「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」(厚生労働省)

 「保険代理店が経費天引き 元外交員、全国で相次ぎ提訴」-毎日新聞が昨年末(12月31日)一面で報じました。関連して,厚生労働省の「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」における検討が本格化しています。


 平成30年12月21日(金)開催の 第3回「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」について,厚労省ホームページに資料がでていますので,少し紹介しておきます。

 http://mm.shojihomu.co.jp/c/bz39abcldz81vaah

【資料1】では,昨年3月に公表された「雇用類似の働き方に関する検討会」の報告書の抄本で,「雇用類似の働き方」の定義に関して,議論の到達点の整理が行われています。

 引用します。

 「雇用類似の働き方に関する保護等の在り方及び今後の検討課題等」

  • 雇用によらない働き方は、外形的には「自営業者」であり、本来経済法において対応すべきとの考え方があるが、実態上は、使用者の雇用労働者に対する関係と類似した働き方については、労働政策上の保護についても検討すべきではないかという考え方もある。
  • 今後、雇用類似の働き方について、事業者間取引としてのみとらえ、専ら経済法のルールに委ねるのかどうか、現行の労働関係法令における労働者に準じるものとしてとらえ、現行の労働関係法令における労働者保護ルールを参考とした保護等を考えるのかどうか、といった点について、更に議論を深めていくことが必要である。
  • その際、このような働き方をする者が安心・納得して働くことができるようにし、働く人にとっても経済社会全体の付加価値の源泉としても望まれる働き方となるようにするためにはどうしたらよいかという観点から、後述の「雇用類似の働き方の者」や保護の内容をどのように考えるかといった点も並行しつつ、精力的に議論を進めることが求められる。
  • 本検討会においては、まず雇用によらない働き方をしている者の実態を把握すべく、ヒアリングや調査を行うとともに、並行して、保護する必要があるとすれば、どのような視点で「雇用類似の働き方の者」と考えるか、また、課題として、どのようなものがあるかについて、一定の整理をした。
  • なお、保護する必要があるとすれば、発注者と雇用類似の働き方の者に関するガイドラインを策定して対応することのほか、個別のケースに対し労働者性の範囲を解釈により積極的に拡大して保護を及ぼす方法、労働基準法上の労働者概念を再定義(拡大)する方法、雇用類似の働き方の者に対し、労働関係法令等の保護を拡張して与える制度を用意する方法、等の様々な方法が考えられるが、この点は、保護の必要性について検討する中で議論すべきと考えられる。

(1)「雇用類似の働き方の者」について

  • 「雇用類似の働き方の者」の対象者は、雇用関係によらない働き方であることを考えると、労働者性を示す基準である使用従属性がないことが前提となる。
  • 5で整理した調査を踏まえると、発注者から仕事の委託を受けるなどして主として個人で役務の提供を行い、その対償として報酬を受ける者を対象としてはどうかという意見があった。
  • しかし、ヒアリングでも「情報の非対称性」という声があったように、情報の質及び量の格差や交渉力の格差があること、また、発注者から委託を受けた仕事から得る報酬が生活の糧となることから、5で整理したように契約内容が一方的に決定されてワーカーにとって不本意な契約となったり、契約内容が一方的に変更されてもそれを許容してしまう状況もあると考えられることも踏まえると、発注者から仕事の委託を受け、主として個人で役務を提供し、その対償として報酬を得る者のなかでも、さらに、上記のような不本意な契約を受け入れざるを得ない状態(これを経済的従属性と呼ぶことも考えられる)である者について「雇用類似の働き方の者」とする視点が考えられる。
  • なお、前述のとおり、請負契約等と称していても、発注者との関係において使用従属性がある場合は、労働基準法上の労働者に該当し、労働者として労働関係法令等の対象となることに留意しなければならない。
  • (2)のとおり、雇用関係によらない働き方の者について様々な課題が考えられる中、その課題に対応する保護の内容によって、対象者の具体的な要件が必ずしも同一になるとは限らない。この点、本検討会では、その保護の内容によっては、例えば、特定の発注者等との間に継続的な関係がある場合に限る等、発注者等との関係性に関する条件を入れる必要があるものもあると考えられる旨の意見もあった。
  • 本検討会の議論では、このような検討の視点が挙げられたが、雇用関係によらない働き方は多種多様であり、前述のとおり本検討会ではその一部について把握をした過ぎないことから、現時点において、「雇用類似の働き方の者」について画一的に定義することは困難と考えられる。保護の必要性も含め、種々の課題に対応すべき保護の内容とともに、引き続き、実態把握を行いつつ、分析をしていくことが必要と考えられる。

 【資料2】,【資料5】では,この検討会で「主にご議論いただきたい点」として議論のテーマが厚労省から提示されています。

1.「雇用類似の働き方の者」について

  •  特に、発注者との関係性(従属性等)について、どのように考えるか。
  •  労働者以外の就業者との取引については、経済法(独占禁止法・下請法)の対象となり得るが、経済法との関係について、どのように考えるか。
  •  労働基準法上の労働者以外の就業者は、事業活動を行う主体となり得ることから、当該就業者が行う行為と独占禁止法との関係について、どのように考えるか。
    ※ 労働者・労働組合と独占禁止法との関係については、「人材と競争政策に関する検討会報告書」(【資料1】p4)ご参照
  •  種々の課題に対応する保護の内容と保護の対象者との関係について、一律とすべきかどうかも含め、どのように考えるか

2.(契約条件の明示、契約内容の決定・変更・終了のルールの明確化等)

 <募集>

  • 契約締結に当たって遵守すべき事項、契約内容の確認方法等について、労働法や経済法、民法等の規定も踏まえつつ、その必要性も含め、どのように考えるか。

 <契約変更>

  • 契約内容の変更に当たって遵守すべき事項、変更内容の確認方法等について、労働法や経済法、民法等の規定も踏まえつつ、その必要性も含め、どのように考えるか。

 <契約終了>

  •  契約解除や更新の打切り等に対し一定の制限等をすべき場合やその内容について、労働法や経済法、民法等の規定も踏まえつつ、その必要性も含め、どのように考えるか。

雇用環境・均等局在宅労働課 課長 元木 賀子 課長補佐 永倉 真紀

検討会の委員

東洋大学法学部教授
芦野 訓和
中央大学経済学部教授
阿部 正浩
東京大学大学院法学政治学研究科教授
荒木 尚志
日本大学経済学部教授
安藤 至大
京都大学大学院人間・環境学研究科教授
小畑 史子
慶應義塾大学大学院法務研究科教授
鹿野 菜穂子
東洋大学名誉教授
鎌田 耕一【座長】
筑波大学ビジネスサイエンス系教授
川田 琢之
東北大学大学院法学研究科准教授
桑村 裕美子
茨城大学人文社会科学部法律経済学科准教授
鈴木 俊晴
早稲田大学法学学術院教授
土田 和博
専修大学法学部教授
長谷川 聡
東京大学社会科学研究所教授
水町 勇一郎
リクルートワークス研究所グローバルセンター長
村田 弘美