年始のご挨拶

 新年明けましておめでとうございます。

 昨年は,「ひめじ市民法律事務所」を立ち上げた初年にあたり,皆様から格別のご厚情を賜りましたこと,厚く御礼申し上げますとともに,今年も温かいご指導・ご鞭撻を賜りますよう,お願い申し上げます。


 さて,年明けに,「しんぶん赤旗」日曜版で,品川正治さんの志位和夫さんとの対談を読みました。印象に残る言葉が,やはり見つかりました。
年頭のブログではそのことから言葉初めをしておきたいと思います。

(志位) 財界は,「派遣切り」やリストラをする理由として,「国際競争力をつけるため」といいますが,どう考えますか。

(品川) いま,いわれる国際競争力は,「企業の国際競争力」です。しかし,労働者一人当たりの国際競争力というなら,全部正社員にせざるをえなくなります。本当の意味で,国際競争力が必要なのは,労働者の働きがいだと思います。それが世界一だったら,企業自身も世界一になれるはずです。
(志位) 長い視野で,働く人の権利や,誇りを大切にしていくと言うことが本当に大事だと思います。それは,私たちが主張している「ルールある経済社会」を作ることの意味でもあります。
(品川) いま,その流れを阻害しているのがマスコミだと思います。TPPにしても「日本は参加せよ」という大合唱ですね。このままでは,国民がマスコミへの信頼をなくしていくんじゃないですか。
(志位) マスコミの問題点も大きいと思うんですけれども,マスコミにはアメリカと財界がついています。この流れを変えようと思ったら,結局国民のなかからたたかいをつくっていくしかないんだろうと思うんです。

 さて,こうした言説については,思い出す言葉があります。
 マイケル・サンデルが昨年の夏,安田講堂で,「ハーバード白熱教室@東京大学」の講義をしました。これはNHKの番組で放映されました。番組では,NHK記者のサンデルへのインタビューを挟んでいました。その中で,サンデルは次のような話をしたと思います。(うろ覚えですが)

「日本は,世界第2位の経済大国から中国に抜かれて第3位になって自信を失っているかもしれないが,世界第何位の経済大国かということは重要ではないと思う。経済の低迷で自信を失うというのは,日本の人達だけが抱えている問題ではなくて,アメリカでもヨーロッパでも同じように抱えてきている問題だ。しかし,そのような時代に,私たちの社会が本当にはどのようにあるべきかということを市民自身が考え,より一層その社会づくりに参加するようにかかわるようになることが大事だ。市民1人1人が政治プロセスに一層積極的に関わるようになることになり,よりよい社会を作るよう討議するようになることによって,自信が生まれてくるのだ。」

 確か,このような話だったと思います。
 問われているのは,国のGDPの順位ではない。日本を代表する製造業に国際競争力があることは重要であるが,それだけではどうしようもない。
 問われているのは,「国民1人1人の国際競争力」。それは,「長い視野で,働く人の権利や,誇りを大切にしていく」と言うことだと。
 そのことが,「国民1人1人の社会への関わり」を積極的なものにし,地域や社会に対する誇りにつながっていくのだと。

 <日本の国民1人1人が,経済的,政治的,文化的,道徳的な諸点で,十分に成熟していく方向に向いていくように>というようなことは,左右どのような立場の人間でもいえることです。
 しかし,大事なことは,政策の善し悪しのメルクマールに,「これで,手に汗して真面目に働いている人の権利・誇りを大切にする方向,伸ばす方向につながるのか」というものさしを使うことだと思います。
 国に短期的に歳入が集まる方法ばかりを考えているような政府や,企業に短期的に金が儲かる方法ばかりを考えているような経営者が長続きするはずはありません。それでは未来がない。
 <1人1人が誇りを持って日本の社会を語れるようにする。>
 <1人1人が誇りを持って「わが社」を語れるようにする。>
 <1人1人が誇りを持って「わがまち」を語れるようにする。>
 <1人1人が誇りを持って「わが法曹界」を語れるようにする。>

 そのことを政治の目標,企業の目標,自治体の目標,弁護士会の目標に据える。

 そうすれば,「この選択はない。」「こんなやり方はしない。」
 そういうものこそ,「仕分け」すべきです。

 多分,上記のメルクマールだと,一番に目がいくのは,そのそれぞれの社会における「弱者」です。この人達を犠牲にして自分はぬくぬく過ごしている,そういうような自分のありようでは,自分の帰属している社会を誇りを持って語れるはずはないからです。

<2011.1.3 平田元秀wrote>