解散総選挙と小津安二郎

「男はつよくなければ生きていかれない、でも優しくなければ生きる意味がない」


 小津安二郎の「東京物語」の名台詞として語られる上記の言葉。
 私は,「人は,強くなければ優しくなれない。でも強くても,優しくなければ意味がない。」という風に自分の言葉に置き換えて記憶していました。

 「第三極」と形容される政治勢力を率いる橋下徹さんや,石原慎太郎さんは,強い政治,憲法改正,行政職員の統制,教師の教育の統制を声高に叫びます。自民党は安倍晋三さんを総裁にしたわけですから,再び改憲・戦後レジームの総決算路線,中国・朝鮮半島強硬路線を容認したということでしょう。これも「強い政治」を強調する路線です。
 でもいうまでもなく,その「強い政治」というのは,「強さ」の内実が問われるわけです。
 なんのために,誰に対して「強く」なりたいのか,です。
 私は,『自分のために,他人に対して,強くなりたい』という生き方を信条とする人達によって,彼ら(橋下徹さん,石原慎太郎さん)は支持されているように感じます。安倍さんは,ちょっと肌が違う感じがしますが(安倍さんは,自分への愛ではなくて,ずうっと古い戦前の体制への愛執で心が縛られているお人…)。しかし,これでは国民は幸せになれません。
 政治の世界では,強くても,ひと(他人)に優しくなければ意味がありません。政治的に強い力を持っているということの意味は,もっぱらひと(他人)にそれだけ優しくできる力があるということにのみ存在します。そこで,政治家については,そう感じ,そう考え,そう行動する人,そういう生き方をする人にのみ,強くなってもらいたいものです。これが,政治家を判断するときの有権者にとって分かりやすい,確かな基準です。
 しかし,彼らはそうでしょうか。国政選挙は選手や芸人の人気投票ではありません。
 橋下さんも,石原さんも(あるいは東国原さんも?),お茶の間にその人の人生劇場を見せてくれるかも知れません。ひるまずにトライしている人に勇気づけられたり,強力な個性を持ったユニークな人に共感したりして,その人を応援したくなるのは,心情として理解できます。しかし国政選挙はもちろん選手や作家や芸人の人気投票ではなく,私たちの国の最高権力者を選ぶ仕事です。市民・有権者のもっともかけがえのない仕事です。自分の人生を輝かせるために政治権力を志向するような危ない政治家には,よろしいですか,決して権力を与えてはいけません。それは,その政治家を満足させる結果として,私たちを幸せにしない結果を招来するからです。
 弱きを助け,強きをくじく人を支持する,はずの,一人一人の有権者の知性・感性・そして見識がいよいよ試される選挙となります。

 だまされず,現職(あるいは前議員・元議員)なら,なぜこの人は政治家をしているのか,新人なら,どういう動機でこの人は今国会議員を志しているのかを,よ~く見極め,自分のこと中心の人は必ず落とし,ひとに優しい人,ひとに温かい政治家を選ぶ選挙にしましょう。
 是非そうしましょう。

<平田元秀2012年11月17日wrote>