SNS投資詐欺-日弁連が無登録業者への法執行強化を提言

日弁連の意見書

 日弁連が、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の急増を背景に、意見書を発出しました。
金融商品取引法における無登録業者に対する法執行の強化を求める意見書 (日本弁護士連合会、2026年1月16日付け)

要旨は、次のとおりです。
なお、後述の弁護士研究会の報告書(要旨)も参照ください。

意見の趣旨

  1. 犯則調査権限の拡充
    証券取引等監視委員会による犯則調査の対象に、金融商品取引業の無登録営業等の罪に係る事件を追加すること
  2. 民事ルール整備
    無登録業者による金融商品取引契約は、原則として無効とすること
  3. 罰則の強化
    金融商品取引法制の実効性を確保するため、現状の罰則を見直すこと

主要な背景事実

  • 無登録業者による被害の深刻化
    • 被害形態の多様化:未公開株商法、社債商法に加え、SNS型投資詐欺、マルチまがい商法、暗号資産関連投資詐欺等
    • 投資規模の拡大:2021年~2025年の緊急差止命令申立事案のうち4件が投資金額200億円超(約1,200億円、202億円超、806億円、253億円)
    • 国際化・高度化:海外事業者による事案増加、反社会的勢力の関与、複雑な資金流出スキーム
  • SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の急増
    • 2025年10月末時点で認知件数11,749件、被害額1,370.8億円に達している

法執行強化の必要性

  • 現行法の限界
    • 無登録営業に対して認められているのは任意調査のみで、裁判所令状による強制調査権が欠落
    • 海外関連事案では国際的協力に時間を要し、法執行が時機を逸する恐れ
    • 民事手続・行政手続のみでは被害防止・被害回復に限界がある
  • 罰則強化の根拠
    • 無登録業者は「確信犯的」で、数億円から数十億円の犯罪収益を得られる可能性があるため、相応のサンクション必要
    • 詐欺罪での立件が困難な事案が構造的に発生(主体特定困難、資金追跡困難、故意立証困難)
    • 暗号資産制度に関するWG報告書も、無登録業者抑止のため刑事罰強化を提言

市場への悪影響

  • 無登録営業は、金融商品取引法の規律枠外で活動することにより、
    • 企業への適切な資金供給を阻害
    • 投資者保護の仕組みを根本から破壊
    • 犯罪組織等への資金供給に転化
    • 投資者の信頼喪失と市場離脱を招く

関連する弁護士研究会の意見書

 日弁連の意見書のうち、「罰則の強化」に関連して、東京投資被害弁護士究会が「金融商品取引法における無登録業者に対する罰則の強化を求める意見書」(2026年1月27日提出)を発出しています。
 その要旨は、次のとおりです。

意見の趣旨

  1. 金融商品取引業の無登録営業(金融商品取引法29条)に対する罰則を強化すべき。

  2. 現行の「5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」を、金商法197条1項の対象(10年以下の拘禁刑・1000万円以下の罰金)に引き上げるべき。

  3. さらに、組織的犯行など一定の要件では、「10年以下の拘禁刑+3000万円以下の罰金」とする加重処罰類型の創設を検討すべき。

理由

無登録業者による被害の深刻化

  1. 未公開株商法、社債商法、暗号資産詐欺、SNS型投資詐欺など手口が多様化・悪質化。

  2. 東京投資被害弁護士研究会での相談だけでも、2024年のSNS型投資詐欺だけで 相談458件、被害総額約79.6億円、平均被害額1764万円。

  3. 海外業者による被害も増加し、資金回収は極めて困難。

 代表的事例が示す罰則の軽さ

→ いずれも被害規模に比して刑罰が著しく軽い。

 詐欺罪での立件が困難

  1. 資金の流れが追えない(他人名義口座・暗号資産・海外送金)。

  2. 主犯格の特定が困難。

  3. 「正当な取引と思っていた」との弁解が通りやすい。

  4. 結果として、本来詐欺に近い行為でも無登録営業でしか立件できない構造的問題がある。

民事・行政手続の限界

  1. 資金回収は困難。

  2. 差止命令が出ても、既に資金が海外に流出していることが多い。

  3. 行政は被害回復権限を持たない。

抑止力の必要性

  1. 無登録営業は1件で数10億〜1000億円規模の収益を得られることもある。

  2. 現行の「5年以下・500万円以下」では抑止力として弱すぎる。

  3. 組織的犯行が多く、軽い罰則は末端に違法行為をさせる動機となる。

罰則引き上げが妥当な理由

貸金業法との比較

  • 無登録貸金業は 10年以下の拘禁刑・3000万円以下の罰金

  • 金商法の無登録営業は 5年以下・500万円以下 と著しく軽い。

  • 投資被害の深刻性を踏まえれば、少なくとも貸金業法と同等にすべき。

金商法171条の2(無登録業者の売買契約の無効)

  • 法律自体が「無登録営業は投資家保護に反する危険な行為」と認めている。

  • 刑罰もその実態に見合う水準に引き上げるべき。

 無登録営業は実質犯である

  • 形式犯ではなく、投資家の財産を侵害し、市場機能を毀損する重大な行為。

  • 詐欺罪と同等、あるいはそれ以上の悪質性を持つ。

健全な市場の発展に資する

  • 違法業者を排除することで、正規業者の競争条件を守り、投資家の信頼を回復できる。

海外業者への抑止効果

  • 国内協力者への抑止力が働く。

  • 国際的な法執行協力でも、刑罰の重さは重要な要素。

結論

  • 投資家保護と市場の健全性確保のため、 無登録営業の罰則を「10年以下の拘禁刑・1000万円以下の罰金」に引き上げ、 組織的犯行等には「10年以下の拘禁刑+3000万円以下の罰金」の加重処罰を設けるべき。

 

2026年2月6日Up