面会交流の実施の可否に関する平成25年東京高裁決定の2事例

面会交流の実施の可否に関して,東京高裁で平成25年に出された2つの決定を重要な決定例として紹介します。


東京高裁平成25年7月3日決定「面会交流の実施の可否」(1)

 子は,同居していない親との面会交流が円滑に実施されていることにより,どちらの親からも愛されているという安心感を得ることができる。
 したがって,夫婦の不和による別居に伴う子の喪失感やこれによる不安定な心理状況を回復させ,健全な成長を図るために,未成年者の福祉を害する等面会交流を制限すべき特段の事由がない限り,面会交流を実施していくのが相当である。

東京高裁平成25年7月3日決定「面会交流の実施の可否」(2)

 抗告人が,未成年者と相手方との面会交流を拒絶する理由として主張しているのは,

① 相手方による未成年者連れ去りの懸念が払拭できないこと,
② 未成年者との面会交流を通じて相手方に現在の住所地を知られることに対する不安,
③ 相手方の言動が未成年者に与える悪影響,
④ 相手方への恐怖心から,面会交流の受渡しの際に相手方と会うことができないこと
などである。

 これらのうち,上記①,②及び④は,いずれも抗告人が相手方に対して抱いている恐怖心に由来するものであり,相手方が同居中に抗告人に対し暴力をふるった事実を認めていることなどによれば,抗告人が相手方に対し恐怖心や不安を抱くことはやむを得ないところではある。

 しかし,相手方が同居中に未成年者に対し暴力等を振るった事実は認められず,抗告人の相手方に対する恐怖心や不安をもって,直ちに未成年者と相手方との面会交流を制限すべき特段の事由があるということはできない。

 また,上記③について,抗告人は,調査官に対し,未成年者は幼稚園在籍時に相手方の抗告人に対する言動の影響で,問題行動が多かった旨述べているが,かかる事実が認められる場合には,未成年者の問題行動の頻度や程度,未成年者に対する相手方の影響との因果関係等のいかんによっては,面会交流の制限事由に当たる場合がないではない。しかし,未成年者に上記問題行動の事実を認めるに足りる幼稚園関係者の陳述や,連絡帳等の記載内容などの的確な証拠資料が存在しない本件においては,上記抗告人の供述のみをもって,上記面会交流の制限事由があるとまでいうことはできない。

 そして,前記認定したとおり,調査官による調査によっても,未成年者が相手方を拒絶していることが窺える事情が認められず,未成年者が同居中の両親との良好な思い出を有しているといえる本件においては,原審が説示するとおり,面会交流を実施していくことが必要かつ相当である。