三権の長が(最高裁長官も)天皇陛下万歳と!?

目と耳を疑うニュースだ。
事実なら日本の裁判所が「バンザイ」状態だ。

沖縄タイムス
4・28政府式典:突然の「天皇陛下万歳」
三権の長がそろって両手を上げ、声を合わせた。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-04-29_48644
【東京】壇上の安倍晋三首相ら三権の長がそろって両手を上げ、声を合わせた。
「天皇陛下万歳」。28日に開かれた「主権回復の日」の政府式典。天皇皇后両陛下が式典終了後に退場する際、出席者から突然声が上がり、出席した国会議員や政府関係者約390人の一部も同調。
 天皇陛下は壇上で一瞬立ち止まった。
 式典に対して憲法改正への足がかりとする疑念の声が上がる中、政府が式典で強調した「未来志向」ではなく、戦前の光景に重なるような場面もあった。
 仲井真弘多知事に代わって参加した高良倉吉副知事は万歳をしなかった。
 「突然でびっくりした。あの場面でそうする必要はなかったかなと。ただ、積極的にしなかったわけではなく、反応できなかった」と終了後、報道陣に話した。

 一体,最高裁長官竹崎博允氏は,本当に,両手を上げて、声を合わせて「天皇陛下バンザイ!」をやったのか。
 もし,やってしまっていたとしたら,もう,それはもう,最高裁長官としての進退を問われる大変な事態であると思われる。
 最高裁判所の裁判官会議(裁判所法12条)で釈明を求められなければならない大変な事柄である。

 これがもし,メディアや世論の中で何の問題もなく流れてゆくとするなら,これはもう,日本人の土壌,日本の国の土壌に民主主義の基本精神が全く根を生やしていなかったこと,明治憲法時代の社会の精神・価値観と比較して私たちの現代市民社会の価値観とが何ら質的に変化がなかったと言うことになる位,大変なことである。


 ウィキペディアでは,いわゆる「天皇陛下万歳(バンザイ)」の起源について,〔そもそも日本人が万歳を〕バンザイと発音するようになったのは大日本帝国憲法発布の日,1889年(明治22年)2月11日に青山練兵場での臨時観兵式に向かう明治天皇の馬車に向かって万歳三唱したのが最初だという。最初の三唱は「万歳、万歳、万々歳」と唱和するものであったが、最初の「万歳」で馬車の馬が驚いて立ち止まってしまい,そのため二声目の「万歳」は小声となり,三声目の「万々歳」は言えずじまいに終わった。
 [1]^ 若槻禮次郎『明治・大正・昭和政界秘史 -古風庵回顧録-』講談社学術文庫、26-27頁、若槻はこの時旗手として参加していた。」とされている。

 「天皇陛下万歳!」とは,言葉の意味からも歴史的な起源から言っても,天皇の地位が長く久しく永遠に続くことを願い祈るものである。
 明治憲法においては,天皇が神聖不可侵の存在とされ,天皇の尊厳を冒す行為が不敬罪によって重く処罰されたが,戦後は,天皇の人間宣言によって天皇の神格性は否定されるとともに,不敬罪は廃止され,日本国憲法では,天皇を神の子孫として特別視する態度はとられていない。
 明治憲法においては,天皇の地位は天照大神の意思,つまり神勅に基づくとされていたのに対して,日本国憲法においては,天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基く」(1条)ものとされる。したがって,天皇制は絶対的なもの,不可変更的なものではなく,国民の総意により可変的なものとなったのである。
 この日本国憲法の番人が最高裁判所である(81条)。
 天皇の地位が国民の総意により可変的なものであるとし,日本国民が主権者であるとするのが,日本国憲法の立場なら,国民の前で,その天皇の地位が永遠であると宣言するような三権の長の政治的振る舞いは,憲法の立場に反する政治的な振る舞いである。それを,政治部門がやるのも大問題であるが,一体最高裁の長官までそのような振る舞いをするということが許されるのか。

 日本国憲法は,国民主権主義を採用し(前文,1条),天皇の国政権能を否定した(4条)。
 その上で象徴としての地位を認めた。
 これを安倍首相兼与党自民党総裁は「戦後レジーム」であるとしてそこからの脱却を訴えている。
 そのような観点を有して改憲を次の参議院選挙での争点としようとしている。
 そういうときに,最高裁の長官が政府の式典に呼ばれて参加し,その首相兼与党総裁と調子を合わせた政治的振る舞いをする。
 こんなことが許されて良いはずがない。
 日弁連は声明を発するべきであるし,全国各地の判事・弁護士は,そして検察官も,次々に,それぞれの方法で,抗議の声をあげるべき時だと思う。
 これを黙っていたら,次は我々がこれをやらされることになる。
 そうなると,想像しただけでぞっとするでしょう。それを,わが司法部門を代表する最高裁長官が!?本当にやっちゃったのか?信じたくない。
<2013年4月29日 平田元秀wrote>