「中国共産党(支配者たちの秘密の世界)」 を読了しました。

「中国共産党-支配者達の秘密の世界」
著者 リチャード・マクレガー 訳 小谷まさ代を読了しました。
とてもよい本です。
著者の「あとがき」が著者の現代中国の状況をうまく言い得ています。その部分を引用します。


「中国独自の体制が国内で問題視されることはない。むしろ国民はそれを誇りに思っている。党の機関誌『人民日報』が所有する愛国主義的タブロイド誌『環球時報』は,中国の台頭が冷戦後のアメリカ一国支配を終わらせた,と自慢げに論じている。
「中国の国際政治に対する最大の貢献は,革命と改革,発展によって,西洋モデルだけが近代化を達成する方法ではないということを世界に示したことである。」と同紙2009年10月の論説は述べている。
「中国はまた,非西洋世界が西洋の真似をする必要はないことを,世界に示したのだ」
 この論説は,まさしく中国人の昔年の信条をそのまま言い表したものだった。
 金融危機からの回復に苦しんでいる欧米諸国はようやく,中国モデルは負けないという中国人の信条を認識するに至ったのである。
 冷戦の終結は「歴史の終わり」ではなかった。
 中国共産党の体制は,様々な意味で腐敗しており,高い代償と矛盾を伴い,しばしば機能不全に陥る。今回の金融危機によって,この体制に,「傲慢さ」というさらに危険な要素が加わることになった。
 その一方で,中国の体制は柔軟で変幻自在な資質を持ち合わせており,投げつけられるすべてのものを吸収することもできる。この点が欧米にとっては驚きであり,同時に驚異でもある。

 民主的な選挙も公開討論も行われないため,党の支持率を測ることは,どのような精度であれ不可能である。だが,明らかなのは,毛沢東後の共産党が「経済成長」と「ナショナリズム再興」という二つの基礎を強化してきたと言うことだ。中国共産党とその指導部は,成長の末に欧米のようになりたいと思ったことはない。欧米諸国は最近ようやくそのことに気づき始めたようだが,中国の目標は昔からずっと欧米などではなかった。
 このままでいけば,中国の願い-超大国として世界に君臨し,容赦なく思いのままに世界を動かしたいという願いは,叶うのではないかと思われる。 」(412頁~413頁)


 中国が日本にとって歴史的な大国であり続けてきたこと,常に興隆と衰退を繰り返してきたこと,それにわが国の歴史が影響を受けてきたこと,しかしわが国が国を興したときから中国からは独立した対等な立場で独自の国家を築いてきたこと等を改めて思い起こすと,上記のマクレガー氏の指摘は,新たな深い再発見となって現代中国の再認識につながるように思います。