未公開株・社債等詐欺と改正金商法

 今年(2011年)5月17日に金融商品取引法が改正されました(平成23年法第49号)。

金融庁HP
http://www.fsa.go.jp/common/diet/index.html

この改正で,いわゆる未公開株・社債等の詐欺商法に関し,

  1.  無登録業者が非上場の株券等の売付け等を行った場合には、その売買契約を
    原則として無効とする。
  2.  無登録業者による広告・勧誘行為を禁止する。
  3.  無登録業者に対する罰則を、5年以下の懲役又は500 万円以下の罰金(法人については5億円以下の罰金)に引き上げる。

(注)現行では、3年以下の懲役又は300 万円以下の罰金(法人についても300万円以下の罰金)

となりました。
 これに関して,商事法務1938号14頁(2011.7.25号)に,平成23年5月25日交付にかかる改正金商法(平成23年法第49号)の解説がなされています(斎藤将彦金融庁総務企画局市場課課長補佐ほか)
 無登録業者による詐欺的金融商品取引に対する対処としては現在の必読文献といえます。
 この解説で劇場型詐欺に対する対処に使える積極的な立法担当者解説がありましたので,ここで紹介しておきたいと思います。


★民事効規定
 まずくだんの改正金商法の民事効規定を引用します。
 

第171条の2
 無登録業者(第二十九条の規定に違反して内閣総理大臣の登録を受けないで第二十八条第一項に規定する第一種金融商品取引業又は同条第二項に規定する第二種金融商品取引業を行う者をいう。以下この項において同じ。)が、未公開有価証券につき売付け等(売付け又はその媒介若しくは代理、募集又は売出しの取扱いその他これらに準ずる行為として政令で定める行為をいう。以下この項において同じ。)を行つた場合には、対象契約(当該売付け等に係る契約又は当該売付け等により締結された契約であつて、顧客による当該未公開有価証券の取得を内容とするものをいう。以下この項において同じ。)は、無効とする。ただし、当該無登録業者又は当該対象契約に係る当該未公開有価証券の売主若しくは発行者(当該対象契約の当事者に限る。)が、当該売付け等が当該顧客の知識、経験、財産の状況及び当該対象契約を締結する目的に照らして顧客の保護に欠けるものでないこと又は当該売付け等が不当な利得行為に該当しないことを証明したときは、この限りでない。

★「売付け等」
  無登録業者の行為は,売付行為に限るものではなく,
  売付け,売付けの媒介・代理,募集・売出しの取扱い,
  その他これらに準ずる行為として政令で定める行為
 が対象とされています(法文の通り)
 
★ 劇場型詐欺に使える積極的な立法担当者解説

  上記★の「売付け等」の解釈に関し,同論文に次の注釈があります。(注九)
  

 いわゆる劇場型の投資勧誘においては,未公開株の販売勧誘を行う業者とは別の業者が登場し,投資者に対して当該未公開株を高値で買い取る旨の勧誘を行う(前掲(注二)参照)。未公開株の販売勧誘が自己募集の場合には金融取引業に該当しないため,当該販売勧誘を行う業者は無登録業者に当たらないことになる。
 しかしながら,当該別の業者の行為は,外形的には未公開株の買付けの勧誘であるが,当初より未公開株を買い取る意思はなく,販売勧誘業者と共謀の上,高値で転売できるものと投資者を誤認させることによって,販売勧誘に応じさせようとするものである。当該行為は,販売勧誘業者のために投資者の関心を高め,販売勧誘に応じることを促進するものであり,募集の取扱い等に該当し得ると考えられる。このため,当該別の業者は無登録業者に該当し,当該別の業者の行為に基づいて販売勧誘業者と出資契約を締結した場合には,民事効規定の対象になり得るものと考えられる(ただし,募集の取扱い等であることを投資者が立証するためには,販売勧誘業者と当該別の業者との委託関係等のつながりを裏付ける必要があるものと考えられる)。

★ 改正法施行日

 肝心の改正法施行日ですが
 無登録業者に対する罰則の引き上げについては,平成23年6月14日に施行
されています。
 取引の無効ルールや無登録業者による広告・勧誘行為の禁止等は,公布の日か
ら6ヶ月以内(平成23年11月24日までということですね)の政令で定める日となっており,まだ施行令は発令されていません。
 11月24日の期限ぎりぎりになるのではないでしょうか。

(2011年8月6日平田元秀Writing)