最高裁平成22年4月20日判決 「元本10万円未満でも制限利率18%を維持」判決

最高裁平成22年4月20日判決(不当利得返還請求事件)を紹介します。
貸金業関係判例です。


  1.  継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され
     同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合には,
     各借入れの時点における従前の借入金残元本新たな借入金との合計額利息制限法1条1項にいう「元本」の額に当たると解するのが相当であり,
     同契約における利息の約定は,その利息が上記の「元本」の額に応じて定まる同項所定の制限を超えるときは,その超過部分が無効となる。
     この場合,従前の借入金残元本の額は,有効に存在する利息の約定を前提に算定すべきことは明らかであって,弁済金のうち制限超過部分があるときは,これを上記基本契約に基づく借入金債務の元本に充当して計算することになる。
     そして,上記取引の過程で,ある借入れがされたことによって従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額が利息制限法1条1項所定の各区分における上限額を超えることになったとき,すなわち,上記の合計額が10万円未満から10万円以上に,あるいは100万円未満から100万円以上に増加したときは,上記取引に適用される制限利率が変更され,新たな制限を超える利息の約定が無効となるが,ある借入れの時点で上記の合計額が同項所定の各区分における下限額を下回るに至ったとしても,いったん無効となった利息の約定が有効になることはなく上記取引に適用される制限利率が変更されることはない。
  2.   これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件取引開始当初の借入金額は20万円であったというのであるから,この時点で本件取引に適用される制限利率は年1割8分となる。そして,各弁済金のうち制限超過部分を本件基本契約に基づく借入金債務の元本に充当して計算すると,その後,各借入れの時点における従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額は100万円未満の金額で推移し,平成17年12月6日の借入れの時点に,上記の合計額が10万円未満となったというのであるが,これが10万円未満に減少したからといって,適用される制限利率が年2割に変更されることはない。
     そうすると,同日以降の取引に年2割の制限利率を適用するのが相当であるとした原審の判断には,利息制限法1条1項の解釈適用の誤りがあり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨のうち,この趣旨をいう部分は理由がある。

 「いったん無効となった利息の約定が有効になることはな」いから,
 「上記取引に適用される制限利率が変更されることはない。」という論理は今ひとつよく分かりません。
 分かったらこのブログを更新します。

<2010年9月17日平田元秀Writing>