民事訴訟手続のIT化-2023年3月1日からWEBで弁論準備期日・和解期日が可能となります。
1.改正民事訴訟法等の成立・公布
民事訴訟法、人事訴訟法、家事事件手続法改正法が2022年5月25日に公布されました。
改正の概要と、改正法の施行日は、次の通りです(法務省のHPより)。
2.訴訟手続IT化推進のための民事訴訟法の改正内容
「訴訟手続のIT化推進」の観点からの、民事訴訟法の改正内容は、次の2点です。
(1)訴訟で当事者双方がウェブ会議・電話会議を利用して弁論準備期日及び和解期日に参加することを可能とする改正
- 民事訴訟において、当事者双方が裁判所に現実に出頭することなく、ウェブ会議や電話会議を利用して弁論準備手続の期日や和解の期日に参加することが可能となります(法務省のHPより)。
■ ウェブ会議等を利用した弁論準備手続と和解期日の見直し【PDF】
(施行日)令和5年(2023年)3月1日
(施行日)令和5年(2023年)3月1日
<改正前民事訴訟法170条3項>
3 裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
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<改正民事訴訟法170条3項>
3 裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。 |
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- 「音声の送受信により同時に通話をすることができる方法」とは、ウェブ会議、テレビ会議及び電話会議のいずれかであることを意味するとされています。
<改正前民事訴訟規則88条2項及び3項(弁論準備手続調書等)>
2 裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によつて弁論準備手続の期日における手続を行うときは、裁判所又は受命裁判官は、通話者及び通話先の場所の確認をしなければならない。 3 前項の手続を行ったときは、その旨及び通話先の電話番号を弁論準備手続の調書に記載しなければならない。この場合においては、通話先の電話番号に加えてその場所を記載することができる。 |
<改正後民事訴訟規則88条2項及び3項(弁論準備手続調書等)>
2 裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって弁論準備手続の期日における手続を行うときは、裁判所又は受命裁判官は、次に掲げる事項を確認しなければならない。 一 通話者 二 通話者の所在する場所の状況が当該方法によって手続を実施するために適切なものであること。 3 前項の手続を行ったときは、その旨及び同項第二号に掲げる事項を弁論準備手続の調書に記載しなければならない。 |
<改正前民事訴訟法89条>
第89条 裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。 |
<改正後民事訴訟法89条>
第89条
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(2)訴訟でウェブ会議を利用して口頭弁論期日に参加することを可能となる改正
- 民事訴訟において、当事者の一方又は双方がウェブ会議を利用して口頭弁論期日に参加することができるようになります(法務省のHPより)。
(施行日)公布(2022年5月25日)から2年以内の政令で定める日(具体的な施行日は今後決定)
- 家庭裁判所の訴訟(人事訴訟等)の口頭弁論期日は、上記改正民事訴訟法の施行日から1年6月以内の政令で定める日からウェブ会議を利用して参加することができるようになります。
(3)人事訴訟・家事調停におけるウェブ会議を利用した離婚・離縁の和解・調停の成立等
- 人事訴訟・家事調停において、当事者双方が裁判所に現実に出頭しなくとも、ウェブ会議を利用して、離婚・離縁の和解・調停を成立させたり、合意に相当する審判の前提となる合意をすることができるようになります。
(施行日)公布(2022年5月25日)から3年以内の政令で定める日(具体的な施行日は今後決定)
(4)オンライン提出、訴訟記録の電子化、法定審理期間訴訟手続の創設など(改正法の全面施行)
- 改正法では、例えば、次のような改正がされています(法務省のHPより)。
- オンライン申立・提出・オンライン送達
民事訴訟において、インターネットを利用して訴えの提起や主張書面の提出などをすることができるようになり、裁判所からの送達もインターネットを通じて行うことができるようになります。 - デジタル記録保管・デジタル記録閲覧
訴訟記録は、原則として、電子データで保管されることとなり、訴訟記録の閲覧等は、インターネットを通じて裁判所のサーバにアクセスする方法によって行うことができるようになります。 - 法廷審理期間訴訟
法定審理期間訴訟手続(当事者双方の申出・同意があれば、一定の事件につき、手続開始から6月以内に審理を終結し、そこから1月以内に判決をする制度)が創設されます。
- オンライン申立・提出・オンライン送達
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- 在野法曹からの反対意見が相当程度強かった制度であり、反対意見にも十分な理由があります。
日弁連「民事裁判手続等IT化研究会報告書-民事裁判手続のIT化の実現に向けて-」に対する意見書 15頁~17頁参照。
- 在野法曹からの反対意見が相当程度強かった制度であり、反対意見にも十分な理由があります。
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- 上記のような改正項目の全面的な施行日は、公布(2022年5月25日)から4年以内の政令で定める日(具体的な施行日は今後決定)です。
2 住所、氏名等の秘匿制度の創設
○ 当事者等がDVや犯罪の被害者等である場合に、その住所、氏名等の情報を相手方に秘匿したまま民事訴訟手続を進めることができるようになります(法務省のHPより)。
■ 住所、氏名等の秘匿制度の創設【PDF】
(施行日)令和5年(2023年)2月20日
■ 住所、氏名等の秘匿制度の創設【PDF】
(施行日)令和5年(2023年)2月20日
3 その他
○ 改正資料(法務省HP)
■ 民事訴訟法等の一部を改正する法律 【PDF】
■ 新旧対照条文 【PDF】