なんとかテクノロジーと日本人のルーツと(弁護士の小話)

 わが国のコロナ新規感染者数は,2021年8月26日の25,000人をピークに急減し,昨日11月22日は50人だ。ワクチン2回接種率が,76.7%に達したことで,いったん国内に集団免疫ができたことが,急減の原因だと見るのが自然である。治療薬・予防薬の開発・承認の進展に,追加接種用ワクチンの量の確保も合わせてみると,第6波を警戒しつつも,2022年は,アフターコロナの年となるはずだ。

 さて,明けてみると,「2030年すべてが『加速』する世界に備えよ」(ピーター・ディアマンスほか2020年12月初版)の時代が待っていた。やっぱり。

 技術がコンピュータでデジタル化されることで,指数関数的な技術革新の加速が何度も起こる時代の中,量子コンピュータ,ナノテク,バイオテクノロジー,材料科学,センサー,3Dプリント,AR・VR,ブロックチェーンなどの技術革新が融合しつつ加速し,AIの閾値が現実味をもって語られる時代。

 このデジタルなんとかテクノロジーの加速力を身近に感じたのは,ここ数年,特に2021年の「日本人のルーツ論」に関する実証的論文展開の早さからである。

 以下は,国立遺伝学研究所の斎藤成也教授のYouTube・論文とイギリスの科学誌Natureサイトのマックス・プランク人類史価額研究所論文(NEWS RELEASE 及びこれを紹介する2021年11月22日付毎日夕刊に頼った話しである。

 世界的に展開する次世代シーケンサーの技術を用いたDNA解析。これに,言語学の膨大なデータベースと,考古学の成果を組み合わせた「三角測量」的な人類史の実証。

 縄文人は,2~3万年前にパプアニューギニア人と別れた祖先の子孫で,そこから,約15000年前にアメリカ先住民が分岐する。さらにそこから7000年ほど前に,東アジア人が分岐する。縄文人は陸続きの大陸から列島に渡ってきて,九州から海伝いに沖縄・宮古島に達する。約3000年前(紀元前1000年)に,縄文文化の日本に水田稲作農耕を伴って,朝鮮半島から九州北部に「日琉語族」(東西日本語と琉球語の元となる言語を話す人々)が渡来する。弥生時代の始まりである。大陸系弥生人は縄文人と混血するが,縄文人のDNAは現在の本土の日本人の中に10数%を残すのみである。現在の本土と琉球の日本人のDNA形成に最も大きく寄与した母集団は現在の韓国人の母集団と共通することがゲノム解析で判明している。

 弥生人が列島に渡来した約3,000年前には,まだ縄文人が半島南端にも分布していたが,現在の韓国人に縄文人のDNAは残っていない。

 韓国語と日本語とは母語が共通なのではないかということは,新井白石と本居宣長以来,誰かが口にしては誰かが待ったを掛けてきた論点であるが,11月10日発表のNature詩で,マックス・プランク研究所の論文は,韓国語も日本語も,9000年前の中国東北地方(西遼河流域)に住んでいた農耕民の用いていた言葉(トランスユーラシア語)を紀元とし,農業の普及伝播に伴い言葉も広がったとし,ツングース語,韓国語がここから派生し,日本語(日琉語族)はそこから分岐したと「三角測量」結果を発表した。客観的に考えて,そりゃそうだろうと思う。

 こうした知見は,デジタル化に伴う指数関数的な技術革新の結果,反証しがたい結論として科学が提示してきている知見だ。地球は,このままでは,氷が溶け,メタンが出て,温室化の後戻りできない閾値に達するのに10年程度と言う。その呑み込みにくさと比べ,どちらがどうだろうか。

 標準事実は,地球は丸いという事実と同様に伝わり,宗教感情で押しとどめることは困難だ。標準事実を受け止めてこそ,私たちの家族や組織や社会や政府や国や地球が,いかに脆くて,だからこそ,いかにありがたいかを,この掌の上に置いて考えることができる。

 科学者に,改めて感謝したい。

2021年11月23日記
2023年2月26日更新


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