簡易裁判所の訴訟手続に関する特則

<簡易裁判所の訴訟手続に関する特則>


  1. 簡易裁判所は,少額軽微な事件を,国民に親しみやすい簡易な手続によって迅速に解決するために設けられた第一審裁判所であり,そのため,民事訴訟法に訴訟手続に関する特則がおかれています(民訴法(以下「法」第8章)。そして,その冒頭には,手続の特色として,「簡易裁判所においては,簡易な手続により迅速に紛争を解決するものとする。」と規定されています(法270条)。
  2. この観点から,訴えは,口頭で提起することができるものとされており(法271条),さらに,訴えの提起においては,請求の原因に代えて,紛争の要点を明らかにすれば足りるものとされています(法272条)。法律構成をする前の争点を通常の言葉で要約すれば足りるということです。
  3. 訴え提起後の準備書面についても,原則は,「口頭弁論は,書面で準備することを要しない。」(法276条1項)とされています。ただし,相手方が準備をしなければ陳述をすることができないような事項は,書面で準備し,又は口頭弁論前に直接に相手方に通知しなければならず(同2項),こういう事項については,相手方が欠席した期日では,準備書面の提出又は通知をしておかないと,主張することができません(同3項)。
  4. また,通常の民事訴訟では,初回の口頭弁論期日に限って,書面審理(被告が期日に出頭して陳述しなくても書面を期日で陳述したものと見なすこと)が認められていますが(法158条/「擬制陳述」),簡易裁判所では,続行期日において,原告又は被告が出頭しないという場合についても,それまでに提出した準備書面を陳述したものと見なして,判決の基礎に採用できるものとされています(法277条)。
  5. 平成15年の法改正で簡易裁判所に認められた比較的新しい制度として,「和解に代わる決定」の制度があります(法275条の2)。簡裁の金銭支払い請求訴訟では,期日に被告側が事実を争わず,分割払いや後払いを内容とする和解を希望し,原告としても,取立の負担を考えてこのような和解の希望に応じることが少なくありません。ただ,種々の事情から被告が裁判所に出頭しない場合には,このような和解による解決をすることができない。そこで,法改正前は,事件を民事調停に付した上で(民事調停法20条,「付調停」),調停に変わる決定(同法17条)の制度を利用することが行われていました。法改正により,付調停を利用しなくても,そのままこの「和解に変わる決定」により和解的解決が図れるようにしたものです。

    ・和解に代わる決定の要件は,①金銭の支払請求訴訟において,②被告が口頭弁論期日に,原告の主張事実を争わず,その他何も言い分や言い分を裏付ける証拠を提示しない場合に,③被告の資力その他の事情を考慮して相当であると認めるときです(法275条の2第1項)。
    ・決定の内容としては,異議申立期間経過時から5年以内で,支払時期について,後払いの定め又は分割払の定めができます(同上)。
    ・分割払の定めをするときは,期限の利益の喪失についての定めをしなければならないとされています(同条第2項)。
    ・手続としては,この決定にあたり,原告の意見を聴かなければなりません(同条第1項)。第1項の決定に対しては,当事者は,その決定の告知を受けた日から2週間の不変期間内に,その決定をした裁判所に異議を申し立てることができ(同条第3項),異議申立があれば,第1項の決定は,その効力を失います(同条第4項)。期間内に異議の申立てがないときは,この決定は,裁判上の和解と同一の効力を有することになります(同条第5項)。

  6. 陳述書の尋問代用機能
    ・また,簡易裁判所では,相当と認めるときは,証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の意見の陳述に代えて,書面の提出をさせることができます(法278条)。

 以上の通り,簡易裁判所の訴訟手続では,一般の民事訴訟では認められない種々の特例が定められていますので,弁護士には,これらの規定及びその規定の趣旨を十分に踏まえた訴訟対応が求められます。

2018年5月28日 平田元秀 wrote