新型コロナとデフォーの『ペスト』

 「東京2020」は,いま,新型コロナのパンデミックを象徴する言葉になった。

 東京都の新型コロナ感染者の日計チャート(下図/4月28日現在)を,市民の多くがスマホで毎日チェックしている。

 ロビンソン・クルーソーの作者ダニエル・デフォーは1722年に「ペスト」(A Journal of the Plgue Year)を出版し,1655年にロンドンで起きたペスト流行の災禍を”記録”した。
 デフォーは,ロンドンの「死亡週報」(the weekly Bill of Mortality)の数字を克明に引用している。死亡週報には週ごとの埋葬者総数とペスト感染者の内訳が記されていた。死亡週報は,死亡埋葬者数の報道のみに留まらず,当時の疫病感染予防策や感染後の治療法などを同時に掲載し,市民への警鐘の役割を兼ねていた。

 デフォーの「ペスト」(中公文庫)から引用する。

「死亡週報に統計を載せているすべての区域の死亡者の数は,普通,毎週240前後から300の間であった。…ところがペスト発生以来,死亡者数は…うなぎ上りに上がっていった。すなわち」

 デフォー本のデータの記述は,ロンドンの「死亡週報」を典拠としていることは上述の通りである。デフォー本の記述する死亡者数等データを,データ自体は変えずに,見やすさのため編集して抜粋する。

月日(1664年~1665年) 死亡者数 増加数
12月20日~27日 291  
12月27日~1月3日 349 58
1月3日~10日 394 45
1月10日~17日 415 21
1月17日~24日 474 59

 

月日(1665年) 死亡者数 うちペスト死亡者数
4月25日~5月2日 388 0
5月2日~5月9日 347 記述なし
5月9日~5月16日 343 記述なし
5月16日~5月23日 385 14

 

月日(1665年) 死亡者数 うちペスト死亡者数
8月22日~29日 7,496 記述なし
    ~9月7日 8,252 記述なし
    ~9月12日 7,690 記述なし
    ~9月19日 8,297 記述なし
    ~9月26日 6,460 記述なし
合計 38,195  

 

 1665年のロンドンでのペスト流行については,「清教徒革命を経て王政復古後のロンドンで1665年に流行し(en:Great Plague of London)、およそ7万人が亡くなった。1666年に大火(ロンドン大火)が起こり全市が焦土と化したことでノミやネズミがいなくなり流行は終息した。」とされている(Wikipedia)。7万人のうち,半分の3万7,000人ほどは,9月に亡くなったようである。