相続税制の改正-暦年贈与の加算期間が3年から7年に伸張されました。

2023年度税制改正大綱が、2022年12月23日閣議決定されました。
この中で、暦年贈与・生前贈与に関する贈与税・相続税制に見直しがありました。

その要点は2つ。

① 第1に、相続税の生前贈与について、加算期間が3年から7年に伸張されました。

 法定相続人が、被相続人から請けた暦年贈与などの生前贈与については、現行制度では、被相続人の相続税を計算する際の相続財産に、相続開始前3年間分を加算することとされています。この度の税制改正により、この加算期間が、3年間から7年間に伸張されました。この改正の施行は、2024年1月1日からです。
 相続税を納めるべき資産のある方が、実務上、もっともポピュラーな節税対策(資産承継に向けた贈与税・相続税の節税対策)として、暦年贈与の贈与税非課税枠110万円を用いて、少しずつ流動資産を推定相続人に受け渡すという方法が用いられています。しかし、この度の税制改正により、暦年贈与の積み重ねによる資産承継の方法をとる場合、資産保有者が死亡する7年前から死亡日までの間に行った推定相続人への暦年贈与については、遺族は、相続財産に加算して、相続税を計算して納付しなければなりません。
 この期間にした暦年贈与は、相続税の節税対策にはならない訳で、対策にならない期間が延びたということは、資産保有者に対する相続税制の強化(増税)ということになります。

(2)相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等について、次の見直しを行う。

① 相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から 100 万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。
② その他所要の整備を行う。

 

② 第2に、相続時精算課税制に、暦年贈与と同様、年間110万円の非課税枠ができました。

 相続時精算課税制度を用いると、暦年贈与を用いなくても、生前贈与への課税を、相続時まで繰り延べることが出来ます(但し申告が必要です。)。
 この度の改正で、この制度に、年間110万円までなら申告が不要となる非課税枠ができました(非課税枠部分の申告は不要)。
 事実上、相続時精算課税制度は、暦年贈与と併用できるようになったものといえます。
 ただし、110万円の非課税枠があると言っても、上記第1記載の通り、被相続人の相続開始前7年間分は、結局、生前贈与として、相続税の課税価格に加算することとされるので、贈与税は課税されませんが、相続税は、改正前と同様に、課税されます。

(1)相続時精算課税制度について、次の見直しを行う。

① 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除 110 万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
② 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。