特商法・割販法における「営業のために若しくは営業として」の意味内容

  1.  特定商取引に関する法律(特商法)、割賦販売法(割販法)における購入者保護のための規定は、購入者が、「営業のために若しくは営業として」締結する契約に関するものについては基本的に適用されないことになっています。特商法では第26条第1項第1号(訪問販売、通信販売、電話勧誘販売に関する適用除外規定です。)、割販法では第35条の3の60第1項第1号、第8条第1号などを参照ください。
     そこで、どのような場合が「営業のために若しくは営業として」に該当し、あるいは該当しないのかの判断がとても重要です。
     主務省の考え方(公権的解釈といいます。)を引用しておきます。
  2. 「営業のために若しくは営業として」の意味内容については、平成20年版「割賦販売法の解説」経済産業省商務情報政策局取引信用課 83頁以下に解説されています。
     これは割賦販売法8条の解説箇所です。
     割賦販売法35条の3の60第1号の解説欄を見ますと、「第1号…については、第8条1号…と同様の趣旨であるため、同条の解説を参照のこと。」とあります。
<割賦販売法8条第1号の解説箇所>
 第1号は、本法が一般消費者を保護するための法律であるので、購入者等が営業のために又は営業として締結する契約に係るものには適用しない旨の規定である。本号は、適用対象を商行為に限定するものではなく、事業・職務の用に供するために購入し、又は役務の提供を受ける場合は基本的に本号に該当する。
 「営業のために若しくは営業として」とは
 割賦販売が、その相手方にとって、営利の目的をもって、かつ事業のために又は事業の一環として行われることを意味すると解される。
 営利の目的は、株式会社等における株主・持分権者への利益や残余財産の分配が可能であることを意味するものではなく、
 利益をあげる目的を有するかにより判断され、
 内心の意図によってではなく、客観的に判断されるべき性質のものである。
 また、事業性については、反復・継続して行う意思をもって行為が行われるかにより判断されるものであって、こちらも内心の意図によってではなく、客観的に判断されるべき性質のものである。
 たとえば、株式会社が事業のためにする行為又は事業として行う行為については「営業のために若しくは営業として」に該当するものと考えられる(会社法5条参照)。
 また、個人であっても、個人事業主の立場で、商品を購入し又は役務の提供を受ける場合には、「営業のために若しくは営業として」に該当するものと考えられる。
 個人事業主への該当性の判断にあたっては、個人事業主としての確定申告の有無も重要な判断材料の一つとなるであろう。
 一方、個人が、営利の目的以外の目的(例えばボランティア事業・学術事業等)で、事業を継続的に行っているような場合において、商品を購入し又は役務の提供をするときは、事業性の要件は満たしていたとしても、営利性の要件は満たさないと解されるので、「営業のために若しくは営業として」に該当しないと解される。
 また、個人事業主としてではなく、消費者として、自家消費等の目的で、商品を購入したり,役務の提供を受ける場合には、「営業のために若しくは営業として」に該当しないであろう。
 なお、公益法人などの非営利法人については、基本的に「営業のために若しくは営業として」には該当しないものと考えられるが、いわゆる収益事業のために又は収益事業の一環としてなされる場合は、例外的に「営業のために若しくは営業として」に該当する場合もあり得るであろう。
 業務性・営利性の判断は、取引毎になされることとなり、
 該当する取引と該当しない取引とを区別できない場合には、基本的に、割賦販売法の規定の適用のあるものとして取り扱うことが期待される。