の内容>

 工事中です。